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ふと思うと俺が創ったシナリオって絶対「夢の世界」があんのねw
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プロフィール
HN:
狐さん
性別:
非公開
自己紹介:
生年月日:1642年水無月朔日

職業:妖怪(狐)

趣味:スイーツ(笑)づくり、東方、ものごとのリスト化
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8fecb6acfacb49f0f156b684fd26630a.jpg「はい。では申し訳ございません。私、その方面に疎いものでして申し訳ございません。差し支えなければ、私よりもっと案件に詳しい者と変わらせていただきますが。ええ。よろしいいでしょうか?では、しばらくお待ちいただけますでしょうか。こちらからかけなおさせていただきます。すいません」

「…」

「あやちゃん、人材育成課行って神楽坂呼んで来てくれない」

「あ、はい、わかりました」

「切羽詰った芝居して呼んできてね」

「切羽詰った感じですか…わかりました(・A ・;)」


「どしたの?ゆうさん」

「神楽坂。大変申し訳ない。結構重要な依頼受けたんだけど、あたし忘れてたんだよ、今日1時間後に不苦労先生とこにインタビューしに行く仕事あんの完璧に忘れてて。もうすぐ出なくちゃいけないんだ。あたしの代わりにこの依頼成功させて。たぶん神楽坂しかできないんだ。ペイは2:8で神楽坂にやるから」

「まじで!?大丈夫なの?行ってきなよ早く。この電話番号にかけなおせばいいわけ?」

「そうそう。ごめんな。あとで焼肉おごるから!頼む」

「そんなのいいよ、行っておいでよ。あたしがやっとくから」

「ごめん神楽坂!あと頼む!! …あやちゃん、あたしちょっと2時間ぐらい姿くらますから、神楽坂の電話応対をよく見ておきな、勉強になるから」

「は、はい。行ってらっしゃいませ」

HY125.jpg依「もしもし」

「あ、坂倉祥子様の携帯電話でよろしいでしょうか。私、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフの神楽坂と申します。先ほど二ノ宮から依頼を引きつかせていただいたのですが、もしお手数でなければ誤解のないように、坂倉様のご依頼を伺わせていただくわけにはいかないでしょうか」

依「はい、はい。大丈夫です。ええとですね。二ノ宮さんに行ったとおりなんですけど、お恥ずかしい話ですけど、私、今年で32にになるんですがまだ独身なんです。でも、相手がいないわけではないんです。来年には結婚しようと思っている恋人はいるんです」

「ええ!何て素敵なお話なんでしょう!」

「…( ;´д`)??」

依「それで、身の回りの友人が皆既婚者なんですけど、執拗に私にゼクシイを勧めてくるんです」

「ゼクシイがないと結婚できないというCMもありましたからね!」

「・・・( ;´д`) (…何だこのテンション)」

依「どうなんですか?おかしいと思いませんか?結婚というものは男女間双方の合意と愛の上に成立するものではないのですか?どうしてゼクシイがないと結婚できないのですか?どう思いますか?」

「それはもちろん坂倉様のおっしゃるとーりでございます!確かにゼクシイは式場や婚礼準備のサポートとしては十分な効力があるでしょう!でも、それはあくまで副次的なものでしかないのです!仮に結婚資金がなくて、ゼクシイを頼ることさえできない結婚前のカップルがいたとしましょう!では、彼らは資金が有り余りゼクシイに結婚の流れ一部始終をケアしてもらうカップルと何が違うというのでしょうか!いいえッ!何も違わないのです!むしろ、お金がないなりに自分たちで精一杯の結婚式をしようってッ!ああ、そんな、力にはゼクシイなんて太刀打ちすることはできないのです!」

依「そうですよね!?ああ、なんかあなたとは気が合いそうですね。お名前なんておっしゃいましたっけ」

「私は神楽坂かなでと申します。結婚の予定はございませんが、坂倉様のお言葉には共感を覚えるばかりでございます。そして、今回の依頼はそれに関係なさっているのですか?」

依「はい。本題なんです。私は、身の回りの知人が強制するところの、『ゼクシイがないと結婚なんかできない』という通念を真っ向から破壊したいのです。ゼクシイがなくても幸福な結婚はできるということを証明したいんです。もうゼクシイを糾弾するくらいの勢いで。そのために、私は何個か案を準備しています。それを実行してくれる人たちを依頼したいんです」

「まあっ!まあっ!何て素敵なお悩みなんでしょう!!私、心の底からそのご依頼をお手伝いしたくて仕方がありませんわ!!」

Σ(゚д゚lll)…」

HY155.jpg
「まとめさせていただきますわ!1、ゼクシイから手配してもらったという刺繍がところどころほつれたドレスを用意し、これじゃあ式挙げれないよと困っているときに坂倉様のおじ様が現れ、坂倉様が亡きおばあさまより譲り受けた親子3代で着ることになる完璧なドレス、という体裁のものを持ち込み比較させ、ゼクシイの品位を落とし『やっぱり母から子っていうものって無敵だよね』と思わせる。2、披露宴の演出でスモークをたくが思ったより煙くて招待客が咳き込んでしまう。そして申し合わせておいた司会の一言で、『スモークの演出はゼクシイお願いしたのですが皆様を煙たがらせる結果となってしまい失礼いたしました。しかし、この煙の中から舞い降りた新郎新婦の、なんと絢爛なことでしょうか!』とせりふを言わせ、そそくさとゼクシイのスモークけみいwwwという印象をそこはかとなく与える」。3、ゼクシイにしたがって新生活用の家具のカタログをまとめ見積もったらもっと瀟洒なアンティークショップと家電量販店で購入する見積もりを出したら圧倒的にそっちのほうがセンスよくて機能性十分だった、と新生活2週間目に噂を流させる。以上伺いました。私、見積もりは明るくないものでして正確な金額は出せていないのですが、おそらく総額で48万以内で抑えられると思います。いかがでしょうか?」

(゚д゚;)…じゅ、10分で、48まん…」

依「ぜんぜん平気です。むしろもっとお金をかけて小細工してもいいかもしれませんね。結婚資金が他の人たちより多くためられた自信ありますし、そうですね、神楽坂さん、他に考えはありますでしょうか?」

「私も少し考えはございます。けれどもこれは、坂倉様がお考えになるよりもずっと高額な手配を行わなくてはいけないのです。少しでも気を害したら申し付けてください」

依「ええ、聞かせてください」

「結婚式場に、坂倉様の昔の恋人を名乗る凶器を持った男を乱入させるのです!」

依「何ですって!」

「もちろんエキストラです。しかも決して坂倉様の男性遍歴に傷をつけるわけではありません。だって、坂倉様も旦那様も、式場の誰もその乱入者のことは知りませんもの!何を隠そうその乱入者は、隣の式場に殴りこみに予定だったという設定なのです!男はある程度坂倉様の披露宴会場で破壊活動を行い、そしてしばらくして『ここは自分が殴りこむ婚礼の場ではない』ことに気づき、すぐにつまみ出されます。そして彼は叫びます。『ちくしょうーっ!!ここじゃなくて隣の式場じゃねえかあ!ゼクシイの社員ども話が違うじゃねえかあ!!』と!」

依「ああっ!さりげないその一言で!」

「いかがです!もうゼクシイの個人情報漏洩がすらっと露見されたじゃありませんの!ゼクシイの信用丸つぶれ…ああっ、でもこれは悪魔の所業…こんな依頼を受けるスタッフがいたとしても通常時給ではすまないでしょうね。そして披露宴会場での破壊活動…きっと、これでは当初のご予算を突き抜けてしまいます。私、見積もりは明るくないものですから正確な金額は出せないのですが総額…109万…」

依「いいです。それ気に入りました。やりましょう」
    _、_
( ; Д`) .・;'∴ ブハッ」

c6a7d233.jpg「ああっ!ありがとうございます!私の意見がこんな素敵なご依頼に採用されるなんてなんという幸福なのでしょうか!もううれしくて、私の提案はもう結構ですわッ!」

依「!? 神楽坂さん、まだあるというんですか?」

「ございます。ございますが、これ以上は私のエゴでしかありません!私のエゴで、坂倉様の以来費用を積み重ねるなんてできませんッ!」

依「いいです、聞かせてください!」

「ああ、では聞き流してください。招待状のことです。結婚披露宴の招待状…いいえいいえ、これは羅刹の所業!…いえ、申し上げましょう。結婚披露宴の招待状、新郎新婦の名前を思いっきり!誤字脱字させるのです!そして、小さな紙に訂正文として『ゼクシイに依頼した折に確認不足だったため新郎新婦の名前・式場名・住所に誤りがございます。正しくは・・・』そんな、訂正文を入れるのです!」

依「そ、それはっ!!」

「おめでたい席の招待状です、単に『確認不足』と書けば、ほとんどの人は結婚する二人に非難をあてることはないことでしょう、悪いのは必ずゼクシイとなるのですッ!…ああっ、でもこれは悪鬼の所業…こんなことをしていては費用がかさむだけ…私、見積もりは明るくないものですから正確な金額は出せないのですが総額…131万…」

依「かまいません。やりましょう」
     。 。
    / /
 
「 ( Д ) スポーン」

「ああっ!ありがとうございます!私の意見がこんな素敵なご依頼にまたも採用されるなんてなんという幸福なのでしょうか!もううれしくて、私の提案はもう結構ですわッ!」

依「!? 神楽坂さん、まだあるというんですか?」

「ございます。ございますが、これ以上は私のエゴでしかありません!私のエゴ(ry

「ただいまー」

HY090.jpg「…お、おかえりなさいませ。二ノ宮さん、どこ行ってたんですか」

「髪ちょっと切ってきた。最近時間なくて」

「あー!ゆうさーん!」

「おおっ!神楽坂ごめんな、本当ありがとう仕事押し付けて。どうだった?大丈夫だった?成功させれた?」

「誰だと思ってんのー。成功させたよ。ゆうさん!チョロいよこの人!180万もいけちゃったよ!でもやばいよ、自分の仕事やんないで、こんな高額の以来の8割なんかもらったらあたし比嘉中課長に大目玉食らっちゃうよ、2:8はやめよ、あたし4でいいから!6:4で!」

「いやいや悪いって。比嘉中課長にはあたしからも一言言いに行くからさ、ここはちゃんと金勘定しようや」

「ダメだってあたし今、オペレーター業務じゃないんだから!」

「いやいやそこはちゃんとしようぜ?ちゃんとしようぜよ。わかったわかった。じゃあ5:5にしよう。5:5だ。こないだのあやちゃんと柳田さんとおんなじ。傷み分け。どうですお客さん」

「わかったよー5:5でいいよ。じゃあね!あたし戻るからね!」

「あー」

(゚д゚;)…」

「あ、あいつのやり方、参考にしてもいいけど真似しちゃダメだかんね。あの、金を搾り取るタイプのオペレーションは会員の減少と依頼回数の低下を招く。あれをキチガイの会員にしかやらなかった山瀬と違って、神楽坂はあれをすべての会員にやるから、今の社風に向かない。いやーラッキーだなー何もせずに90万ペイついちゃった」

「いやあの。絶対真似できないですから、もういいです」

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「おはようございます、失礼いたします」

68f86a248a1d455936743f217fc37bb8.jpg「あれ柳田さん。何か用」

「お忙しいところ申し訳ございませんが、バカあやはおりますでしょうか」

「…バカあやは会議資料調達中で席をはずしております。どうしたの?」

「いえ大したことではないのですが。昨日いただいた依頼について誰もやりたいスタッフが現れなかったものですから、派遣不可能で返却しようかと思ったら備考欄に彼女の字で『意地でも人探せ』とふざけたことを書いていましたので。だったらあんたがやれよ、と直接言いに来たところです」

「いやwwごめんwwwええとね、もうちょっとで戻ると思うから、あやちゃんの机座ってていいから待ってて。呼んできたいんだけど今、みんな電話受けてる最中だから対応できなくてごめんね」

「大丈夫です、私は時間あります。電話が鳴ったら出たほうがよろしいのでしょうか?」

「ごめんね、課が違うから、別に出なくていいから。お待たせしまして申し訳ございません、ご依頼の打ち合わせにつきまして―」

LULULULULULULU

「…」

LULULULULULULU

「…(出方がわかんないな)」

LULULULULULULU

「あー柳田さん!出なくていいから!出なくていい」

「…(でも)」

LULULULULULULU

「…大変お待たせしまして申し訳ございません。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ人材育成課の柳田がお伺いいたします」

「…もう、いいんだって…はい。かしこまりました。見積もりはざっと見て12万」

「はい。はい。把握いたしました。ご依頼主様の彼氏様にプレゼントをお渡ししたいけれど、今まで男性にプレゼントをしたことがないからわからないということですね」

da2180068.jpg「ただいま戻りましたー…あ?(#゚д゚メ)

「うーん。確かに私や経験者の方々から口頭だけでアドバイスをしたところで百聞は一見にしかず、ですからね。では、倉田様?差し支えなければ、私、倉田様と一緒にプレゼント購入のため東急にご同伴させていただきますので、そこで私と一緒にプレゼントを選ぶ、というのはいかがでしょうか」

「おいお前、人ん机勝手に座ってなにしてんだよ」

「ちょっと待ってよ。もう少しで終わらすから。失礼しましたお待たせいたしました。はい。参考程度にはなるかと思います。私の彼も倉田様の彼氏様と年齢は近いですから、ええ。かしこまりました。それではお電話番号を控えさせていただいてもよろしいでしょうか」
      _, ._
 「…(;゚ Д゚)

「ちょっと待ってって言ってるじゃん。はい、大丈夫です。080-…はい。では、後ほどお電話いたしますのでよろしくお願いいたします。ありがとうございました。終わったよ。どくよ。どけばいいんでしょ?」

「何お前勝手にあたしの机座ってあたしが受けるべき電話取ってるわけ?」

「今の依頼。大学生の女の子。会員番号4401番の倉田綾子様。彼氏にプレゼントしたいけど何あげていいかわかんないって。私が休みの日に一緒に買い物行って選んであげるってことで依頼料1万5千円発生したから、依頼書類も書いといたから。あんたは特に何もしなくていいよ」

「だ か ら。 何言ってんだこの能面。何でここいんのかって聞いてんだよ」

「ああ思い出した。あんたねえ、この依頼を自分で考えてやってくれる子がいるのかってことから疑いなよ、何なのこの依頼書。鬼先輩の十字ガットで公式試合に出場してくれるテニスプレイヤーを依頼し、審判の反応を録画したいとか、そんなのやってくれる子はいないんだよ。自分でやんなよ」

「ふざけんなお前、それを探すのがお前の仕事だろ」

「やめなさい!」

「あーいいからいいから。ケンカしない。柳田さんもう戻ってね、この依頼は俺が断っておくから」

「あ、待って。課長、今の依頼の割り当て配分だけやらせないと」

「あーそっかそっか、最近ないから忘れてた。柳田さん、あやちゃんと今の依頼費用、何対何でペイするか決めて」

「え?」

「は?」

「他部課の社員が人材派遣課の仕事を請け負った場合、他部課の社員は依頼費用を対象となる人材派遣課の社員と配分するがその割合には選択権がある。社則」

「要するに今の依頼費用、柳田さんとあやちゃんでお互いの取り分を分けるんだけどその割合は柳田さんが決めていいの。柳田さんは給料に反映されるから。10:0はダメね」

「あ、では7:3でいかがでしょうか」

259640ac394cf9916bfbad7f26aebc3d.jpg「何調子こいてんのお前、お前があたしの机座って勝手に電話出て勝手に依頼受けたくせに何で7:3なわけ。5:5にしろや」

「意味わかんない。あんたが帰ってくるのが遅いから私が出たわけでしょ。電話出なかったら依頼になんなかったかもしれないじゃん」

「屁理屈こねんなタコ大体お前はな」

「どうやったら今のが屁理屈になんのかなあ、そろそろいい加減にしなよバカあや」

「二宮さん、ソッコー人材育成課行って神楽坂さん呼んで。俺が爆発する前に。急いで。俺ね、他部課の女の子にキレるのあんまり好きじゃないの」

「アイアイサー。すぐ連れてくるので精一杯我慢しててください」




「君たちはアレかね?二人仲良く顛末書と反省文書かされて楽しい?」

「 。・゚・(ノД`)すません」

「いいじゃないか7:3でも…だって自分が仕事してないのに、勝手にやってくれた奴が30%もバックしてくれるんだよ?おいしいとは思わない?」

「いやでも。あたしが出るはずだった電話をあの能面は」

5ddf53192fe09b3135d06cc0589ee9a1.jpg「いいかいあやちゃん。何かの不本意な事態があったとして。それを成り行きから結果までまで理解すると、意外と自分には都合がよかったなあ、と感じられるときがある。じゃあそれは利用すべきだよ。あやちゃんはね、あの電話は出れなかったんだよ。そう思いな。柳田さんが自分が受けれなかった電話をとってくれたんだ。そんで何もしなくてもわずかながら金が入ってきた。これから先、同じようなことがあったら!意地でも利用するんだ!その不本意な事態を、120%利用すんだよ!」

「二ノ宮さん顔が怖いですう」

「まあわかりづらいだろうけど。あとで見せてやるよ、あたしの利用術ってもんを」

「…」

「しかし柳田さんはじめてにしてはずいぶん上手かったな。さすがは神楽坂の血統ってとこか」

( ̄△ ̄;)え~~~~~~?」

「いや。あやちゃんの方が断然しっかりしてるよもちろん。経験が違う。でもね、あの子は神楽坂に師事されたら相当強くなりそうだね」

「ああそうでした。会社史上唯一、二ノ宮さんに月間のペイで勝ったのって神楽坂さんしかいないんですよね」

「2009年6月度。あれはショックだったな。年間では勝ったけど。そうだね。じゃあ、今度神楽坂を利用してみよう。見せてあげる」

「利用できるんですか、あの人…」

「だってあいつ、ただの中二病だしw世に貴重な女の中二病www」

「いや、それは関係ないかと」

(つづく)

LULULULULULU

フリーダイヤルにおつなぎします。しばらくお待ちください。


「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、二ノ宮がお受けいたします」

「お久しぶりです二ノ宮さん。私は上海の趙黒蓉です」

「誰だよw」

HE034.jpg「小ネタはさておき、私は会員番号505番の五十嵐和司です。二ノ宮さん、依頼の前に私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

「依頼の前に五十嵐様のお話を伺いするということですね。かしこまりました」

「実はですね、私は現在商社で部長職を務めているのですが、最近肩書きというもののバカバカしさについて考えるようになったのです」

「五十嵐様は商社の部長職を務めておられるのですね。そして最近、肩書きのバカバカしさについて考えるようになったと。それはどういうことでしょうか」

「肩書きというものは常に、自分の求めているものが手に入らないことに気づいてしまったのです」

「肩書きとは常に、自分の求めている物が手に入らない、と。それはどういうことでしょうか」

「二ノ宮さん、あなたは今なんという役職をお持ちですか?」

「私は課長代行役職を持っています」

「それはあなたが最も求めている役職ですか?」

「いいえ。私は役職にはこだわりはないので。そもそも私の場合は役職云々よりかは給与面を見ますので、課長代行でなくともよりお給与がよければ何だってかまわないのですが。まあ、給与面に比例して役職は上がっていきますので、概念としてはそれはおかしいのですがね」

「そういうことでしょう。私も同じです。私も役職にこだわりはありません。金なのです。そしてもう一つ質問です。あなたが本当に求めている役職は何ですか?」

「あー。私が本当に求めている役職ですか。やはりないのですが。まあ、強いて言うと今のワケわかんねえ代行役職よりは課長になりてえなあ、聞こえがいいからなあ、というのはございますがそれはあくまで現在の状況として、でしょうか。数年後どう考えてるかはわかりませんゆえ」

「なるほど。率直に言いましょう。私がなりたい役職、肩書きはおしゃれ泥棒であり、居留守の天才なのです」

「お電話ありがとうございました。担当は私、二ノ宮がお受けいたしました」

「お待ちなさい!電話を切ってはいけません!まだ私の話は終わっていないのです!」

「いや、わからねえよwwwもうあんた50半ばなんだからwww話の筋道がだな」

「50半ばになろうとも私の求めるところは常に同じです。私はおしゃれ泥棒であり、居留守の天才でありたいのです」

d0047811_1827358.jpg「まあいいでしょう。おしゃれ泥棒から私は申し上げしょう、この世の日本人の用いる口語において『おしゃれ泥棒』という表現を使うような人は一人としていないと思うのですが。あれはそもそもアメリカ映画の邦題タイトルの一つでしょう。それがいつのまにか、『おしゃれで流行を追い求める様、が泥棒のようだ』という慣用句として成り立ったという認識ですが。あれは職業でも肩書きでもなく恥ずかしい表現のひとつではないのですか」

「考えてごらんなさい。おたくの旦那さん、何やってる人?と私の妻が聞かれたとします。そこで妻が『今はおしゃれ泥棒をしています』と答えたとします」

「答えねえよww」

「どうです、朗らかな雰囲気になることでしょう」

「ならねえww痛い人だって思われるよww」

「いかがです?まず今日の依頼の一つは、私の身の回りの人間が私を『おしゃれ泥棒』と読んでくれるように示唆してくれること、それが早急に浸透することなのですよ」

「いや、浸透させることは不可能ではないのですが。周りの迷惑っつーもんを完全に無視していますと言うか。奥さんとか、子供とか」

「では、よろしくお願いいたします」

「人の話を聞けwwwwあんただけの人生じゃねえよwww」

「それではもう一つ。私のことをみんなが『居留守の天才』と褒めそやすには」

「褒めそやさねえよwwどこに褒める要素があるんだwww居留守にポジティヴな概念はないwww」

「これは非常に困難を伴うでしょう。そこで二ノ宮さんの力添えが必要になるのです」

EJ513AKN.jpg「そおかあ?私としましてはそっちの方がよほど簡単で金がかからないというか。基本は息を殺して生活音を立てないこと、細やかなカモフラージュさえあればそれはたやすいかと」

「それはあなたの一方的な勘違いです。居留守の天才と思われるのは、『在宅していない』と思わせてはいけないのです。それでは、『あそこんちはいつも誰もいない』と思ってしまう。そこでどうやって、周囲が私のことを『居留守の天才』と認識すると言うのですか?」

「うむ?それは確かに。五十嵐様が上手に居留守を使えば使うほど、『真に不在である』と思うという事ですね。これは一本取られた」

「そういうことです。すなわち、一度『不在である』と思わせた後、訪問販売、新聞拡張団、NHKの集金人、ものみの塔の若造に、その数分~数時間後に『実はあの家には人がいた』と思わせなければならないのです」

「いやwNHKの集金人は出ろよwww2940円だし」

「私はご存知の通りNHKは見ません。私にとって郵便配達人以外の全ての他人の訪問など接するに値しません」

「まあ、そうなのですけども。ふーむ。郵便…そうだ。こういうのはいかがでしょう。申し合わせて郵便配達人を派遣しましょう。そして、五十嵐様の仰る所の不要な訪問者を待ち構え、実際にいつ来るのか、などを事前リサーチします。そして一切の生活音、電気のメーターの稼働などを止めておきます。そして、訪問者がインターホンを数度押して『不在』と判断させたのち、宅配便業者に扮した当社スタッフをすれ違いで向かわせます」

「うんうん」

「そして宅配便業者に扮したスタッフがインターホンを押そうとし、すれ違った新聞勧誘員などが『そこ、今誰もいねえよ』と思った瞬時、言うが早いか室内灯が全て点灯、インターホンが押される前に五十嵐様はドアを開けて『あーどうもーご苦労さまです』とでも言うのです」

「それは面白い!その新聞勧誘員の顔が目に浮かぶようだ!」

「あくまでそれは一つのパターンにすぎません。しかしこれを数パターン用意し、幾度となく長いスパンで実施し続ければ、五十嵐様は『居留守の天才』と呼称される可能性は上がるのではないでしょうか。まあそれがいいか悪いかは別にしても。まあ、よくはねえな」

「いえ、私はそれで結構です。さすが二ノ宮さんですね。相変わらず理知的で聡明な方です」

「えっへん」


「あのさあ、あやちゃん。アレ、ダメだからね。ああいう、いくら常連クライアントで信頼されてるからってあんな横柄なタメ口は。あれは二ノ宮さんだから通用すること。俺も電話終わったら注意するけど。絶対真似しないように。会社の信用にかかわる」

「はい、わかりました。真似はたぶんできないですから(;´∀`)


「じゃあまたな優有、今度お前の好きなせんべい送るよ」
800a06d13ca9fc9ba2dbe6b55becdf6f.jpg9dc87d9d.jpg「あー。ありがと。じゃーね、お父さん、身体に気ーつけてね」


;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブホッ

「 ゜ ゜  ( Д  ) 」



魅力的なことわざ講座No.3…

「あらいぐまのラスカル」
raccoon_yun.jpg
TVアニメなどで愛玩動物というイメージが植えついているアライグマだが、実際は非常に気性が荒い動物であり、安易に飼育することはできない。また、地方自治体で野生のアライグマによる人的被害、生態系の環境を保護するため防除対策がとられているが、動物愛護団体が圧力をかけているという。

この語例の意味づけは学会でも非常に意見が割れており、

① 「メディアで間違ったイメージを植え付けられ、現実世界で被害を被ってしまうさま」:日本ことわざを守る会・日常国語専門学会の論述

② 「メディアで間違った認識をしている人間に対しアライグマが『しめしめ』と嗤っている状態を指す。転じて、自分が保護される存在であることを認知しており、そのうえで確信犯的に悪事を行う意識の持ちよう」:IPA・groupE(国際ことわざ原理協会の一部の過激分派)説

③ 「ラスカルは通常のあらいぐまではなく、自然でも稀にみる人になつく生態をもつ特殊なあらいぐまの種だった。例外的な存在をことわざに用いてはならない。すなわち、こんなことわざは存在しない」:不苦労先生ほか同派閥の説

の3つの説が現在でも喧々囂々の議論を行っている。


「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当はわたくし二ノ宮優有がお受けいたします」

依「あ、これはこれはお忙しいところ申し訳ないんですけど、先日会員になったばかりで、今回初めての依頼をしたいのですが」

「はじめてのご依頼ということですね。それでは会員様のお名前と会員番号をお願いいたします」

依「あ、はい。宮坂功治と申します。会員番号は3001番です」

「かしこまりましたありがとうございます。では宮坂様、どのようなご依頼かお聞かせ願えますか?」

依「私の小学生の娘の通っている学校に、専門の先生を呼んでいただき、野生動物の危険性について講義をしてほしいのです」

「宮坂様のお嬢様が通っていらっしゃる小学校に、専門の先生を呼び、野生動物の危険性について講義をさせるということですね。この講義というものは、全校生徒を対象にして行われるのでしょうか?それともお嬢様の学年のみ、でしょうか?」

依「講義を聞く範囲はどうでもいいのです。別に娘のクラスの授業のヒトコマでも構いません」

「そのあたりの範囲は指定なさらない。お嬢様のクラスの授業のヒトコマでも構わないということですね。しかしながら、こと小学校におきまして宮坂様のお嬢様のクラスの授業だけそのような専門の先生の講義が授業内で行われる、というのはいかがなものでしょうか。教師のかたがたが不審に思いはしないでしょうか。野生動物の危険性をお嬢様だけににレクチャーするというのは、小学校というコミュニティで行う限りは比較的広範囲を対象にしなくてはいけないのではないでしょうか」

依「…うーん、そういうことですか。確かにそうなんですけど」

「失礼しました、依頼について私が難癖をつけるつもりは全くないのですが、費用の差異が激しいと思いましたので申し上げました。例えばお嬢様に野生動物の危険性を説くとする。お嬢様だけが対象であるならば、なまじ専門の動物学者などを呼ばなくとも、そういうのに詳しい学生などでもよいでしょう。しかし、小学校内において、となりますとそこに教師たちの目が光るわけですから、一般人ではく本当に学者クラスを呼ばなければなりません。専門職派遣依頼については、スタッフ時給が非常に高くつくので確認をしたいのです」

依「そうですね、あまり高いと困ります」

「極端な話、宮坂様に専門知識を把握していただき、お嬢様に教えてあげるだけ、なら依頼料など1万円かかりはしないでしょうが」

依「そういうわけにもいかないんです。娘はあらいぐまを飼いたいと言っていて、妻もそれに味方しています。こないだペットショップをのぞいてきたそうですから。けれど、私はあらいぐまの危険性というものは知っているつもりです。とても危険な動物だと言うことではないですか」

HE062.jpg「そのようですね。お嬢様がお怪我をなさる可能性はあるでしょう、こと、あらいぐまに関しては」

依「しかし、娘も妻もあらいぐまのラスカルに毒されており、私の言うことなど聞く耳を持ちません。犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うのです」

「なるほど、お嬢様も奥様もラスカルに毒されているがため宮坂様のご意見を聞いてくれない、と。確かに、犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うことでしょう」

依「はい、犬猫ハムフェレとはわけが違うのです」

「宮坂様、今は犬猫ハムフェレと言いたいだけではないでしょうか」

依「いいえ、そんなことはありません」

「そうですか、それは失礼いたしました」

依「ですから、できるだけ安価で済ませるように、娘に、それなりに説得力のあるような方が講義をしてくれればと思いまして」

「それでは宮坂様このような提案はいかがでしょうか。宮坂様は一度、奥様とお嬢様に促し、ペットショップに行ってあらいぐまが幾らなのか、どのように飼えば良いのか聞いてくるように言うのです。そのペットショップに動物学に造詣の深い弊社の専門スタッフを待機させておき、奥様やお嬢様の質問に対し、非常に批判的に返答させるのです。あらいぐまなど飼いたくない、と思わせる程度に。それが一番、ご要望に添えられ安価で済むと思うのですが」

依「あ、それはいいかもしれませんね。大丈夫でしょうか?」

「依頼のフロー自体は単純なのですが、ペットショップの店長を抱き込む必要があるのでざっと見積もりをした限りは8万円ほどかかってしまうのですが」

依「うーん」

「小学校に呼んでどうこうするよりは、よっぽど安全かつ安価に、即座に行えることでしょう」

依「わかりました。それでお願いします。放っておくと今にも買ってきそうですから、できるだけ急ぎで」
 


R012092.jpg「課長、うちの専門職スタッフで動物学者っていますか?」

「聞いたことないなあ。人材育成課に聞いてみたら?」

「あー」






pika-onemuri-a.jpg「比嘉中課長、すいません。専門職スタッフで動物学者はいませんでしょうか?」

「動物学者?動物学者ねえ。植物学者はいるけど、動物学者はいないなあ。それっぽい人はいるけど」

「うーん」



HY133.jpg「神楽坂、ちょっとお願いあんだけど、スタッフで動物学とか先行してる大学院生とかいないか?探してほしいんだ」

「そおだねぇ。ちょっとひとりひとり連絡しないとわかんないなぁ。大学生で獣医学を先行してる、とかはいるかもしれないけど、あたしも全員のこと把握してるわけじゃないからなあ」

「いつごろわかる?」

「そんなすぐにはわかんないよ。見つかったら連絡するよ」

「むー」







「そんなこんなでミュージカル『あらいぐまデンジャリスタ』っていうのの台本を昨日徹夜して書いたから、あやちゃんは深く考えなくていいから、そこにあるあらいぐまの着ぐるみを着てほしい。柳田さんは申し訳ないけど恥をしのんで黄色い帽子をかぶってと赤いランドセルをしょってほしい。スカート短いのな。大丈夫、劇中で胸チラとかパンツが見えることはないから。じゃあ、予行練習はじめようか。神楽坂!演技指導たのむわ!」
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「(;´∀`)に、二ノ宮さん?何でこんなことになっちゃってるんでしょうか?」

「…こんな恥辱的な依頼は今まででもはじめてです」

「そこまで引っ張るほど面白いネタじゃないと思うんだけどなぁ」


 

「ノ( ;゚Д゚)ノぉわあ!!」

「つーかまーえた」

「か、神楽坂さん?」

HY161.jpg「あららん。あやちゃんいいとこにいたねぇ。ちょっと時間あるかなあ」

「(`・ω・´;)な、なんでしょう?」

「メイカ、おいで!あやちゃんみっけたよ。あのさーあやちゃん、あたしの耳に入るのが本当さっきだったからさぁ、どうもこないだ、うちの子をゆうさんが専属派遣依頼とか言っていじめまくったらしいって聞・い・た・からさぁー。ちょっとどうなってんのかなぁって思って。人材派遣課にゆうさんがいねぇからさー。どこにいんのかなぁって思ってさぁ、連れてってくれるかなあ、心当たり」

「(((((((( ;゚Д゚)))))))あ、あたしはちょっとその件につきましては詳しく存じ上げておりませんものでして」

「はやく歩きな、こっちも長居してらんないからさぁー」

「あ、あー、うー」

「わかんないならいいよぉ、あたしらで見つけるから、その間は人質になってもらおうかな」

「ぃぃぃぃぃぃぃぃいl《(;´Д`)》」

「神楽坂さん、たぶん、本当に居場所は知らないかと…」

「いいんだよとっ捕まえときゃ。ゆうさんの行動パターンは読めてるかんね、この時間いないんだったら、どっかで派遣の現場でも行ってるんでしょ」

「そういうわけだから。それともどこにいるかわかるなら案内して。いえ、違うね。二ノ宮さんに電話して」

「…(;・`ェ・) 」

「まったく、事前に言ってくれりゃー何一つ文句なんか言わないのによぉ」

「はやく電話してよ」


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「なんだよお前ら、現場の真っ最中なんだから邪魔すんなよ」

「二ノ宮さん!!ごめんなさい!!」

「ゆうさんあのさー。先日なんか、うちのメイカが3日も現場行って、帰ってきたら3日も休んだわけだよ。聞いたら300万口っつーじゃない。そこまでなら文句言わないんだけどさぁ、聞いちゃったからさぁ。なんでさぁ、そうなの。なんで内容のこと何も言わないで仕事させんのかなぁ。別の理由があるんだろ?どうせゆうさんの気まぐれっつーか気分的なさぁ。さすがに1週間この子なしってのはそれなりにきっつかったんだぜ?」

「あー悪かった。それは謝る。あたしの個人的な暴走だよ。詫び、なにすればいい?」

「そういうの、もういらない。何が個人的な暴走だよ。なんだかんだ言って、いつも客観的な態度のようでその実、自分の後輩の方が大事で人様の後輩のことなんかどーだっていいのが伝わってくるわ、いい加減腹立ったね!ちょっと今日は戦線布告しにきた」

「あのなぁ神楽坂、戦線布告もクソもな」

「雷鳴の轟く麗かな初夏の友引、時は決した!今こそあたしの生涯のライバル二ノ宮優有、雌雄を決するときがきたようだね!さあメイカ、矢倉太鼓を用意するのよ!」

「だwwwかwwwらwww何なんだよw何なんだお前wどういうキャラをもらってんだwww何が生涯のライバルだwwどうやって雌雄を決するんだよここでww何をしたら勝負として成り立つんだwwジャンケンかwあっちむいてホイかwいいか、あたしら部署が違うんだよ、それでどうやって勝負とかそういう発想になるんだよwwwあたしら電話を受けるほう、お前ら人を手配する方、それで何でライバル関係が成立すんだよwどうやって勝負すんだよwww言ってみろ」

「二ノ宮さん!さすがにメタにもほどがあります!話が進まないからつきあってあげてください!」

ヽ(♯ ・Д・)ノ┌┛ゲシッΣ(ノ `Д´)

「驚きましたね。神楽坂さんの生涯のライバルともあろう方がお逃げになるのですか」

「逃げねえwww逃げねえよwwwどうやったらそういう発想に陥るww逃げても明日も仕事しなきゃいけないだろうがwww」

「そうやって毎回毎回逃げるのね!?クッ、あの鋭利な刃の表象こと二ノ宮優有、ホスト通いをしなくなって以来本当にパワーダウンしたんだね!最近の隠遁生活が枷となったようね!ここまで腰抜けだとは思わなかったよ!」

「逃wげwるwのwねwじゃねえwwwいい加減にしろお前、そういう口調する女は小説の世界でしか存在しないww何が腰抜けだwww現実世界の24の女はそんな単語使わねえよwww」

「二ノ宮さん!確かに言いたいことはわかるんですが、少しぐらい眼をつぶらないと無駄に行数が増えるだけなんです!そうだ、あたしもノリます!二ノ宮さん、これは人材派遣課と人材育成課の均衡を破る破滅的なクライシスです!さあ、ご一緒に」

(♯´_ゝ`)ノシ  スパン  )))Д`;)

「ふん、行くよメイカ。もういい。こんな錆びついたナイフに用はない!人違いだったわ。ここにいるのはあたしの知ってる二ノ宮優有さんじゃない。そんなことがあるもんですか!ここにいる女は、ただの牙を抜かれた臆病者のフェレットだわ!」

「はい。課に戻りましょう」

「臆病者のフェレットって言いたいだけだろwwwどこの漫画から拝借してきた表現だwwwさっさと消えろwww人違いでいいよ、もうww」

「けれど覚えておくことね、ゆうさん。この借りは必ず返す。近いうちにあたしたちが巡り合ったあの場所で逢いましょう。そこがあなたの静岡(サイレントヒル)という名の墓標に変わるのよ」

「迷走すんなwww失せろwww」

「オールヴォワール、次の邂逅を楽しみにしているわ」

「うぜえwwww」

「いやぁ、ここまでキャラが不安定な人は久しぶりに見ました」

「感心すんなよww柳田さん、ちょっと。あたし、あなたがこういう、神楽坂まで巻き込んで揉め事を起こすような子だとは思えなかったんだけど。なんでこういうことになったの」

「いやあの。あたしはあの仕事で160万近く手に入ったので不満や遺恨は一切なかったんですけど。ついつい口が滑ってしまい神楽坂さんの耳に入ったが最後、あれやあれやと言う間にこのようなことになってしまい大変申し訳ございませんでした」

「神楽坂にはブレーキがない。今後、あなたの背負ったものは大きいよ?」

「はい。肝に銘じます。ご無礼いたしました」

「えーと。二ノ宮さん、お疲れ様でした(´・ω・`) 」

「ああああああああ面倒臭かったwww」


「もしもし。はい。ええ。うまく行きました。ええ」

「…」

「はい、はい。その通りにしました。はい。計画どおりです。はい」

「?」
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「多少体は壊しましたけれど、これでKI-TSU-Eスタッフの頑健な課同士のつながりは断ったも同然です。人材派遣課の二ノ宮、人材育成課の神楽坂、このふたりの関係のバランスを壊した今、KI-TSU-NEスタッフの主軸は混乱状態は必死でしょう。これで私の役員の椅子は保障されましたよね?」

「(;゚Д゚)…」

「全く、面白いくらい簡単にことは進みましたよ。こんな産業スパイをしやすい会社は今までではじめてです。あとは数名、二ノ宮と神楽坂の息のかかった連中を排除してしまえばKI-TSU-NEスタッフの内部崩壊は約束されたようなものでしょう。ふふふふふ」

「(;゚Д゚)…!!」

「! お待ちください、後ほどかけなおします。あら。いたの?」

「や、柳田!?お前、今の電話…」

「ふっ、ばれてしまっては仕方がないけれどあなたごときにばれても何の問題もない。そう、あたしはKI-TSU-NEスタッフの体制を内部から壊滅させる役割を負った、組織のエージェントだったのよ!」

「な、なんだってー!!(; ・`д・´) 」

「しかしさすが二ノ宮優有の懐刀と言われた女ね、藍沢絢!今まで誰にも疑われなかったのに。まあここで難なく始末することは容易い。ねえ藍沢さん、あたしはあなたをそれなりに評価してる。今からでも遅くない、あたしサイドについて、一緒にKI-TSU-NEスタッフを潰すというのはいかが?もちろんタダとは言わない、あたしの下で一生の安全を約束し、望むものは何でも与えてあげるよ!」

「ふざけんな!あたしは二ノ宮さんを裏切るわけにゃいかないんだよ!あたしを舐めるな、誰がお前なんかの下で働くか!それなりにこっちは愛社精神ってーもんがあんだよ、許せねえ!柳田明佳、こいよ!今ここで決着つけてやる!」

「ふふん、軽く見られたもんだね。歳は同じでもあたしとあなたでは格が違う、あなたごとき、あたしに触れることもできない!さあ、かかっておいで!」

「二ノ宮さん、あたしを見守ってください。今からこのクソ女と戦います!あなたはあたしが守ります!」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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「ZZZZZ うーんなんて卑怯な…っ!でも負けるもんか!あたしが、あたしが…ZZZZZZZZZ あいたたたた痛い痛いお前そこは、ZZZZZZZZ。。(o_ _)o」

「という感じの夢を見てると思うのですが、とりあえず今から叩き起こすのでぎったんぎったんにする許可だけもらえないっすか、最低でも」

「まさかの、夢オチ…www」
 

「ヘ(゚∀゚ヘ)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\」

「なんか電話の向こうであやちゃんの発狂寸前の笑い声が聞こえんだけど」

「まあ簡単に言うと前編参照、あれあれどれどれこうなってそしたらぴしゃっときてイエーイ。人材育成課の新卒が3日、食事抜きで監禁されたのが本当に楽しくてたまらないらしい。ここまで喜ぶとは思わなかった」

「おまwww」

「まあ何だろうな。あたしもちょっと虫の居所が悪くてさ。人材育成課の新卒の態度にちょっとムカついたのと、そのあと課長に怒られたからさ。ついやっちゃったんだ」

「お前、神楽坂大丈夫か?んなことして今頃どんなことになってんだよww」

R042092.jpg「いンや。実質上300万強にはなったわけだから、あたしは余裕で目標ノルマ大幅に越せたし、神楽坂も何も言ってきてないな。何しろ300万だからね。あとは…その新卒の子、かなり根性あるわ。訴えられる覚悟で連れて行ったけど、特に何もない。まあそのあと体調不良で3日は休んだみたいだけどね」

「いいけどさ、とは言えないなw一歩間違うと犯罪だからな。わかってんのか?」

「ああ、ちょっと今更ながら反省してるけど。まあ、あやちゃんの味方だからな、あたしは。人材育成課の新卒の味方ではないよ。どんだけ正しいことを言っててもね」

「うーん。なるほどね…ちょっと話変わるんだけど、今、そっちでは社則をしっかり遵守しようとする流れになっていると。例えばあれか?いわゆる社則に触れる依頼を専門に受け持つ部署ができたら、今回のようなトラブルはなくなるか?」

「別にトラブってないよ。トラブる可能性があったってだけ」

「あーいいわかったわかった」

「そうい部署ができたらって、できねえよ。社則の届く範囲じゃあ」

「わかったわかった。あとでそっち行くよ。ちょっと考えがある」

「別に来てもいいけど、あんたちゃんと仕事してんの?」

「余計なお世話。俺も少しは仕事のことで考えてんだぜ?」

「あー。あんたの考えは癖があるからな…」


(人材育成課)

「!」

「(・∀・)!よー、おはよう」
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「おはよう。何その顔。下品だよ」

「うるさいな。なーんだちゃんと出勤してんじゃんって思って」

「そりゃ体調なおったら出社するよ。何の用。派遣依頼書受け取ってほしいならさっさと出してくれる?」

「これやって」

「…」

「なに?何か問題でもあんの?」

「ないよ。確認した。スタッフ手配しとくからもういいよ」

「…」

「なに」

「歯ごたえねーなーって思って。まだ弱ってんじゃねえ?」

「本調子じゃないかもね。3日で300万の依頼なんてやって響かないわけないでしょ。早く行ってくれるかなあ。そこまで暇じゃないんだよ。あとひとつだけ言っておく。酒臭い。おっさんみたい」

「同期の飲みってもんもあるだろ(*`д´)」

「行きすぎなんだよ。同期の飲みってのはグループごとに行われるもんでしょ。なんで全部参加してんの。そんなにかっこいい男の人、いないよ?」

「おいちょっと待て、人が男に飢えてるみたいな言い方しやがって、結局全然弱ってないよな。へらず口ばっか」

「…あたしを自分でどうにかした、と思わない方がいい。あなたはいつも他力本願だから」

「…o(`Д´*)o」

「はやく戻んなよ」


(会社帰り)

「それにしてもあれですよね。柳田って合コンで真っ先に男とトイレ行くタイプですよね」

(♯-_-)=(/3`)/ ボカッ

「口が悪い」

「すません(#ToT)」

「こう、あれだな。人材派遣課の弱点。挑発に乗りやすすぎる。いっつもあたしらが最終的にケンカふっかけたほうになってる。原因は半々なんだけどな。営業部長が止めに入ったとき、ぶちギレてんのがいつも課長だからな。そういう風に見られるのがダメだ、もう。いいかいあやちゃん。柳田さんとしゃべることがあっても、何も話しかけるな。向こうの話を深く聞こうと思うな。挑発に乗る前にその場から帰る。いいね。あたしと約束して」

「はい、約束はできます。あたしだってあんなのと深入りして話す気なんてないです。仕事の話だけしかしません、これからは」

「それでいいそれでいい。それをわかってくれれば。それがオトナってやつなのだ」

「はいっ」

「おや。あれ、柳田さんじゃね?」

「え?」

「あの感じは。ああ、やっぱそうだ。一緒にいるの、彼氏かな?」
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「…(;゚д゚)」

「あやちゃん?」

   _, ._
…(;゚ Д゚) 


「おいwwwちょwww」


(翌日)

「まさかあやちゃんの顔色が悪いのはそれが原因ってオチじゃないだろーね」

「いやそのまさかでして、柳田さんの彼氏が結構カッコよかったのが相当気に入らなかったようで即座に新卒仲間に電話して飲みを募ったんですが急で誰も集まらなくて。で、仕方なくあたしの行きつけのバーに連れて行ってやったらそこのバーテンダーに一目惚れして飲みまくった後、そのバーテンダーが『僕、新婚なんですよー』って言われた瞬間店変えましょうってなって次の店で自棄酒に溺れてこのザマでさぁ」

「若いw若すぎるww」

「どうかご勘弁を。あたしもあやちゃんも目標ノルマは獲ってますので」

「本当だよ。それがなかったら始末書、自宅謹慎もんだよ」

「ぅぐーなんであんな性格悪い女にあんないい男がー(;´ρ`) グッタリ 」

「この世の不愉快な真理の一つだな。性格の悪い女の彼氏は、半数以上かっこいい。そこまで言うほど性格悪かないだろ、そもそも」

「許せない…撲殺されてほしい、にんじんソードで(ノД`)」

「撲殺言うなw年頃の女が撲殺てw」

「二ノ宮さんも去年まで似たようなことあったけどね、ホスト行った翌日、仁王みたいな顔で出勤してきては『あたしのハルトにべたべた触る豚女ども全員チェーンソーで八つ裂きにされろ』みたいな」
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「いや、やめてくださいwそんなあたしの黒歴史を日の当たる場所に出すのはwww」

(後編につづく)

(廊下にて)
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「あっ」

「おっ」

「( ゚_゚)」

「ゆうさんおはよーございます、あやちゃんも」

「おぅ、おはよう。いっぱい連れてスタッフ研修か?」

「そーですよー。あ、この子たち全員新卒ね」

「噂の優秀な新卒な」

「みんなごあいさつして!人材派遣課の課長代行の二ノ宮さんだよ!整列!!」

ぴしっ

「Σ (゚Д゚;)」

全員「おはようございます!!!!」

「…」

「なおれ」

「…その、部下の掌握力は本当に見習いたいね」

「いーえーとんでもない。最近の若い子には礼節から習わせないとダメだからね。あ、そうだ、そうだそうだ。メイカ!ちょっと!」

JP053.jpg「はい」

「メイカ、先日ご迷惑をおかけした謝罪をゆうさんとあやちゃんにすること」

「…いや、いいよ。どっちかっていうとこっちが騒いだだけっつーか」

「このたびは私の態度のため人材派遣課に失礼をしてしまい大変申し訳ありませんでした」

「…(#゚д゚メ)」

「こちらこそすいませんでした。ほら、頭下げろ」

「(_ _ ")」

「これで後腐れなしね。いいね、これでいいよね」

「まあ確執が消えたとは思わないけど…今日はこれでいいんじゃないのか」

「おっけー、じゃあみんな行くよ。軽く整列!」

全員「お疲れさまでしたー!!」

「なおれ」

「(゚Д゚;)…」

「じゃーねーゆうさんおつかれー。来週あたし、そっち行くからよろしくねー」

「あー。お疲れー」

「(゚Д゚;)」

「あの統率力ばかりは真似できないな、大したもんだ」

「…」

「どうした柳田さん?行かなくていいのか?神楽坂、キレるよ?」

「すいません。どうしても一言だけ。あなた。藍沢さんあなた。何で挨拶を返さないんですか。あたしにしたくなくても神楽坂さんと他のみんなには言えるでしょ?」

「(▼皿▼メ;)…」

「あ、ごめ、それは実は…」

「中途半端だね、あなたは」

「メイカー!!何してんの!?さっさとおいで!!怒るよー!?」

「はい!すいません、すいません!」

「…」

「…」

「もう怒っとるがな」

「…(( ╬◣ 盆◢))プルプル」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」!!!!!!!」

「で、何でこうなったの?」

「具体的に解説厨乙と言われる程度に説明しますと、風邪をひいて喉を壊したあやちゃんなんですが昨日同期の集まりで飲んだあとカラオケまでついてって起きたら完璧に声が出なくなって、オペレーターが声が出なくてどうする、社会人なんだから節度をわきまえろとあたしに怒られた後、廊下を歩いてたら、あとは上を読んだ通りです」

「解説厨乙。健康管理もできず後先考えずに騒いで、また揉めかけたわけね、くだらない。それと二ノ宮さん、メタ発言は控えな」

「向こうの柳田さんとはもうダメすね。仲直りは不可能でしょう。でも、まああの言い方はよくないすね。彼女も視野が狭い割に思ったことをすぐに言っちゃうから。あとでもっかい神楽坂に一言しときます」

「人材育成課のことはもうどうでもいいから仕事の割り振り考えて。声が出ないのに電話番なんかやらせられないよ」

「いやでも、あやちゃんが怒るのはしょうがないですよ?あの言い方はあたしもちょっと腹立ちましたもん」

「んなことどうでもいいんだよ!仕事の割り振りを考えろって言ってんの!!」

「…事務と資料整理に回します。この子の分の電話はあたしが全部取るので」

「よし、それでいいよ」

「…」

「ん?なに…」

「…」
  _, ,_  ズバッ
( ’д’)
   ⊂彡
))Д´)

「口が悪い」

「な、なんて?」

「『柳田って制服系の風俗で働いてそうですよね』」

「ちょwwww」

「o(TヘTo)」

LULULULULULU


「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、二ノ宮優有でございます」

「優有ちゃんあたしー」

「赤井様?赤井様ですね。いつもお世話になっております。今日はどうなさいましたか?」
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「PV作るの。でさあ、10人ほしい。そのうちひとり、できるだけ根性があって健康な子が必要なんだ」

「DimMasterのPV撮影に10名。そのうちひとり、できるだけ根性があって健康な子が必要なのですね」

「うん。で、今回はカヴァーをやってそれのPVを撮りたいんだよね。そんで優有ちゃん、プリンスの『Silicon』って曲は知ってるかな?」

「プリンスの『Silicon』のカヴァーということですね。まあ私のような年齢のOLが知ってるわけがない曲でしょうが、知らないと言うと話が長引くので知っているということにしておきましょう。2004年の『slaughterhouse』の曲でむちゃくちゃソリッドでクールなテクノポップですね。私は『Judas Smile』のほうが好きですが。両方ともうちの社長がベタ褒めしている曲です」

「解説厨乙と言わざるをえない。どうもありがと」

「PVの内容はどのようなものになりますか?」

「『うぇるかむとぅーざすらーたーはぅす』って同時にスタジオの扉が内側に開くんだ。で、そこに、ピエロっぽいメイクをした10人が、配置、向きをでたらめに並べた椅子に座って無表情で硬化してるようなシーンからはじまる。あれあれ。『寄生獣』の広川市長の会議中みたいな、全員椅子の向きが違う、みたいな感じ」
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「『うぇるかむとぅーざすらーたーはぅす』というヴォーカルと同時にスタジオの扉が内側に開く。ピエロっぽいメイクをした10人を、『寄生獣』の広川市長の会議中のように全員椅子の向きが違うように配置し、無表情で硬化してるようなシーンから始まるのですね」

「そうそう。で、その不気味な空間にうちのAYANEが歌いながら入り込んでその10人の周りをうろちょろして、いろいろ覗き込んだりするんだけどまあそのピエロどもは一切反応なし。硬化してっから」

「AYANEさんがそこに歌いながら入り込み、けれどピエロたちは硬化しているためAYANEさんがいろいろやっても一切反応しないということですね。わかります」

「で、曲の中間で『だぶだぶだぶりゅー、だっこーん♪』ってあたりでAYANEがその部屋にあるパソコンに気づくんだ。で、キーボードをちょこちょこ動かしてると、『この人形を解凍しますか?』っていうダイアログが出て、AYANEは『はい』をクリックすんだ。あ、人形ってピエロのことね」

「曲の中間地点、楽曲的には『だぶだぶだぶりゅー、だっこーん♪』の辺でAYANEさんが部屋の中のパソコンに気づく。そしてキーボードを操作していると『この人形を解凍しますか?』っていうダイアログが出る、と。そしてAYANEさんは『はい』を押すのですね」

「そだね。で、AYANEは面白がって一気に9人分、解凍するわけ。で、解凍した人形はコーラスをしたりダンスをしてくれるわけよ、でも最後のひとり、要するにその子が要なんだけど、その子は最後まで解凍してもらえないわけ」

「少々お待ちください。ダンスですか?ダンサーをつまり、現段階で9名必要ということになりますが」

「いんや、振り付けは簡単なもんをちゃんと時間をかけて練習させるから、普通の運動神経があれば踊れるよ。素人で問題ない。それに、最後の一人は最後まで踊らないよ」

「はて。最後のひとりは最後まで踊らないと。では、最初にお伺いした『根性があって健康』というのはどこで必要になるのでしょうか」

「それなんだよ。AYANEが『でぃ おーにーおーにーおーにーおーにーおーにのー♪』って歌いきったら、解凍してもらった9人の人形はAYANEと一緒にそのスタジオを出るわけよ。で、AYANEはそこを外側から3重くらい鍵をかけて、最後の一人を完璧に閉じ込めてフェードアウト」

「…AYANEさんが『でぃ おーにーおーにーおーにーおーにーおーにのー♪』と歌いきる。解凍された9名の人形はAYANEさんと一緒にスタジオを出る。AYANEさんは外側から3重くらい鍵をかけ、最後の一人を完璧に閉じ込めてフェードアウトする。赤井様、少々私には趣旨が…」

「その最後の人形は3日くらいその部屋に閉じ込めっきりで、3日後に開けたときの様子を撮ってフィニッシュで持っていきたい」

「お待ちください赤井様。私には二つ返事でお受けしますとは言えない内容になってしまっております」

「いやわかってる。わかってるんだ。だからこそ優有ちゃんに頼んだんだよ」

「人命に関わる内容の依頼をここですぐお受けするわけにはまいりません。そもそも世界観はいいのですが設定が乱雑すぎます。3日間ほったらかしで、食事はどうなるのですか」

「食事はないよ。何甘ったれてんの。でも部屋にトイレは用意するよ、悔しいけどそれくらいは。でも心配しないで、携帯の電波は入らないし、部屋は防音だから悲鳴とかは外には漏れないよ」

「だwかwらw甘ったれるの意味がwwwわからないw文脈がおかしいwww一種の監禁ではありませんかwww」

「まあ、『slaughterhouse』ってのが『屠殺場』って意味だからな、理にかなってるよ」

「かなわせちゃいけないwwwそんな理はかなわなくてwww」

「前回あやちゃんを使ったときのリスナーへの衝撃はすごかった。まさか5日で放送禁止になるなんて。あれを越すにはこの構想しかないんだ」

「越さなくていいww越してどうするwwまた放送禁止沙汰になりますwww」

「3日で放送禁止になってもいいんだ、今回のシングルは大事なんだよ、シングルがミリオンヒットしたのにPVが過激すぎて視聴できないなんて最高じゃん」

「お受けできませんwお受けできかねますwww」

「そこを何とか、今回はケチんない、300万出せる」

「お受けできかねますwww」

「これはKI-TSU-NEスタッフとDimMasterにおける輝かしい一歩になるよ」

「私には深淵の暗黒に向かう転落への一歩にしか見えませんwww」

「二ノ宮さんありがとうございます、わざわざあたしなんかをDimMasterのPVの依頼に3日も専属派遣してくださるなんて。本当に光栄です」

「時間もあるしご飯食べに行こう、おごってあげるからお腹いっぱいにしとこうか、今のうちに」
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俺用。最終更新日5/12
ほとんど完成版。あとひとり。


QX019003.jpg二ノ宮優有(人材派遣課 課長代行) 

YU NINOMIYA

26歳

二つ名…最強のオペレーター、腹黒天使、お茶目でキュートな女の子(自称)

趣味…旅行、変な仕事の現場派遣に行くこと

性格…非常に難しい。初登場時と比べ随分丸くなったというか攻撃的でなくなった。協調性を重んじるが、神楽坂かなでの挑発で一瞬でキレる。常識人だが、常識人ではない。二律背反の女。

その他…顔が毎回違う、去年までホストにはまってたので高給取りだが貯金は少ない(このへんを突っつくと激昂する)。彼氏はその、はまってた元ホストであるという設定になってしまった。どうも面倒くさくて。


gf1420002221.jpg藍沢絢(人材派遣課 新入社員)

AYA AIZAWA

22歳

あだ名…あやちゃん

趣味…月9ドラマの鑑賞

性格…微妙に少女趣味、微妙にシンデレラコンプレックス、微妙にレズ

その他…入社2カ月め、仕事がどんどんできるようになったのと比例してどんどん口が悪くなっている。また、今後二ノ宮優有に次いで顔が毎回違うようになるのではないかと懸念している。柳田明佳と非常に仲が悪い。それは、本能的に。


R012061.jpg猪元由正(人材派遣課 課長)

YOSHIMASA INOMOTO

33歳

課外評判…沸点45度、激情の恵比須顔、デキる男/キレる男

趣味…競輪鑑賞

性格…愛社精神たっぷりの激情家。3次関数なみに感情の起伏が激しい。

その他…KI-TSU-NEスタッフを利用し悪事を目論む悪者に鉄槌を下すという内密業務を行っている。比嘉中課長とは非常に仲が悪いが、どのよな原因で衝突したとしても傍目には一方的にケンカを売っているようにしか見えない。


R042100.jpg山瀬幸輔(元人材派遣課社員 退職→???)

KOUSUKE YAMASE

29歳

二つ名…幻想の住民、偽精神科医、エセセラピスト

趣味…めがねコレクション、MAD動画作成

性格…のらりくらり。超マイペース。精神に難をきたしている顧客に対しての営業能力は二ノ宮優有を大きく上回る。

その他…退社後、仙台で事業を立ち上げた。暇を見つけては人材派遣課に遊びに来るので、たぶん寂しいのだと思う。


da276032.jpg赤井瞳(KI-TSU-NEスタッフ会員 ロックバンドDimMasterのプロデューサー兼ドラムダンサー)

Ririe / HITOMI AKAI

28歳と29か月(自称)

芸名…リリィ

趣味…演奏したことのない楽器の練習

性格…ヒトラーのような独裁者風味。楽曲の売り方と倫理は別、という考え方。

その他…キているPVの脚本を思いついてはKI-TSU-NEスタッフに依頼し撮影している。二ノ宮優有を信頼し、友人関係でもある。
ちなみにもちろん遠野文小説「Bent Love」のリリィ(マゼンタレディ)と同一人物。しかし「もちろん」と言ってもそれはもう誰もわからない。

HC140.jpg芝浦耀子(経理課 主任)

YOKO SHIBAURA

35歳

課外評判…貴重な一般人

趣味…ワイン全般

性格…KI-TSU-NEスタッフの良心。面倒見がよく落ち着き払っており、このシリーズでも数少ない常識人。
ボケでもツッコミでもない。客観的な視点で常に物事を考えている。クセの強い人材派遣課&人材育成課社員の相談役として重宝されている。

その他…既婚。人材派遣課と人材育成課がケンカしないように見張っていることが多い。経理なのに。


HY100.jpg神楽坂かなで(人材育成課 課長代行)

KANADE KAGURAZAKA

24歳

課外評判…最年少課長代行、イケイケの象徴、二ノ宮優有の生永遠のライバル(だっておww)

趣味…夜遊び全般

性格…一種の完璧超人のようなもの。だいたい何でもそつなくこなす相当の自信家で、口調の刺々しさを自在に操る(空気が読めないのではなく、人がどれだけの言い方でどのように機嫌が運動するかを熟知している)

その他…二ノ宮優有にかなりの対抗心を燃やしている。口先が達者なので、二ノ宮優有へのコンプレックスは周りには見えない。


417canOiV3L.jpg比嘉中悟司(人材育成課 課長)

SATOSHI HIGANAKA

37歳

見た目…ものっそいラブリー

趣味…主に放電と語る

性格…精鋭ぞろいの人材育成課のまとめ役。猪元課長と非常に仲が悪い。
飄々としたたたずまいだが、そのキュートな瞳の奥には相反する冷静な判断力と知性を備えている。かなりの策略家。

その他…脚が短いのがコンプレックス。でも誰もそんなことは思っていない。


JP040.jpg柳田明佳(人材育成課 新入社員)

MEIKA YANAGIDA

22歳

第一印象…かわいい二ノ宮、ロリ二ノ宮、アイシィガール

趣味…ガーデニング、フラワーアレンジメント

性格…二ノ宮優有によく似ているが、やや稚拙で挑発的。一見冷たそうに見えるが自分が好きでない相手には本当に冷たい。KI-TSU-NEスタッフ歴は2年強、そこらの社員より会社の事情に詳しい。アンチ人材派遣課。

その他…この手の女は清純派を装い、隠して水商売や風俗をやっている。とあやちゃんがデマを流している。
 

脇A「それじゃここから1時半まで休憩時間にしますね。食事して来てください。このフロア内は禁煙ですから、喫煙場所を守ってください。じゃー休憩」

「ちょ、ちょ、柳田さん話あるからちょっと来て」

「はい?」

「(゚Д゚#) …」

LULULULULULU

脇A
「はい第1会議室です…はい?はい。すいません比嘉中課長、営業部長からお電話です」


「え。あー。あー。わかった。ありがとう…」


 

R025061.jpg「おい、お前」

「なに?」

「自分も新入社員じゃねえかよ!!偉っそうな口聞きやがって舐めてんの!?」

「別にもうその話どうでもよくない?」

「よくない!あたしはあのあと二ノ宮さんにガンガンに怒られたんだよ!ヽ( `Д)ノ」

「あたしはあたしであのあと神楽坂さんに怒られて反省したんだから痛み分けじゃないかなあ、蒸し返されるのも気分が悪いもんだよ」

「いや、お前、お前。ことの発端、お前だから」

「本当にそうかな。あたしとしては…そっちが意味不明な依頼を持ってくるのが、悪いと思う…」

「どおいうこと?あたしらの仕事ガンシカト決め込むのか?あたしはあたしらの仕事やってんのに、あんたはあんたらの仕事しないのかよ(゚Д゚#)」

「アルバイトの離職率という観点からものごとを見たときに」

「あ?」

「そっちの持ってくる仕事を断る権利は、あたしたちは持っている」

「んなこと言ってたら仕事になんないだろぉ!?」

ざわざわざわざわ

JP041.jpg「あなたさぁ、やらされる方の気持ちを考えたことがないなあ。あたしはずっと、ずーっとずーっと、そっちが持ってくる絶望的な依頼をバイトの時から何度もこなしてきたんだよ。どんなバカげた内容でも。あたしにそれを断る権利を持っていなかった。あたしの身の回りはみんな、みーんな耐えられずに辞めてった。社則にあるのに。スタッフの退職をまねく依頼を強制してはならないって。あたしには行使力がなかったから。いい。あたしは研修が終わったら、今のこの現状、人材派遣課が持ってきた仕事を問答無用で受けなくちゃいけないこの流れを真っ先になおす。神楽坂さんもそれで了解してるからね。全体の10%を占める頭のおかしい人たちの依頼のために、バイトの退職率3割を占めさせるわけにはいかないよ。長期的に見たら、今のままにしておいたら求人コストの方が上なんだよ、そういうのを受ける依頼料より」

「あんだと?お前、バイトあがりだか何だか知らねえけどあたしらの課の予算知ってて言ってんのかよ、選んでる場合じゃないのに、どんな仕事でもできるだけ受けなきゃいけないのに」

「あなたたちのノルマなんか興味ない。あたしたちには、あたしたちが教育するスタッフを守る義務があるね。考えてみれば。電話段階でそういう仕事を受けなくてすむようになるんだよ。そっちとしてもいい条件じゃないの」

「もぉわかった。もぉいい。噛みあわない。だめだ。噛みあわない。お前とは(*`Д´)」

「そうだね。噛みあわないね。あなたとは。考え方の相違っていうのはこういうことなんだろうね」

ぷいっ

「ねー誰か一緒にごはん行こ…」

「目的もなく二ノ宮さんの金魚のフンしてるから感覚がマヒしてるんじゃないの?少しは自分のしてることを疑った方がいいよ」

「ふざけんなお前二ノ宮さん馬鹿にしてんのか!?」

「馬鹿にはしていない。ああいう凄い人のそばにいると、自分のなかの倫理が崩れてしまうこともある」

「何がわかんだよ!Σ (゚Д゚♯)」

「あたしは神楽坂さんを尊敬してるけど、盲信はしない。だから自分の主張は、曲げない。あなたとは、違う」

「あー!?」


 「まあ↑みたいな主張の子、みたいですね」

「二ノ宮さん、メタ発言はよくないわ」

「芝さんとしてはどっちが正しいですか?」

R025006.jpg

「業績的責務という点ではあやちゃんのほうが会社的に好かれはするんだけど…社則的に、という点と将来的利益、という観点では人材育成課の新卒ちゃんのほうが『正しい』ね。なおかつ。その子はバイト上がりという立場で、しかも今までの常識を覆そうとしてる、神楽坂さんが了解しているというのは、人材育成課はそういうボトムアップの意見が好まれるからよ。自立してる証拠だから」

「そうなんすよね。なかなか、2か月そこらで神楽坂から自立してる新入社員なんて、たぶん初めてですよ」

「あやちゃんは二ノ宮さんを大好きだからね。自己主張という点で、本質的に合わないんだろうね」

「うーん。まあねえ。べったりっすからねえ。どっちがいいとはあたしには言えないけど」

「実際に現実離れしすぎた依頼を断っていいようになったら、どうする?」

「あたしたちは楽になりますけど、そのぶん予算を下げてくれるような便宜をもらわないと反対ですよ」

「そう簡単に実現はしないだろうけど」

「そりゃそうですよ。アレな依頼ぜんぶ断ってたら、そもそもこのシリーズのネタがなくなって書けなくなるじゃないか」

「二ノ宮さん、メタ発言はよくないわ」  


 脇A「ではここでひっかけ問題。受けた依頼について、依頼に対する達成率が半分だったとします。この場合、依頼費用はどのように変遷してくか、誰かわかりますか?」

ざわざわざわざわ

脇A「人材派遣課、コストのことは教わった?」

「あ?あ、あ、はい。結果遂行度が半分になります。依頼料も半分です…か?」

脇A「ぶー。残念。でも70点。誰かわかる?」

「はい。結果遂行度は私たちが決めるものではなく顧客が決めるものです。ですので、安易に半分では社則的に問題になります。顧客の方はその半分の実績の依頼でも80%満足していただくかもしれませんし、20%しか満足しないかもしれません。事前打ち合わせで複数の着地点を私たちが設定し、納得いただいてから依頼内容を遂行します」

脇A「ぴんぽーん。さすが柳田さん。最近はそういうのも有名無実化してるから、改善させていきたいね」

   _, ._
…(;゚ Д゚) 

「…」

脇C「じゃあそれに関連して質問です。これも社則としてありますが実際そのようになされてないことですよね。クライアントが望んでいる状態に当社のスタッフがイメージがわかない場合、一般マスメディアの映像などをモデルとして使用してそれを行ったとします。その場合の著作権の権利問題について、詳しく教えてください」

脇A「あーそれは難しい話ですね。話すとだいぶ長くなるんですけど…藍沢さん、このへん、猪元課長とかはどう対処してます?」

「え…ええと。ちょっとあたしはそういうのを見たことがなくて」

「よければ私が端的に説明しましょうか?著作権の問題は、クライアントがその映画なりドラマなりを自分の知識として認識してる場合にしか発生しません。この辺は説明しだすと確かに長すぎるので置いといてください。後日、クライアントが『こないだのあれ、最近気づいたんですけどなんとかってドラマのワンシーンでしたよね』って言われたら、真摯に受け止め、そのご意見を受け次第すぐに著作権協会に申請をする必要があります。向こうもKI-TSU-NEスタッフ用の書式を持っていますけど、たいてい提出だけで済みます。費用は依頼料の3%です」

脇A「素晴らしい。わかりやすいし合ってます」

お―――――

脇C「さすが柳田さんだねー」

脇E「すごーい」
   _, ._
…(;゚ Д゚) 


「…」
00cc2b23.jpgこれはよくないな。どうしても柳田さんのオンステージだ。確かに社則について一番詳しいからこうなるのは当然なんだけど…
あやちゃんの知識は二ノ宮さんから直接教わっただろうことだから、どうしても社則外の知識に偏ってる。
知識的にはあやちゃんも大したもんなんだが…


このままだと気分を悪くして返しちゃうな。


ちょっと目立たせてあげたいな。


どうしよう。


「ああそうだ。ちょっと私からもいいですか。社則ということなら。みなさんで考えてください。これは、私が人材派遣課から受け取った依頼です。『自分はヴァイオリニストなんだが、仕事に集中しすぎて恋人に別れ話を持ちかけられてしまった。確かにヴァイオリンは大切だが、彼女のことの方がもっと大切である、と。ヴァイオリンを失ってもいいが彼女は失いたくない。しかし今まで仕事一辺倒で生きてきたから、そんなことは信じてもらえない。数名のスタッフを依頼し、たちの悪そうな連中に絡まれた彼女を自分がヴァイオリンを武器とし助ける、という寸劇を行いたい。ヴァイオリンは自分の愛器で構わない。もちろん傷がつかなければそれに越したことはないけど』という。さて、この依頼はどうなったでしょうか」

「あ、その話…!」

「論外です。楽器に対する保障ができませんし、そもそも依頼主は当社スタッフに怪我をさせる可能性もある。比嘉中課長ならお断りしたでしょう?」

「ちょ、ちょっと待ってください、それ…」

「いいですか。スタッフの人権が守られないと話が進まないんです。これが、ヴァイオリンを振り回す方も当社スタッフだと言うならそれなりの訓練をした人を手配することもできますが、今比嘉中課長が仰った話では、依頼主がそのままヴァイオリンを振り回さなくてはいけないんです。どんな危険か承知ですか?」

「ちょ…」

「みなさんこれ、聞いてください。どんな依頼でも受けるのがわが社のモットーっていう考え方はもう終わっていいと思うんです。助長する。間違いなく。今後重病人や死人が出たらどうしますか。精神病にかかってしまったりとか。規範を習ってほしいんです。上司から言われたことだけじゃなくて。特に人材派遣課なんか、社則を一番無視してるわけだから」

「おま、ちょっと待て!」

「が、その仕事は成立し、ちゃんと費用が発生しました」

「…え?」

「私も断ったんですが、人材派遣課の二ノ宮さんが再度同じ企画書を書きなおして持ってきました。ひとつ、ヴァイオリンは依頼主が持っている物の複製を作成する。ふたつ、スタッフは当社専属の特殊業務手当のつくスタッフを使用する。二ノ宮さんは人脈を利用し、知人のアクションスタントマンを数名、当社に臨時スタッフで登録しました。彼らは元ショッカーの類の人たちで、クライアントがどんなに乱雑にヴァイオリンを振り回してもかわし、さも素人目には本当に鈍器が激突したかのようにふるまったらしいですよ。素晴らしいじゃないですか。個人の人脈を活用して、一度突っぱねられた依頼を私に持ってきたんです。そして、予定を上回る依頼料を獲得しました。これは、社則に縛られててはできない発想なのです」

「…」

「感動した人、同じ人材派遣課のあやちゃんに拍手をしたげて。彼女はその二ノ宮さんから直接教育されてる、分身みたいな子だからねー」

パチパチパチパチパチパチ

「…課長、どちらの味方なんです」

「さあねー。困ってる方の味方かな。全員に見せ場を上げるのが、俺は好きなんだよー」

パチパチパチパチパチパチ

da-430037.jpg「…ほら正しかった」

「ん?」

「ほら正しかったー!!ほら正しかった―!!あたしらが正しかったー!!見たことか―!!」

「ちょwww」

ざわざわざわざわざわ

「うわ、これは…引くわー」

「うるせえバカ女、社則に縛られた結果がこれだよ!お前がどんだけ知識自慢厨か知らないけどなー!あたしらが正しいんだ!あたしらが正義なんだ、何でお前ごときに仕事を断る権利があんだよ!あー!?どぉせ課長も二ノ宮さんも比嘉中課長と神楽坂さんと仲悪いんだ、今更あたしがお前と仲悪くなったって何も変わりゃしねーよ!!これからどんな依頼でも受けてやる、どんな頭のおかしい依頼でもお前に持ってってやる、意地でもだ!今から覚悟しやがれ、あたしと出会ったことを今から後悔させてやるからな!!あはははははははは\(o ̄▽ ̄o)/ 」

ざわざわざわざわ

「…はっはっはっは柳田さんこりゃー一本っ取られたね。ちょっと誰か、すぐ人材派遣課に電話して。収拾つかなくなるから」

「…ちょっと、ひどい。ウザいですね」
 

つかつかつかつかつか
ガチャ

「失礼いたします」

「あ、二ノ宮さん!」

「二ノ宮さん!二ノ宮さん!やりました!あたしは人材育成課に勝ちました!!にゃー!」


 ∧_∧ 
(♯・∀・) | |ドバキッ
と    ) | |
  Y /ノ 
   / ) <  >__Λ∩ 
_/し' 
//.`Д´)/

 (_フ彡        /

 


「…」

「…」

ざわざわざわざわざわざわ

「ご無礼をば致しまして申し訳ございません。ぺこり」

ガチャ

バタン

「…」

「ないわー」 

「そしたら課長、すいません11時からの新入社員研修行ってきまーす」

「いてらー。第3会議室だからねー。目立って目立ちまくっておいで。人材派遣課の新入社員はすごいって思わせないと」

「はーい(*^ー゚)」

HY091.jpgつかつかつかつかつか

「…にしてもセミロングの優等生っぽい感じの若い女、だろ?そんな奴、人材育成課どころかこの会社で見たことがないというか…それ以前にこの会社の社員はほとんどモブキャラであるからして…」

「ゆうさーん」

「ん?」

「ゆうさーん、メタ発言はなしにしとこうねー」

「あん?」

「あたしですよー」

「おっ、神楽坂」

「ハーイ、ゆうさん、おはようございます。やっと出れた」
HY061.jpg
「ずいぶんもったいぶられたよな。今、大丈夫?ちょっと質問があるんだけど」

「うちの柳田さんのことですかぁ?」

「あ、それだ。それ。ごめんな神楽坂、昨日だな、知ってると思うけどうあたしんとこの新入社員がさ」

「こっちこそ、すいませんです。一応、あの子には注意しといたからね、もう2度とないようにするよ」

「ちょっと待て、あたしんとこの新入社員とケンカした女だよな?だれ。あたしの知らないとこでどっかからか異動でもしたか?」

「ううん違う違う。柳田さんはねぇ、うちらんとこの、4人入った新入社員のひとり」

「新入社員!?」

「そういうこと。ゆうさんは知らない子ですよ」
脇役A「全員そろった?5分前だから出欠取りますよ。あ、比嘉中さん、おはようございます今日はどうも」

「おはよーございます。本日研修講師やります人材育成課の比嘉中でーす」
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「おはようございまーす」

脇役「名前呼ばれたら返事して。人材派遣課。藍沢さーん」

「はーい(´ー`)ノ」

「え?あやちゃん来てんの?」

「はい。いまーす。もともと業務優先だったんですけど昨日、やっぱ行っていいとのことで」

「あ、そ、そう…」

脇役A「人材育成課。市野さん」

脇役B「はい」

脇役A「上村さん」

脇役C「はい」

脇役A「東浦さん」

脇役D「はいっ」

脇役A「柳田さん」

JP089.jpg「はい」

「…?」

   _, ._
…(;゚ Д゚)






「お前、お前、新入社員に事故報告書処理なんかやらせてんの?」

「問題ないです。あたしだって、できないことをやらせるのは嫌いだからねー。あの子ねえ、もともと経理課希望だったんですよ。事務能力は新卒ってレベルじゃないです。できるからやらせてる、そんだけの話」

「はあ。いかにも人材育成課だな。できるからやらせちまえってとこが。するとあれか、こないだ比嘉中課長がこっち来て言った、お前のマインドを完璧に受けついだスーパー新卒がいるってのは、その子のことか」

「何?課長そんなこと言ってんの?まぁそこまで間違いはないかもですけどねー。総じて今年の新入社員はいい感じなんだけど、飛びぬけてあの子は、すごい。でもね、なかなか曲者ですよ」

「だろうな。いや、あたしんとこの新卒も短気なんだけどさ。なかなかああいう風に怒る子じゃないからさ。どんな感じなのさ」

「そぉだねぇ。あの子はねえ、ゆうさんをすっげえ刺々しくした感じって印象だったな」

「…」

「だってそっくりなんだもん。声のトーン、表情とかさぁ。もちろんけなしてないですよ?そんで、仕事もまあデキるデキる。あ、すげー。ゆうさんみてえって。ま、幼いけどね。全然さあ。ゆうさん26でしょ。でも精神年齢30ぐらいじゃん。あの子は口のきき方がクールぶってるだけで、精神年齢は低いよ」

「お前な」

「あ?怒った?すいませんすいません。誤解なきよう。ゆうさんのことは馬鹿にしてないよ。あたしもあの子のこと、こういう風に言ってますけどね、信頼してる。噂で聞いたんだよ、ゆうさんに舎弟ができたってさぁ。いいなーって思って。そしたら、あたしも運よくその子に会えたから。ガンガン教えたよ。あたしの考え方ってーか仕事のやり方をさ」

「あれか?神楽坂、お前が仕事を教えると、人材派遣課のことを軽視するようになるのか?」

「だーかーらー。怒んないでくださいぃー。違うの違う。あの子ねえ、スタッフあがりなんだよ。社員登用制度で社員なったの。その子はハタチのときからバイトでいるの。当時って山瀬さんが全盛期だったじゃん。変な仕事多かったから。あの子、ずっとそういう仕事、できるからやらされてたんだよ」

「それは何か?ずっと変な仕事やらされてたせいで、変な仕事をあてがううちらのことが気にくわないってことなのか?」

「さぁね」

「そう言ってる時点でそうなんだよ。そのまま経理希望のまま通しとけばよかったろうに」

「配属はあたしたちの管轄じゃあないですよ。その子、人材育成課で、嫌がんなかったらしいよ。なんか思うことがあったのかねぇ。でももちろん、私情を持ち込むなって言ってあるよ。だいたいさぁ、芝さん以外てんでダメな経理とかに、あんないい子もったいなくないですかぁ?」

「ああ、もうわかった。ありがとな。少なくとも、あたしんとこの新卒にも問題はある。あとはこっちで考えるよ。もうそっちとケンカはさせない」

「おっけーおっけー。あたしからもその子にもっかい言っとくよ。ゆうさんとことケンカするなって」

「あー」

「そんじゃーゆうさんまた。今度ホスト連れてってよぉ、新入社員連れてさぁ。考えといてねー。お疲れさまでーす」
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「…行かねえよ」








「まったく」
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「小娘どもが」

LULULULULULULU


「お電話承ります、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の猪元でございます

会「すいません、私は会員番号288番の平良諒子です。依頼の件でお電話を差し上げましたが、ただいまいかがでしょうか」

「はい、私が承ります。どのようなご依頼でしょう?」

会「説明を最初にしないと、私の要望が伝わらないと思うんです。それを聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

「お伺いしましょう。どのような?」

会「はい、ダウンタウンのガキの使いで、岸部四郎が出演していたときの企画なんですが、岸部四郎とガキメンバーが料理対決をする、というのがありました。けど、全然料理は進まなかったんです。何でかと言いますと、岸部四郎が立て続けに誰かが掘った落とし穴に落ち続けてしまうため撮影が進行しない、結果何度も落とし穴に落ちた岸部四郎は激怒し、『すいませんてお前…もう金しかないないなあ!金持ってこーい!ええ顔して帰ったるよ!』と言って〆る、という企画があったのです」
p1144836529.jpg
「ひょっとしたら私も見たことがあるかもしれません。なるほど、それで…」

会「私はコントを求めているわけではありません。岸部四郎が金に困っていたことに対し揶揄するつもりもありません。ただ、あのような『人間が連続的に落とし穴に落ち続けてしまう』というのが、お恥ずかしながら、私は見ていて楽しくて仕方がなかったのです」

「ふむ。平良様は人間が連続的に落とし穴に落ち続けてしまうことに対し、楽しくて仕方がないと」
20100504021036.jpg
会「はい。そして、ここからが本題になるのですが、私には会社で虫の好かない他部署の女がいるんです。先ほども会話していて何度もイライラしてしまったのです。タメ口と敬語の境界を意識して混ぜてるのが本当にムカつくんです。私は、あいつが落とし穴に落ち続けるのを見たいのです。そのリアクションを見たくて仕方がないのです。もちろん怪我をしてほしいとまではいきません。どうか、私の苛立ちを緩和するべく、落とし穴を掘っていただきたいのです。できれば私の会社内に、私の眼の届く範囲にて。費用は見積もりを出してほしいんですが、社割を使います」

「二ノ宮さん、どこにいるか知らないけど遊んでないでさっさと戻る。忙しいんだから」

後編へつづく

「あやちゃん。こないだあやちゃんが受けた依頼番号1000023548の、スタッフの方で失敗したらしくてクライアントが『金払わない』って言ってるんだよ」

「えっ!…うわー、あの依頼かぁ…なんかおかしいとは思ってたんですよねぇ(´A`)」

「いいよいいよ。あやちゃんが悪いわけじゃないと思うから。派遣依頼費の事故報告書が1枚あるから、人材育成課に届けてきて。書面はあたしが作ったから」

jiko01.gif「はあ。事故報告書って何ですか?(・x・)」

「『金払わない』系の場合についてはそれ用の報告書を提出しないといけないの。うちのハンコと人材育成課のハンコと営業部長のハンコの順番に必要だから、人材育成課に渡しに行ってほしいんだ」

「あ、はい。わかりました。行ってきます。渡す相手はどちらに」

「神楽坂に渡せばいいよ。いなかったら、杉田ってのか南部ってのがいるけど、まあ偉そうなやつに『事故報告書お願いします』って言えばいいよ。で、どういう感じで電話を受けたのかとか聞かれるだろうからちゃんと答えてね。説明できるよね?」

「はい。覚えてますから説明はできます。神楽坂さんですね。わかりました。行ってきます」

「よろしくー」


「あのーすいません、神楽坂さんいらっしゃいますか?人材派遣課の藍沢です」

脇役「神楽坂さんは出てますねー。事故報告書ならあそこのデスクの方に渡してください」

「はーい(*゚ー゚)」

「…」

「あのーすいません、人材派遣課の藍沢と言いますけど、事故報告書をお願いしていいですか?」

JP178.jpg「…」

「あのー(´・∀・`)」

「…」

「…すいません、事故報告書なんですけど、お願いしても大丈夫ですか?」

「そこ。そこ。そこにおいといてください。こっちで処理しときます」

「…ええと。この依頼について、説明させていただいてもよろしいですか?」

「いいです。受理しますから。結構ですのでおいといてくださいます」

「…(`・ω・´)でも、うちの課長代行から、説明しなくちゃいけないって言われてますので」

「いいんですって、そっちの説明なんか。そこにおいといてもらえればハンコは押します。こちらから営業部長に渡します。理由はどうだっていいんです。別に私は受理しませんなんて一言も言っていないでしょ?」

「…あの。そっちの説明なんか、っていうのは。ちょっと。それだと非がうちにあるみたいじゃないですか」

「あれ?違うんですか?じゃあ何で事故報告書が発生するのか。私は何も知りませんが」

MMP7601285.jpg「何も知らないなら説明が必要じゃないんですか…(#゚Д゚)」

「だって、それによって私が備考欄に何か記入するわけではないですもの。人材派遣課のトラブルを弁護するつもりはこちらにはありませんね」

「いやだから。ちょっと待ってください。なんでこっちのトラブルで報告書に至ったことになってるんですか」

「人材派遣課からこの手の報告書が来るのは、そちらの課長代行が多大な量の依頼を受けすぎて必然的に生じているためと把握しています」
   
「…Σ(-_-+)何言ってんですか?この依頼を受けたのあたしなんですけど?」

「新入社員の方ですか?」

「そうですよ。新入社員です。でも関係なくないですか。あたしはこんな報告書の存在知ったのさっきが初めてです。あたしはうちの課長代行から行けって言われてこれを持ってきた。けどなんか誤解してる。だったら、あなたはあたしのこの依頼についての説明を聞いてしかるべきじゃないんですか」

「でしたら、そこまで言うなら聞きましょう。どういう経緯でこの会員様はお金を払えないって仰ってるんですか。依頼内容を聞いたときから細かく説明してください。当事者ではない私でもわかるように」

   _, ._
…(;゚ Д゚)


「そもそも何なんですか、この依頼内容の箇条書きは。・先割れスプーンを日本の食器のシェアにするムーヴメントを起こす ・先割れスプーンコミュニティを作製し、会員を募る。最初のうちはスタッフで基礎会員数を確保する ・当面の見通しは、半年以内に先割れスプーンのアソシエイツ設立とする というのは。人並みの文章読解力はあると思うのですが私にはさっぱりわかりません」

「だ か ら。説明が必要なんですってば。なのにさっきから人材派遣課のせいにしたまんま、言い訳聞くの面倒臭いみたいな態度をしてるから」

「書類の譲渡に言い訳が必要なんですか。私には、この報告書だけでなんとなく、意味不明な依頼を何の考えもなく受けて、勝手に面倒事になったようにしか見えません。そちらは依頼を受けるのが仕事ですが、理解に苦しむ依頼に対してちゃんと教育したスタッフを派遣しなくてはいけない私たちのことを考えたことはないでしょう?こちらだって、その気になればそちらからの仲介を突っぱねることだってできるんです。だから私は、必要を感じない説明なんて聞きたくないんですよ。何も分からない新入社員が受けた依頼のなんて」

「(♯▼皿▼)なんで人材派遣課を見下した言い方してるんですか!意味わかんない、エビフライぶつけられたいんですか!?」

ざわざわざわざわざわ

「…うわ、引くわー、人材派遣課特有のそういう暴力的な態度、本当に肌に合わない」

「ちょ、あんたいい加減にしろよ!?」

「はっはっはっはっはっはっはっは誰かと思えば人材派遣課のあやちゃんじゃないかー、今日もかわいいねー、おじさんと今度デートしようず」
4904810745792.jpg
「なんですか、しようずって!今、それどこじゃないんです!」

「課長。あの、こちらの方…」

「ちょっと比嘉中課長!あなたの部下ですよね!?あたしは二ノ宮さんからこの書類渡して来いって言われて…」

「あやちゃん。落ち着こうねー。ちょっと柳田さん、大事な話があるから席外してくれないかなー」

「課長、私もこの方にケンカをふっかけられたのですが…」

「あ!?お前ふざけんなよ!?」

「はっはっはっはっはっは。いぇーい今日も身体に電気がみなぎるなあ、ちょっとごめんねあやちゃん、あっち行こうか、でないとおじさんがセクハラしちゃうよ?」

「お前、お前な、比嘉中課長!止めないでください!離してください、はなして、ぅわ!本当にケツ触りやがったこのぬいぐるみ!ヾ(`Д´*)おまえら!いい加減にし…」

「わかったわかった!すまん!申し訳ない、こちらが徹頭徹尾悪かった、俺が謝る、あやちゃん気を静めて!本当にすまなかった!あーもう、どうしてこうなってんだよ、柳田さん、ちょっとキミからも謝って!」

JP190.jpg「ぷい」

「…」

くそが!!この女、絶対許さねえ!!!(‡▼盆▼)






「信じられないです!!ありえない!!人材育成課まじありえない!!」

「…ま、いずれなんかあるとは思ってたけど」

「…」

「あのねえあやちゃん、ちょっと落ち着きな?一応事故報告書は比嘉中が受け取ったんでしょ?説明もできたんでしょ?そんで比嘉中が、あやちゃんじゃなくてクライアントが悪いってなったんでしょ?じゃあ、それでいいじゃん…」

「解決したのは事故報告書のことだけです!あんなのあたしと二ノ宮さんと人材派遣課全体に対する侮辱ですよ!?なんでわかってくんないんですか!!」

「あやちゃん。人材育成課全体が悪いわけじゃない。そういう変なのがいたってことだ。そいつが悪いんだよ。あいつら全体を嫌うのはおかしい。あいつらとケンカしたら仕事になんないよ。少しは落ち着いて。もう帰っていいから。話はいくらでも聞くから。揉めるな。ただでさえ課長と比嘉中課長は一触即発なんだから」

「だいたい誰なの?人材育成課でそんな女の子いたっけ?」

「いや、聞いてる限りあたしの中で該当者が見つからないんですよね。でも別部署ってわけでもなさそうだし」

「髪の長い女です!年はあたしに近くて、セミロングで」

「人材育成課でセミロング?」

「人材育成課にあたしの知る、髪の長い女はいないけどな」

「なんか役所の職員みたいな死んだ眼してて、優等生ぶってて経験少なそうに見えて、実はどんな男にも脚開きそうな女です!あいつは絶対に!!」

「ちょwww」

「あやちゃん!!!!!」

「Σ(゜д゜;)」

「口が悪い」

「…はい、すいませんでした」

「帰っていいよ、今日は」

「はい…(´_`。)」


da-434061.jpg「課長、ちょっとあの子、明日からしばらくマークしてください。あたしもしますけど」

「いやでもさあ、あの子が人材育成課に行くことなんかほとんどないんだから。マークとか。そりゃ今日は、虫の居所とかあるかもしれないんだけど、穏やかな子だからさあ」

「そぉですかね課長。あたしはいつも一緒にいるから感じてますけどね。あの子は本質、おとなしくも、穏やかでも、おっとりしててもないですよ」

「ん?」

「なんで人事があの子だけをうちらに配属したか、少し考えれば答えは出ると思います。ましてや。あやちゃんは自分は、あたしの直属の部下って言うプライドを持ってる。そりゃー、強固な」

「う~ん…」

「あたしは、その揉めた相手というのを調べてきます。ちょっとお時間ください。まったく、これじゃ周りからは旧ソ連とアメリカみたいに見えるじゃないか」

「しかし比嘉中のヤロー、どさくさにまぎれてあやちゃんにセクハラするとは本当に下衆野郎だな」

「いいんだよそれはwww」

中編へつづく
前編はこちらから

「二ノ宮さん?二ノ宮さん?」

「おーい二ノ宮」

「二ノ宮さーん」

「ちょ、ごめん、今あたしに話しかけないでくれるか。今、この依頼に真剣なんだ」

会「もしもーし」

「なるほど、平内様は登山はご興味はないということですね。そして、現代のとある山がマリオのステージになったら面白いだろうと。そしてそれが新聞に載ったら指差して笑うに違いないということですね」

会「そういうことです。できますか?」

「不可能ではありません。しかしながら、問題はこれにかかるコストです。これについて平内様がご希望する内容を全て反映させてしまっては、数百万ではきかないのは間違いありません。そのような高額なご依頼は、この電話番号からではお受けすることは難しいですし、平内様のご予算提示額によっては殆どお受けできかねるかと思うのです。平内様、このご依頼についておいくらご用意してくださるご予定なのでしょうか」

会「5万ぐらいかなあ」

断れ!断るんだ!



「なるほど。5万円ということですね。それでは、その範囲内でどこまでできるか考察させていただきます」

会「あ、お願いしまーす」

「ごめんなさい、二ノ宮さんすっごい集中してて」

「ちょっと待とうか」

「二ノ宮さんがそんな真剣になる依頼なの?」

「さぞ、高額なんだろうな」

「では平内様このような感じではいかがでしょうか。現実社会にそこまで介入してご予算内に収めるには困難を生じます。このようなのはいかがでしょう。あらかじめ平内様がご期待なさっている内容の新聞を、日付を入れずに用意しておきます。そして、当方でDVDを一本作成いたします。その内容は山道での歩行視点です。チャプターを変更すれば歩行する道筋が変わるようにし、ときには巨大なキノコが出てきたり、宙にブロックやコインが浮遊しています。地面には土管も用意し、それに入り込んで地下に行くチャプターも作成します。それを昔流行ったヴァーチャルヘルメットで視聴するのです」img639_vr2_006l.jpg

会「えーでもそれって現実じゃないじゃないですか」

「その通りです。しかし考えてみてください。これは、特許申請を視野に入れているのです」

会「特許申請?」

「その通りです。このヴァーチャルマリオのDVDを作成し、コアな任天堂原理主義者たちにコマーシャルするのです。日本、いや世界のマリオ愛好家たちはこぞってこれを望むでしょう。まず5万と言う予算内ではDVDを作成するのが関の山。しかし、この特許をどこかに剰余するか販売し、商品化してしまうのです。すると、平内様の手元にはヴィヴァレッジやロイヤリティーが渡るのです。まさにこのビジネスはミクロ経済においてアウトソーシングでベンチャーでデリヴァティヴでライセンス的コアコンピタンスなあれになることは間違いありません。私はその間、ファンキーでキュートでポップなストラテジストとしてお電話でお手伝いいたします。そして手元に適当額が貯まったならば、最後平内様はそれを現実のものとして、当初の目的通り八ヶ岳に矢印看板を置くところから当社に依頼なさるというのはいかがでしょうか。つまり、これは平内様の壮大なご計画についての第一歩のご提供ということです」

会「…」

「いかがでしょうか」

会「すばらしいですね。それでいきましょう」

「本当ですか!ありがとうございます!それでは細かい予算運用についてご相談させていただきます」
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 .|  ./川\  |
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     。┃祝┃。
  ゙ # ゚┃!┃; 。
   ; 。 ・┃大┃・ #
  。 ;゙ #┃勝┃# 。
  ゙・# : ┃利┃。 ; 。
 .;:# ゙。゚┃!┃゚ 。 #
 ; 。;; ゙.:。┗┯┛。 # : #

MMP85025.jpg終わった。あたしは勝った。これがスキルアップというんだ。







「よーお疲れ二ノ宮」

JP155.jpg「山瀬!?何してんのあんた!?」

「いやー遊びに来たって言うか。30分前からずっといたんだけど」

「先ほどいらしたんですよ。二ノ宮さん、依頼の電話で忙しそうだったから。気付かなかったんですか?」

「萩の月好きだろ。仙台銘菓」

「…」

「ところで随分長丁場だったね。今の依頼、いくら?」

「え、ご、5万ですけど…」

「5万ん!?あんだけ長電話してたったの5万!?何やってんの、仕事選びなよ!もっと美味しい依頼いくらでもかかってくるだろうに!」

「お具合悪いんですか?(´・ω・`)」

「っていうか聞いてる限り俺が得意そうなのだったから代わってやってもよかったのに。そしたら3分で終わらしてやったのに。二ノ宮ー、いいんだって苦手な仕事は断って。言ったじゃん」

「お、  お  ま  え  ら」

LULULULULULU

「は、はいお電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の二ノ宮優有が承ります」

会「もしもし、私は会員番号1223番の畑山です。山瀬さんはいますか?あのー実は私の働いてる近くのビル、隣のビルがもたれかかって来てるような気がして心配なんですよ。いや、別にもたれかかってはいないんですけど、なんかもたれかかってる気がするんですよ。ひょっとして胃もたれしてるのかもしれないから、どうにかして隣のビルをうちのビルから引き離したいんですが。予算は7万以内でお願いします」

「は、はい。かしこまりました。私がお伺いいたします。山瀬は退職いたしましたので。それでは、ご依頼内容を細かくお伺いしたいと思います」

「あれ、二ノ宮さんが泣いてる(・ω・)」

「たぶんあれは、最近、彼氏とうまくいってないな」

「仕事熱心だねえ、感情を押し殺して業務優先なんて」

03704806.jpg「課長、萩の月食います?」

「牛タンがよかったなあ」


「(´A`)」
da218029.jpg
「どーしたあやちゃん、人相が悪いよ?」

「すごく厄介な依頼の電話応対を20分ぐらいしてて、しかも成立しなくて心が折れています(・_・。)」

「なんて?」

「職場のプリンタが1日1回必ず紙詰まりを起こすのは、きっと中に棲んでるカラーインクの妖精さんが機嫌を害してるからだと。大自然と調和している巫女を派遣して邪精と化したカラーインクちゃんたちを人民解放してほしいって」

「わからねえw買い変えろww」

「あたしの言い方もよくなかったんですけど、真っ先に『買い変えれば~』って言ったら話がこじれて何も進歩せずに向こうから断られました」

「あやちゃんには難しかったかな。時間の無駄だってわかったら、いいんだよ断って」

「でも、成立させてかないと課の業績が(´・ω・`)」

「あたしに代わっていいよ、そういうときは…あたしたちは精神を病んだらつぶれるからね。じわじわ守備範囲を広げてけばいい。あたしができそうなことなら。あたしもできないことは断るか、得意そうな奴に代わる」

「得意そうな人って?」

「…」

(去年の12月:山瀬退職時)
JP194.jpg「どーした二ノ宮?」

「いや。特に重要な用件はないんだけど。ごあいさつか。山瀬。6年近くお疲れさん。今までありがとう。仙台でも頑張れよ」

「何、愁傷ぶってんだ似合わない。なーに大丈夫。けっこう頻繁に遊びに来れると思うよ。いずれはKI-TSU-NEスタッフと提携するようにしてきたいね」

「まあ、頑張ってよ。ぐらいしか、言えないけどさ」

「こないだ新入社員だったのになあ、勝気になりやがって。親はなくても子は育つね」

「いや、あんたを親と思ったことは一回もないけど」

「おまww」

「なぁー山瀬。ちょっと質問していい」

「どんな?」

HE071.jpg「今後、この課はあたしと課長と名無しのモブキャラだけになっちゃうだろ」

「モブ言うなwwメタ発言はやめろwww」

「今まで山瀬が扱ってた、精神的にアレな人たちは、あたしが相手していかなくちゃいけないんだろうね」

「当たり前だよ。課長はすぐキレちゃうから、お前がやるのが一番いい」

「…」

「けど、それはお前のキャパが追いつく程度でいいと思う。きっと二ノ宮は、本質的にそういう連中が駄目なはずだよ」

「ある程度まではできるよ。山瀬じゃなきゃできない範囲、そっから先が苦手なんだよ…」

QX030009.jpg「だったら断れ。俺たちは仕事で精神を病んだら終わりだ。断れ。じわじわ守備範囲を広げてけばいい。お前がそれをできないから課の必須予算が獲れないってのは俺は想像できない。ひょっとしたら、俺みたいなのが得意な新入社員が入ってくるかもしれない。そういうのを教育してけばいいんじゃん?」

「あんたみたいな新入社員ならいらないwまあいいや。ありがとう。山瀬。ありがとう。ばいばい」

「じゃーなー」



「しかし、課の必須予算は去年よりはるかに多くて油断すると追いつけない。あんな新入社員は、入ってはこなかった」

「二ノ宮さん、どこに向かって話してますか?怒ってますか?あたしのせいですか?」

「あー。怒ってないよ。ちょっと昔話を思い出した。ごめんごめん。仕事に戻ろう。自分にできそうもない依頼が来たら、あたしに代わって」

「はーい」

LULULULULULU

「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、二ノ宮優有でございます」

会「あ、こんにちは。会員番号1049番の平内なんですけど、山瀬さんお願いします」

来たか。

「申し訳ございません平内様、山瀬は昨年末に会社を辞めております」

会「えーそうなんですか?参ったなー、山瀬さんでないと困るなー」

「平内様、一応、ご依頼内容をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

会「あー一応ですか?あのねーよく山道に道案内版あるでしょう、『あと500mで山頂』とか左矢印とか」

「山道にある方向や標高の案内板のことを仰るのですね」

会「そうそう。で、こないだ僕、ヨッシーアイランドやってて感じたんですよ。あの矢印看板を例えば八ヶ岳の山道に今の5倍ぐらい設置するでしょ?で、分かれ道でふたつ用意しといて『ちかみち むずかしいコース』と『まわりみち かんたんコース』とか配置しとくんですよ。で、実際むずかしいコースは険しい山道なんだけど、コインがいっぱい落ちてたりするんですよ。あらかじめ配置しといてね。逆にまわりみちコースは敵も少ない、山頂まで歩く距離は大変だけど平坦で、あんまりアイテムは落っこちてないような風にしたいんですよね」

「…」

どうする。かなりめんどくせえ。断れ。断るべきだ。相手にするだけ時間の無駄だ。断ってしまえ。「そのようなマリオの設定を現実世界に持ってきても、一部の任天堂愛好家しか得しない、やもすると自然破壊から遭難幇助に導くような依頼はお受けできません。っていうか、今日びヨッシーアイランドやってんじゃねえwwwせめてペーパーマリオやれ」って断れ。それがあたしの常識だ。


けど。

会「もしもし?」

「大変失礼いたしました、平内様は先日ヨッシーアイランドをプレイしていて、例えば八ヶ岳山道に矢印看板などを配置し、マリオのような分岐を作成したり、それに応じてアイテムの配置をしたり敵の配置を変更したりしたい、そのようなご依頼ですね。もう少し伺います」

gci003382.jpg会「え?聞いてくれるんですか?」

「もちろんです。どのようなご依頼に対してもお受けするのが、わが社のモットーです」

会「あー本当ですかよかったーこういうの山瀬さんしか聞いてくんないからなー」

「いいえ、問題ございません、ところでまずお伺いしたいのは、矢印看板自体はどれぐらいの期間配置するのでしょうか」

会「え?そりゃ半永久的にですよ」

「…半永久的にと。ところで、コインと敵キャラというものは、どのようなものを指しておられるのですか」

会「コインはコインですよ。敵キャラは敵キャラですよ。言葉通り。あと、もちろん空中にブロックは吊るせますよね?」

 . . .... ..: : :: :: ::: ::::::
      Λ_Λ . . . .: : : ::
     /:彡ミ゛ヽ;)ー、 .  
    / :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:
   / :::/;;:   ヽ ヽ ::l .
 ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ
どうする。今からでも遅くない
。断れ。異常者にかまってるだけ時間の無駄だ。あたしには無理なんだ。あたしは山瀬とは違うんだ。なんだかんだ言ってこの手の顧客は100%成功させない限り売上にならない。あたしに100%成功させることができるというのか。無理だ。


でも。

「…はい。少々お待ちいただけますか?空中にブロックを吊るす方法について調査させていただきますので」

会「問題はスーパーキノコなんですよ。あんな大きいものが一瞬で人間の胃袋に収まるとは思えないでしょ?だったら、常時それを楽屋裏にしまいこむ黒子が必要じゃないですか」

「ごもっともです。しかしながら、山に楽屋を作成するのは、そこに山小屋が発生してしまいはしませんか。それは背景的に殺風景になりはしませんか。そこで世界観が崩れてしまっては、私は本末転倒だと思うのです」

会「なるほどね。確かにそうですね」

「そして、少し聞かせていただきたいのです。このご依頼は、着地点はどこなのでしょうか。これはまず第一に、平内様個人のためのご依頼なのですか」

会「いいえ、僕は山登りは興味はないので。ただ、現代のどこどこって山がマリオのステージになったら面白いじゃないですか。新聞に載ったら指差して笑うでしょ。そういうことですよ」

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(長いので後編へ続く)
前編はこちらから
ca6f1a33.jpg「よーしあやちゃん、ちょっと休憩入れようか」

「ふぃー疲れた( ;´Д`)」

「見積もりも難しいもんでしょ?」

「むちゃくちゃ難しいです。これを瞬間的にやってる二ノ宮さんと課長を尊敬します」

「芝浦さんが親切に教えてくれたからまだ楽なんだよ。あたしは教えるの下手だから本当によかった」

「運が良かったですね。ところで二ノ宮さん、さっきのことなんですけど。あたしが見積もりしたのと、二ノ宮さんの出した現実乖離指数が結構違ったのは何でなんですか?(´・ω・`)」

「どの依頼のこと?」

「えーと、例えばあの、教習所と大学のテストのかた」

「ちょっと待ってね。えーと、大学の急な試験日程と教習所の学科試験が同じ日程にかぶって、スケジュール的にずらすのが困難だから試験のほうに身代わりをおいてほしい、試験に出ることは全てノートにまとめてあり、持ち込み可だから出席すれば殆ど大丈夫、依頼主は教習所の学科をやるってやつか」

「そうです。あたしはこれ、指数は×1.0だと思ったんですけど、二ノ宮さん×1.8をつけましたよね。そんなに差が出るのは何でですか?費用が2倍近い差が出ますよね?(;´・ω・`)」

「あのねえあやちゃん。あやちゃんには現実離れしてないように見えたでしょ。あたしには、結構まともじゃない依頼に感じたんだよ」

「そうですか?」

「いいかいあやちゃん。この依頼の問題は、あたしたちに『この会員が、ちゃんと教習所に行ったかどうかは調べを入れないとわからない』。そうは思わないかい?」

「え?どういう…」

「大学のテストについて、ノート持ち込みで身代わりを立てる。ここまではいい。けれど、この依頼主がもしも教習所に行かなかったとしたらどうなる?邪推するよ。この依頼主の彼氏をAくんとしよう。そして、共通の友人がBさんとして。もしもこの依頼主がふたまたをかけていて、別のCくんという男とデートをしていたら?Bさんと依頼主が同じ授業を受けていて、うちのスタッフは依頼主の私服を着て、伊達めがねとマスクして誰ともしゃべらずにテストを終わらせた。Bさんは、Aくんに『あの子、テスト出てたよ。風邪がひどそうですぐ帰っちゃったけど』と言ったとしたら?」

「あ!アリバイ工作!?」

「その通り。教習所に行くと見せかけてこの子は浮気しに行く可能性も、なくはない。まあそこまで疑わなくてもいいけど、『そのとき依頼人は何をしているのか?』あたしたちがわからない依頼と言うものは、基本的に別の目的がある。こうかもしれない。『試験の後、担当講師に書斎の整頓をさせられた。結構重労働だったけど、残業代出ますよね?』とスタッフが言いだしたら?」

「まさか、会員は書斎の整頓をやらされるのをわかってて、けど知らないふりして試験のあと、うちのスタッフにそれを巻きこませた、とか?」

「そう。その場合目的はテストじゃなくて書斎の整頓がしんどいからだよね。まあそれなら可愛いもんだ。この依頼主は例えば以前、書斎の整頓を手伝ってて、担当講師にセクハラを受けたとしよう。それはつまり」

「み、身代わり!まさに!」

「だね。被害をうちのスタッフに移すために依頼したことにもなる。セクハラ被害の身代わりなんて、社則に触れるから電話段階で断るでしょ。でも、頭のいいやつがいて、教習所がどうとか計画を立ててそういう依頼をしてるかもって。疑えってことだよ」

「えええええこっわああああああああΣ(||゚Д゚)」

「社則に触れて依頼を受けれない内容のを、現場に行ったスタッフが急遽やらされて、仕方なくやっちゃった、としたら、面倒だよ。例えば投薬実験体とか、ノーヘル運転とか、未成年へのタスポの貸し借りとかさ。そいつは確信犯的に、あたしたちが断ってしかるべきと思っている系統の仕事を、そういうのを断っていいのかどうか分からないスタッフにやらせることになるからね」

「な、なるほど…(;・A・)」

「目的がぶれている可能性がある依頼は、現実離れしてるか倫理的におかしい。だからあたしは1.8をつけたんだよ。あとは、普通にイカれてると思った依頼は2.8以上つけていいからね」

「奥が深い…」

「何、じきに慣れるよ…」

??「ふっふっふ。さすが二ノ宮さんだねえ」

「ん?」

「あ…」

??「そこまで考える業務遂行力。最近の人材派遣課が絶好調な理由もうなずけるねえ」

「ひ、比嘉中課長!お疲れ様です!わざわざ来てくださったんですか?」

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「…え?(゜Д゜;)」

「さっき来てくれてたみたいだからねえ。たまには顔出そうかなって思って」

「忙しいのにすいません。でも、芝浦さんがいらっしゃったから。もう用件は済んだんですよ。申し訳ないです」

「へえ、芝さんも来てたんだ。いやいや。ともかく顔出しに来ただけ。猪元も外出してるみたいだしねえ」

「え?(゜Д゜;)」

「課長、もう少ししたら戻りますよ。あまり長居されないほうがよろしいかと」

「うんうん。そんな遊んでいくつもりはないよ。こっちも忙しいからねえ、新入社員4人じゃあさすがに手いっぱいだよ」

「あ!そうだそうだ!あやちゃん、初対面だよね?こちらが比嘉中課長。人材育成課の課長だよ、うちの会社の出世頭」

「…(゜Д゜;)」

「はら、あやちゃん!ごあいさつ!すいません比嘉中課長、この子緊張してるみたいで。うちの新卒の、藍沢絢です」

「こちらが噂の!二ノ宮さんの妹分だってねえ。よろしく頼むよ。比嘉中です」
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「…(゜Д゜;)は、はい。あの。はじめまして。新入社員の、藍沢です」

「はははは、ういういしいねえ。ういうい。そう言えば二ノ宮さん。話は変わって、猪元が来月、海外研修に行くって話は聞いたかい?」

「はい!?なんですかそれ!初耳なんですけど!」

「10日間アメリカ研修だよ。俺も去年行ったけど、順番順番みたいだねえ」

「ありゃー。課長が10日抜けるのか…ちょっと大変だなこりゃ」

「大丈夫大丈夫。みんなわかってるから。重役会議で、その10日間、二ノ宮さんに代わりをやってもらおうってさ」

「いやだから、それが大変なんですよ。課長の仕事、多いじゃないですか。今期の業績予算、ご存知ですよね?うち、バカ高いの。人の勝負なんですよ。あたしが課長職やってたらオペレーターやってる時間なんてないですよ。来月の売上が取れないですよ」

「そこも考えてる。10日間、メインオペレーターとしてうちの神楽坂を貸してあげる」

「わ!」

「これで業績面は大丈夫だろう?」

「一概に大丈夫…かどうかは安心できないですけど…いや、神楽坂がいればたぶん問題はない…んですけど…ちょっと、そっちが大変じゃないですか?」

「去年の二の舞にならないかってことだろ?あのときは済まなかった。俺が海外研修中で、教育不十分な新入社員が3人。神楽坂がいっぱいいっぱいになって人材を適切に派遣できなくてそっちに大迷惑をかけた。ほんとに済まなかった」

「いえ、そのことはあたしは別にいいんですけど、やっぱそっちが心配って言うか」

「安心しなさい。今回は同じ轍は踏まないよ。神楽坂が新入社員に完璧に教育を済ませたし、そのうちの一人が神楽坂のマインドを受け継いだスーパー新入社員トレーナーになっている。去年とは比べ物にならない強固な体制だ。絶対に君らに迷惑はかけない。もし俺らのせいでそっちにトラブルがいったら、俺は猪元の前で土下座して耳としっぽを切るよ」

「…(゜Д゜;)」

「…さすがですね。わかりました。神楽坂に言っといてください、歓迎するから、気合い入れて来いって」

「はははははは。言っておく。じゃあおいとまするよ。猪元に俺が来てたって内緒だよ?」

「お疲れ様です、わざわざありがとうございました」
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「…(゜Д゜;)あの、二ノ宮さん。あの方は」

「すっげえオーラだろ?あれが人材育成課の課長だよ。知り合って長いけど、さすがのあたしもあの人には敬語しか使えないわ」

「いやあの。だって。あれはただの、ぬいぐる…」

「何ちょっとお前、比嘉中課長ディスってるわけ?おいおいあの人を馬鹿にしたらあたしら親衛隊(ミッドナイトエンジェル)が黙っちゃいねーぞ!ヘイお前ら、こんなやつやっちまいな!比嘉中課長マジパネェっす!」

「すいません!二ノ宮さん!すいません!すいませんから目を覚ましてください!」

「…おお、あやちゃん。あれ?何の話してたっけ?」

「…えーと。あのその。あー、課長が海外研修行くなんてびっくりですね。ふーんあの人が比嘉中課長かー(・ω・;)」

「なー。まあエリートコースってことだなあ。あたしも2,3年後には行きたいなあ」

LULULULULULULU

「出ます」

「うん」

「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の藍沢絢がお受けいたします」

「…10日か。また神楽坂といっしょかあ…」
MP107009.jpg
「申し訳ございません、少々お待ちいただけますか?…あのー二ノ宮さん、こちらの会員様から『10:30から11:00まで朝マックも食えないランチ価格でも食えないマクドナルドを糾弾するため、スタッフは何人使ってもいいから署名運動を行い日本マクドナルドに提出し、反応がない場合は見せしめとして各地で焼き打ち、つい殺っちゃうんだドナルド狩りを行いたい』とのことなんですが、この方、会員を装ったうちの社長ですよね?(´・ω・`)」

「現実乖離指数を×18にして見積もり出してやれ」
MP107048.jpg「えーとあやちゃん、今日はちょっと難しいんだけど、費用見積もりについて教えたいと思う」

「費用見積もり…ですか」

「現状、顧客のオーダーを聞いて、それをまとめて、あたしが見積もりして、また連絡しなおすというのは決して悪くないんだけど、時間がかかるし見積もりは早い方が信頼性が高まる。あやちゃんは決して頭の悪い子ではないので教えようと思う」

「はい、わかりました」

「計算式は基本的にいつも一緒。派遣時間数×スタッフ期待値×現実乖離指数+手数料

「メモメモ」

「派遣時間数はわかるっしょ。スタッフ期待値と言うのはそのスタッフがその依頼を忠実にできる可能性。詳しくは人材育成課の範囲だね」

「うんうん」

「現実乖離指数とは、これは経験を積まなきゃわかんない。その依頼が、どれだけ現実離れしてるかを数字で示したもの。これを判断するのは他でもない。あたしであり、あやちゃんなんだな」

「うーん。自分の感覚なんですか?」

「完璧に感覚だな。だから、この数値は人によって大きく変動する。それについて受ける後日クレームも多い。適正な数値を提示するには経験が必要になる」

「難しそうですねえ」

「手数料と言うのはあたしらの拘束料。簡単に言うと主に電話の長さとか」

「うーん」

「それらを計算したものが依頼料になるんだけど…ここからの取り分は課長判断なので覚える必要はない。それじゃ、スタッフ期待値について教えるから、今から人材育成課に行こう」

「え!人材育成課ってあたしたちの敵地じゃないですか!(`・ω・´)」

「変な知識を身につけちゃいけない。敵とか味方とか課長が言ってるだけで、あいつらがいないとあたしらの仕事は成り立たないんだよ」


「おはようございます、人材派遣課の二ノ宮ですが比嘉中課長は…外出?」

「(゚д゚ ) キョロキョロ( ゚д゚)」

「…神楽坂は、休みか」

「タイミング悪いですね」

「タイミングと言うか、単に重要な新キャラを登場させるのをしぶってるだけだと思うが」

「二ノ宮さん、あまりメタな発言は少し…」

「あ、芝浦さん発見。そこまで重要でない新キャラ」
HE118.jpg
「あら、おはよう二ノ宮さん。事実だけど本人の前でその言い方はよくないわ」

「おはようさんござる。あやちゃんごあいさつ。経理課の芝浦耀子主任だ」

「はじめまして、人材派遣課新入社員の藍沢絢です」

「はじめまして、芝浦です。今日はどうしたの?ついに人材育成課に討ち入り?鉄砲玉なの?山瀬くんがいない今、襲撃はあなた方に不利だわ」

「ええっ!Σ(゚Д゚) あたしって鉄砲玉だったんですか!?」

「ちがうwwwおまえらwww」

「冗談はさておき。スタッフ期待値について勉強させたいなら、場所はここじゃなくて経理にいらっしゃい。アウェーな場所で教育ははかどらないでしょう」

「まだ何も言ってねえwwなんでだよwなんで用件がわかるんだよw行数を減らしたいだけだろwww」

「二ノ宮さん、控えてください。それこそ話が進みませんから」


JQ151.jpg「私が昔オペレーターをやってた頃、もう5年以上前だけど当時は会員は200人ぐらいしかいなかった。二ノ宮さん、あなた、スタッフ期待値というものがどういう風に算出されるか説明することはできて?」

「一応。スタッフの実績係数×1.2×結果遂行度×時給+残業費+雑費

「メモメモ」

「それだけだと80点ね。まあいい。それを言葉でわかりやすく言うと?」

「80点すか。えーと、スタッフの実績係数ってのはそのスタッフの今までの経歴、仕事をどれくらいやってきてどれくらいこなして成功させてきたか、の値で、係数は0.65~1.45まで」

「そうね。全く現場経験がないスタッフは、彼彼女がどんなにそれを成功させる自信があったとしても、実績がないと0.65にすぎない。じゃあ、×1.2は飛ばしましょう。結果遂行度というのは?」

「そのまんまでしょ。その仕事をどんだけ完璧にこなせたか。係数は0.65~1.3まで。失敗したらゼロ。会員から金はもらえない」

「1.3なんてありえるんですか?仕事をこなして、それ以上にお客様が満足したってことですか?」

「ううん。1.0が普通なの。1.3なんて数字は基本的に出ない。例えば私の時代、こういう依頼があった。『自分と似たような体質の人に、長期的に複数の風邪薬を飲んでもらってどの薬が一番効くのか調べたい。自分が風邪をひくのは絶対やだけど』って」

「…(;´∀`)」

「めちゃくちゃだなww今だったら絶対受けない依頼だよ」

HE119.jpg「けど当時、それをやった子がいたの。しかも彼は1年間3カ月おきに風邪を引くように生活リズムを崩しながら意図的に風邪をひき、その依頼をこなした。そのとき1.3という数字を出さざるを得なかった。要するに、疾病や傷病、精神的苦痛を継続的に受けたと会社が判断したときに出さざるを得ないの。けど、その後に社則が改正されてその手の依頼を受けることはできなくなった。だから1.1以上は基本的にはない。ちなみにその依頼で彼は1年で85万手に入れた。けど彼は風邪をひき続けたせいで身体を壊してより多くの医療費がかかってしまい、金銭的にはそこまで手元に残らなかったそうよ」

「アホやww」

「見積もりの際、あなたがたはその数値を1.0にするでしょう。それでOK。成功が基本だからね。じゃあ二ノ宮さん、あなたが誤解してる、その×1.2という数字はどこから来たのかしら?」

「いや、1.2に意味なんてあります?円周率みたいな定義でしょ」

「違うの。これは確かに知らない人の方が多い。この1.2というのは、係数0.8~1.4のだいたい合間の数字のことをさすの。それはね、経理で言うところのジレンマ指数っていうのよ」

「はー(*´・Д・)?」

「初めて聞きましたわ。どういうことっすか?」

「見積もり時に計算するのが困難だから1.2という数字をあてはめてるだけ。簡単に言うと、仕事を受けるスタッフの子が、その仕事に対してどれだけ自信をもって接するかというのと、現実問題そんなことできるのかっていう、ギャップを数字にしたものなの」

「さっぱりわかんねえwというかここまでちゃんと読んでる奴いるのかwどう考えてもなぜ飛ばしたしって感じだけど」

「二ノ宮さん、あまりメタな発言は少し…」

「こういう依頼があった。『二階から目薬ということわざがあるが、実際やってみてはどうだろうか。実験を行って成功裏におさめたら、意味が変わりはしないだろうか。例えば、努力と金次第でできる、のような』って」
mono08-81984_pho01.jpg
「アホかwwww」

「それがね、絶対にやって見せるから、成功させるからっていう子がいてね。でも、事前の実験段階で、人形の目が2階から落下した目薬の一粒で局所的に大きくへこんでしまったのよ。これは無理だ、スタッフが失明する可能性があるって。でも彼は大丈夫だ、やるって言って。会社は『絶対させられない』、スタッフは『絶対やれる』。このときのジレンマが数字にすると1.4なの」

「うーむ」

「しかしこういう依頼もあった。すごい大人しい女の子のスタッフがいて、『老紳士だけが集まる合法カジノの受付兼バニーガールが必要。ゲストが怪訝な顔をしないよう、成人で、髪も染めてないような誰から見てもまじめそうな子』だって。調べたら、お金じゃなくて換金不可のメダル式で、本当に紳士淑女なおじいちゃんおばあちゃんしかいなかったの。バニーと言っても過激な服装はご法度だったみたいで胸元は出さない、脚は出さない。スーツにウサミミつけるだけよ。それでたまに給仕するだけ」
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「Σ(゚Д゚) すごい楽じゃないですか!あたしがやりたいです!」

「該当しそうな日程のあう子が一人いて、でも彼女、『こわい』『ちゃんとできる自信がない』『何かあったら会社を訴える』って本当に大騒ぎ。それはさっきと逆ね。本人は『絶対無理』会社は『安全で楽な仕事だ、できないわけない』って。このときのジレンマ指数が0.8」

「要するに、常識をわきまえろ、空気を読めってことですな。けどおかしい。その理屈でいくと、根拠のない自信をもったバカのほうが稼げるってことになりませんか」

「そういう子は根拠のない自信をもって仕事に臨むから、失敗して結果遂行度が下がるの。だからとんとんなのよ」

「あー、うまくできてんのか」


「なんか結構コアな話になっちゃいましたね」

「こういうことを説明しないと、この会社が単にアレな人から金を巻き上げてるようにしか感じてもらえないのよ」

「そんなことよりあたしは今回の話、ちゃんと最後まで読んでもらえたかどうかの方が心配なんだが」

「そんなこと言っちゃいけません!みんなはあたしたちのことが大好きなはずです!」

「大好きじゃあねえと思うよw まあ、いいや。長いから次回に続く
前編まだ読んでない人はこっちから



da282062.jpg「どーもーはじめましてーリリィです」

「(*´ー`)藍沢絢ですー今日はよろしくお願いしますー

「なんか優有ちゃんの妹分だそうで、今日はよろしくお願いねー」

「なんでもしますー(*´∀`*)」

「あのー赤井様、ひとり必要とのことで伺っておりますが…私はどうしますか?」

「そうだなあ。この子が優有ちゃん一押しならこの子だけでいいよ。最近のPV、優有ちゃん結構出てんじゃん?メイクの変え方にも限界ってもんがあるでしょ。いずれ身元ばれるでしょ」

「別に今更身バレしようが何の支障もありませんが、まあ。じゃあ、今日はこの子だけということで承ります」

「費用はこっちで決めていいの?」

「少し会社が厳しくなりまして、見積もりは致しますし過剰な費用はいただきません。ですが、少しだけ手数料を引くのであとでこの子に握手とサインとツーショットをお願いします」

「いーよいーよ。その程度ならいくらでも」

「・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・」

「何か別世界に旅立ってんだけど」

「あ、お気になさらず。ちなみにPVの撮影概要は打ち合わせた通りでよろしいのですか?スタジオライヴは別撮りでもう用意してあり、挿入部分の撮影であると。高低差6メートルの爆薬仕掛けの小屋から飛び降りトランポリンに着地、その瞬間爆風で弾んだ軌道が逸れて近くの木に引っ掛かり、その木を斧で切り落とそうとしていた木こりのおっさんにぶつかり、北海道弁で罵られたうえに身ぐるみはがされて山あいのバス停に捨てられるということで伺っておりますが」

「え?(゜Д゜)」

「あーと。ごめんごめん。ちょっと変えた。高低差6メートルの爆薬仕掛けの小屋から火だるまになってトランポリンに落下してさあ、トランポリンに燃え移って取り返しのつかないことになって、そのへんを歩いてたマタギのおっさんに水をぶっかけられて沈火するんだけど、その瞬間小屋が爆破して小さな山火事寸前になって、そこから救助されるんだけど『命を粗末にすんじゃねえ!!』って言われて思いっきりビンタくらって、身ぐるみはがされて山あいのバス停に捨てられておしまい」
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「え?(゜Д゜;)」

「赤井様、申し上げようと思っていたのですが、ストーリー性がありません。何で命を粗末にするなって怒られた後、身ぐるみはがされるのか理解できません」

「いやだってそういう世界観だから。今度のシングルが。だってそうでしょ。トランポリンがある段階で、PVそのものがメタじゃん。飛び降りてトランポリンに着地するのを見せたいんだよ。そんで燃え移るのを撮影するの。見た人は半分以上、PV撮影のアクシデントって思うでしょ。ディレクターズカットじゃん。見た人に『え!?こんなことになったのに映していいの!?』って思わせたらもうあたしの勝ちみたいなもんだよ。そんで山火事になりかけてマタギのおっさんに怒られてって、ギリギリリアルで、本当にアクシデント映像として信じそうじゃない。で、ライヴスタジオの演奏シーンと交互に絡めて見せるんだ」

「…(゜Д゜;)」

「ですが。茶番です。仮にもDimMasterのPVでそんなドリフの高木ブーじゃないんですから、そもそも何でこの子は爆薬仕掛けの小屋から飛び降りるのですか。しかも火だるまで。そもそもマタギのいる地域は果たして…」

「いいんだって、細かいことは。それとも他にいい案あんの?」

「だいぶ前にも申し上げましたが、バンジージャンプで命に別状がない程度にワイヤーが切れてしまい、その後ザッピング処理を行えばアクシデントと台本の境界線になりはしませんか、と」

「…(゜Д゜;)」

「甘いね優有ちゃん。ザッピングがリアリティなんて思うのは素人だけだよ。その通りにやっても視聴者から苦情や問い合わせは来ないよ。だって、手が込んでないんだもん。あたしは、コンビニの監視カメラみたいな映像撮影でいく。白黒画面で、コンビニ強盗捉えました的な。あれは本当にリアルだ。どんなヤラセでも本当っぽく映る」

「わかりました。ですが、最後だけは変更していただきたいと思います。マタギのおっさんにビンタさせるまではいいとして、身ぐるみはがされるというのははなはだ侮辱です」

「それはこの子の了承さえ得ればいい話じゃないかい?」

「違います赤井様。マタギという職業を侮辱していると言っているのです。なぜ彼らが身ぐるみをはぐというのでしょう。この子のことは別にどうでもいいんです。何でもやるって言ったのですから」

「え?(゜Д゜;)」

「うーん。確かに…それはもっともだな…」

R025007.jpg「ですからこうするのです。マタギのおっさんにビンタされたあと、どんくさく歩いていたら熊に襲われるのです。その瞬間映像がブラックアウトすれば、赤井様の申し上げるところとリアリティは接近しはしませんか。もちろん熊の着ぐるみなど低俗なことは申し上げません。折角なのだから本物の熊を用意するのです。そのシーンまで撮影はまだ時間がかかるでしょう。それまでにこちらで熊を手配します。これにて、視聴者には『爆薬仕掛けの小屋から火だるまで飛び降りるところまではPVの台本だが、その後トランポリンに燃え移ったり山火事になったりマタギのおっさんにビンタされたりその後熊に襲われたり、は真性アクシデント』と理解されることでしょう」

「いい!優有ちゃんさすがだね。優有ちゃんに音楽センスがあったらあたしはバンドに勧誘しただろう。よし、それでいこう。とりあえず爆薬仕掛けの小屋と防炎服にマタギのおっさんは用意してある、いますぐ熊を手配してくれ」

「かしこまりました」

「50万でおさめてね」

「お約束はできませんが…まあ、この子の取り分を調整すればいくらでも安くできます」

「え?(゜Д゜;)」

「ところで優有ちゃん、この子は生命保険ちゃんと入ってるのかな?」

「それはよくわかりませんが当社の住宅用火災保険には加入しています。まあ、火だるまになるのだから人も住宅も変わらないでしょう」

「え?(゜Д゜;)」

「じゃ、あやちゃん、あたしは闇系の仕事があるからこれで」

「さあ、頑張って!」

「え?(゜Д゜;)」


E07819.jpg「二ノ宮さんちょっといい」

「何か?」

「ちょっと次の依頼、普通の依頼で、必要なスタッフが少数だったら、あやちゃん連れて現場に行ってくれ」

「現場?何でですか。オペレーター業務でしょ、あたしたちの仕事は」

「このへん話すと長くなるんだけど、人材育成課のほうで新入社員が4人入って教育担当としてやってるわけだ」

「あー」

「去年もそうだったけど新入社員がスタッフの教育に携わるとこっちに回ってくるクレームが増えるじゃない。で、あいつらって『新入社員を教育しながらスタッフ育成をしているため、多少の不備は生じます』とか言ってきてうっとうしいじゃない。あれは本来教育すべき連中が4月、5月にサボる口実だと思うんだよな」

「まあ、言ってきますね。でも最終的には去年もそうだったけど全部向こうのせいになるんだからそこまで問題じゃないっつーか」

「それだけじゃ気が収まらない。今年はこっちから釘を刺しておきたいんだよ。上に、明確に人材育成課だけの問題だってことを早めに知らせたいからな、現場に社員をこっちから投入して成功させて、あいつらのプライドを刺激すればいい。違う課の新入社員がわざわざ出向くほど、この時期の人材育成課は信用されてないってことになるからね」

「う~ん…そうなんですよね。けど、それは比嘉中課長と神楽坂の責任でしょう。あやちゃんが現場に行くのは違わないっすか?うちと向こうがケンカしても」

「それだけじゃないよ。それだけだったらあやちゃんでなくて、僕や二ノ宮さんが行けば済む話だ。けど、二ノ宮さんが現場に行くときって好奇心とか、依頼料とは別途に出るご祝儀目当てで行くでしょう」

「ん~。否定はしません」

「ああいうのはもう会社としてよくないからやめようって。その辺のルール決めを考査するために何回か、社員がスタッフとして現場に行って、その賃金はどうなるのかを明確に定めようって重役会議で上がって、意見を回収するため今月は何人か現場経験のない社員にスタッフとして現場を回ってもらおう、それで意見を募ろうってことになった」

「でも、それは明確に決めてないから直接現場に行きたいって気持ちになるんであって」

「それだ。それが問題だ。その最たる例が山瀬だ。あいつのカウンセリングとやらは、辞めたからいいけどいずれ問題になってた。勝手に会いましょうって言って会って、額を決めるのは他の誰でもないあいつだったんだもの。費用は誰もが納得いく明確なルールを作ること。別に締め付けようってだけじゃないよ。二ノ宮さん、直接現場に行ったあと手続きを面倒くさがって賃金をもらわないでしょう。そこんとこもちゃんと給与に反映されるようになるから、協力して」

「あー。はー。わかりました」



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「そんなこんなで次の依頼の電話、現場に直で行くことに」

「 (・`ω・´) すごく納得いかない話です」

「まあなあ」

「人材派遣課なら現場入る必要はまったくないって面接のときに言われたんですけど!どうして人材育成課の問題にあたしたちが立ち入んなきゃいけないんですか?課長が人材育成課に行って怒ってくれば解決するもんじゃないんですか?」

「向こうの比嘉中課長がまた、自分より上の指摘にしか耳を貸さない人だからね。ちょっと搦め手にもほどがあるにせよ、やり方としてはあながち間違いではないかな」

「うちの課長って向こうの課長と仲良くないんですか?」

「性格が真逆だな。仲が悪いかって言うと、まあそうなのかもしれない」

「二ノ宮さんと神楽坂さんも仲よくないですよね」

「んー、別にそこまでひどい関係じゃないけど…」

「何か課長に幻滅しました。そういうやり方じゃ使われる方が納得いかないと思いますけど!」

「あのねー一方的に課長が悪いわけではなくて。去年、うちの課は人材育成課の起こした迷惑をおっかぶって、それなりに嫌な目に会ったことがね…」

LULULULULULU

「出ます」

「あー。あやちゃん」

「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、藍沢絢でございます」

「…う~ん」

「…はい、少々お待ちくださいませ。二ノ宮さん、ご指名なんですが、赤井様という方から」

「お。赤井さん?赤井瞳さんかな?」

「はい、そうなんですけど、会員番号を伺ったら『赤井でわかるから優有ちゃん呼んでー』って」

「ああ、わかったわかった」

「お友達の方ですか?」

「お電話代わりました。赤井様おはようございます。二ノ宮優有です」



「おー、あやちゃんおはよー」

「課長?おはようございます。ちょっと生意気な口聞いてもいいですか?」

「…あ、聞いた?」

「あのぉ、あたしは現場に入りたくないからこの課を希望したわけで」

「うーんとねえ、ちょっと説明していいかな?長いんだけど。いろいろあるんだ、うちとあいつらは」

「あたしが現場に行かなくちゃいけない、納得のいく理由を説明してください」

「ちょっと、ちょっと。落ち着いて話しようか」

「課長!課長!お取り込み中すいませんけど、赤井様から急務が入りました!ちょっと、あたしがやらなきゃいけないと思うんで。日程は決まってるので、スケジュールの変更打ち合わせましょう」

「赤井さん?プロモ?DimMasterの?いいよ。二ノ宮さんが行けば一番早く終わるから」

「え?(゜д゜)」

「1日でいいみたいなんで」

「あーそうなんだ。今回は早いね。大急ぎ?」

「大急ぎっぽいですね。専属のスタッフが怪我したって」

「わかったわかった。その代わり値切られないように、かつぼったくらないように。今年からはどんぶり勘定はなしで」

「へえへえ」

「あの。今のお客様。DimMasterの赤井様って」

「ロックバンドのDimMasterのメンバー兼プロデューサーの赤井瞳さん。リリィだよ、リリィ。赤井さんは素人しかプロモに使わないから、プロダクションとかにエキストラを依頼しないで、KI-TSU-NEスタッフに依頼してくれるんだ、半年にいっぺんは」

「え?(゜д゜)」

「ちょっとちょっと課長、さっきの話の続きになりますけど。あやちゃんごめんね。あの、あやちゃん巻きこむのはやめないっすか、現場に行きたくない子にどうこうしろって言うのは―」

「二ノ宮さん!!」

「あー?」

「DimMasterのプロモ撮影連れてってください!!リリィのファンなんですぅー!!(*´∀`*)」

「ちょwww」

「変わり身www」

「あー。いやー。別にいいけど…大変だぞ…あー。うー。まあ、いいか…ちゃんとやってくれれば」

「本当ですか!!聞きましたよ!!覚えましたよ!!約束ですよ!!約束破ったらエビフライぶつけますからね!!(*゚∀゚)=3」
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「あー。うん。いいよ。えーと」

「毎年思うが、人が移り変わってもこの課の社員は本当に駄目な奴ばかりだな」

「言うなよwあんたの課だよwww」

「うふふふふふふふふ(´ρ`)」

長いので後編へつづく


HY099.jpgLULULULULULULU

課「はい、お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、猪元由正が承ります」



あ「…今の電話の音、なんですか?」

二「あー、あれは課長専用電話の」

あ「課長専用?だから電話が2台あるんですか、あそこのデスク」

二「そうそう。あれは人材派遣課の課長しか出ちゃいけない電話。あそこにかかってくるのは、あたしも詳しくは知らないけど法人の高額すぎる依頼とか、医療系、宗教系、警察系、学会系のあたしらには相手できない依頼が来るらしい」

あ「それってすごいですね、二ノ宮さんも出たことないんですか?」

二「ないなあ。禁止されてるから。幸い、月1回鳴る程度の世界なもんだから、課長が休みのときにかかってきたことはないねえ。まあ出たら怒られるから出ないけどさ」

あ「なるほどー」

二「全然成立しないらしいけどね。2、300万クラスの依頼が来るけど、そんなの月1で成立してたら課長の月間の業績はとんでもない額になってるよ。部長クラスの」

あ「2、300万!?」

二「まあ世の中にはそういう依頼をする人もいるってことだよ」


会「恐れ入ります、私は先週にそちらで会員登録を済ませた者です。会員番号は2668番。山本敬蔵と申します」

課「会員登録いただき誠にありがとうございます山本様。軽い人材依頼のご説明をいたしましょうか?」

会「いえ、資料は熟読しましたので大丈夫です。私もあまり時間がある方ではないので、すぐに依頼をお願いしたいのです」

課「かしこまりました」

会「で、それなんですが、あなたは臓器提供意思表示カードをご存じですかな」

CARD1.gif課「いわゆるドナーカードのことですね」

会「はい。その通りです。そして私はドナーカードを所持しており、すべての臓器提供にマルをつけているのです」

課「ふむ」

会「ですから、私は死後に全ての臓器を医療機関に委ねる覚悟があるのです。しかし、私の家族がそれに反対しているのです」

課「ふむ。臓器提供意思をご家族が理解しておられないのですか。現在のドナーカードの現状を見ますと、失礼な話ですが山本様の死後に臓器提供はなされず、そのまま火葬されてしまうでしょうね」

会「そうなのです。どう思いますか。例えて言うならこれは遺言状を破棄されるようなものです。今のところ、私の甥ただ一人だけが私に賛同してくれています。しかしそれでは何の意味もないのです」

課「そうですね。奥様やご子息が反対していれば、殆ど意味はない。さて、つまり山本様のご依頼の要旨とは、それは?」

会「誰にもわからない密室と十分な医療器材、口の堅い医師をひとり、準備していただきたいのです」

課「…なるほど。だいたい理解できました」

会「お察しの通りです。正式な医師免許を持っている者、同意者としての私の甥がいれば私の望みは成就します。さらにそのときに臓器提供を受けるクライアントがいれば完璧です。いかがですか。どうか私の真意をーッ!依頼料は500万お出しいたします!」

課「あなたはまさか…先ほど時間がないと仰いましたが…」

会「はい…末期の肝臓癌です。もはや余命幾許もありません。今も病床で電話をしています。しかし!肝臓以外の臓器は!」

課「了承いたしました。このご依頼、お受けいたしましょう。まず、山本様の甥御さんにお会いしたいと思います」

会「それと、これは補足なのですが―」

課「はい?」

会「これが実現するだけでも私は十分です。しかし甥にも要望があるのでお伝えしたいのです。甥は、私のような、臓器移植を親族に反対される人たちのため、それについての記録を取りたいと言っているのです」

課「記録を?取りたい?」

会「はい、そして私の死後にそれを公表し、社会に公表したいと言っています」

課「記録…医師だけでは、不十分だと。例えば、カメラマンのような?」

会「恐らく。私は構いません。どうか甥の話も聞いてやってください」

課「かしこまりましたが…山本様、少しだけ会員情報の確認をしたいのですがよろしいでしょうか?」

会「どうぞ、構いません」

課「山本様のご家族で中世日本史を専門とした大学教授をしていらっしゃるのが、甥御さんでしょうか?そのような略歴が手元にございます」

会「はい。甥の片山裕太郎は大学で日本史と美術を専門にしています」

課「ふむ。山本様ご家族はこちらに在住しているが甥御さんは京都にお住まいである、と…中世日本史上の美術といえば嵯峨天皇とかですか」

会「いえ、私はそちらにくわしいわけでは…」

課「檀林皇后の絵は有名ですからねえ」

会「はい?檀林皇后とは一体何のことでしょう?」

課「失礼いたしました。では、細かい打ち合わせを…」
 


(3週間後)
LULULULULULULU

課「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、猪元由正が承ります」

甥「お世話になっております、私は先日お会いしました、山本の甥の片山です」

課「片山様。先日はどうも。叔父様のご容体はいかがでしょうか」

甥「はい、昨日、延命の甲斐なく亡くなりました。ですので、すぐに叔父の遺言どおりにしたいと思います。ですので、さっそく準備を…」

課「準備をするのですね。準備を。では、すぐに致しましょうwwww」

甥「? どうしたのですか?なぜ笑って」

課「自作自演ごくろうさんw」

甥「何ですか!叔父が死んだというのにその笑い方は!!どうなっているのですか!!」

課「まあまあ、そういきり立つこともないでしょう。そもそも寿命を縮めたのはあなたに他ならない」

甥「は!?」

課「余計なことを依頼し墓穴を掘った本当の会員。記録に残したいと言ってしまったのがあなたの過ちですな。カメラマンを依頼したかったのか。はたまた画家が欲しかったのか、そればかりはご自分で用意するべきではなかったのですか」

甥「な、なんのことを」

課「実際、私が用意した医師はわが社から依頼料を受け取り、しかもあなたから口止めの買収金を受け取った上に結局何の仕事もなかったのだからもの言わず、足はつかない。それはその通りだ。臓器移植の必要性はそこになかったからだ。あなたが必要なのはドナーカード記入など考えられない死にかけの老人が一人と、その死後を克明に記録する、ある程度精神の据わっているというか、気のふれた…カメラマンか画家。そしてその記録を現在の闇美術市場に持ち出せば好事家が大枚をはたいて買い取ることは必死でしょうな」

甥「な、な、何を言っているかわかりませんが…」

課「それはわが社への依頼費用、医師とカメラマンへの買収額を支払っても十分に有り余る。そして、わが社にスタッフ登録をしている『副業的に金だけが欲しい』専門家を利用すれば、社会が追求しようとしても足取りはわが社に突き当たり、警察が捜査したとしても『あーKI-TSU-NEスタッフなら金さえ積まれれば何でもやってそうだからあいつらが犯人だろ』と誤解をさせることができるとでも思ったのか、バカめ。わが社を利用したな?」

甥「ま、まて!どこにそんな証拠があるのです!」

課「あなたの専門である中世日本美術において、死後の記録といえば嵯峨天皇の妃である檀林皇后を描いた九相図が有名だ。有名と言っても知らない者は知らないだろうがな。私は檀林皇后の名を出してカマをかけてみた。電話越しだからわからないとでも思ったか。お前がその単語を聞いた後息をのみこんだのを私が察知できないとでも思ったか」
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甥「な、なんだと、なぜそんな」

課「俺の知識をそこらの一般人と同等に見たのが間違いだ。会員の山本すなわち甥の片山。自作自演はもうおしまいだ。お前の真意は、病中の叔父を偽り、KI-TSU‐NEスタッフに共犯を依頼したうえ隠れ蓑に利用し、九相図を作成させ闇オークションで売りさばくことだったーっ!!」

甥「うっ!く、くっそォー!!!なぜ俺の、完璧な計画がぁっ!!」

課「会員が相手ならどのような要望でも期待に添えようとする、そんなわが社の名を騙ったり、利用して犯罪や法に触れる行為を画策する者が多少はいるということさ。お前がどこからこの電話番号を入手したかわからんがね、この電話番号はわが社のどこの資料を探してもホームページを探してもわからない電話番号のはずなんだよ。ある特定の機関の人間しか知らない、社内でもごく数人しか知らない、な」

甥「ち、ちっくしょおおおおおおおお!!」

課「もうすぐ警察がそっちに向かう。まあ早めに言い訳を考えておくことだな。幸いまだ罪状は尊属殺人だけで済んでいる。抗癌剤を止めさせたくらいか」

甥「うわああああ!!もう何もかもおしまいだあーっ!!」

課「俺に電話をかけたのが運のつきだったな。俺はなあ、お前みたいな、真実をねじ曲げる奴が、でぇ~っ嫌いなんだよ!!!」
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あ「課長ーおべんと買ってきましたけど…あーあーあー」

二「うわーまた顧客にキレてるよ。あれさえなきゃあたしより単月の業績、上だろーになあ」

ガチャ

課「おーおかえり、弁当ありがとう」

あ「課長すいません、からあげ弁当なかったんですぅー(´・ω・`)」

課「えええええええ!!からあげ弁当ないの!?俺は一体何食えばいいんだよお!!」

二「いやー何か売り切れですって。天ぷら弁当でいいっすか、代わりに」

課「からあげじゃなきゃやだぁ~」

二「やだぁじゃねえよwww天ぷらの方が150円高えんだよ」

課「何なんだよ~高額の依頼も外すし、からあげ弁当はないし、今日俺もう仕事できないかもしれない~」

二「しろよw何で幼児退行してんだよww」

あ「課長!泣いちゃだめです!あたしのエビフライいっこあげますから!」
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課「エビフライ!?」

二「バカwやめろw甘やかすなww」

二→二ノ宮優有
あ→あやちゃん(藍沢絢)
課→課長(猪元さん)
山→山瀬幸輔


あ「課長っ!新入社員研修レポートできたので確認お願いしますっ」

課「はーい。二ノ宮さんに見せた?」

あ「えーすいません、今日できあがったのでまだ確認してもらってないんですが、電話したら直接課長に出してくれと」

課「あーそうか。2連休か、二ノ宮さんは」

あ「はい、明日まで来られないので」

課「…」

あ「…」

課「ちょっと足りないなあ。もう一度書き直しなさい。今度はちゃんと二ノ宮さんに見せてから。社会人っぽい文章になってない」

あ「…す、すいません」

課「提出期日はまだ先だから、急がなくていいよ」

あ「はい、すいません。書きなおします」
 


あ「というわけでおじゃまします。お休みのところすいません」
 
GN012.jpg二「あーいいいい。連日飲んでて昏倒してた。誰かに起こしてほしかった」

あ「ごめんなさい本当に」

二「課長の言う締め切りは実際より『遅い』からね。きっと締め切りは」

あ「明日なんですよね」

二「傾向的にはそうだね。ちょっと見せて。どういうこと書いて没なのさ」

あ「これこれこういう感じで」

二「ちょwww視界がブレて読めねえwwwスピリタスこええww」

あ「スピリタスてwもう少ししてから出直しましょうか?」

二「あーいいいい。うーん。ほうほうほう。あらーん。それーん。いやーん」

あ「どうですか?」

二「確かに課長の言うとおりだね。文章が若い。仕方ないと言えば仕方ない。敬語すぎるのと、感情が多すぎるな。しかしアホ大学出の新卒の小娘の文章にしてはしっかりしてると思うんだけどなあ」

あ「アホ大学言わないでくださいwでも課長はダメですって」

二「ちょっと待って、新入社員研修ならあたしが4年前に同じもん書いてるわ、まだあるから探すね」

あ「本当ですか!?ありがとうございます、ぜひお願いします」

二「ところであたしがそいつをあやちゃんに見せてあげたら、あやちゃんはあたしに何をしてくれるのかな」

あ「…何を、と言われても、何をお望みで」

二「うふふふふふふふ」

あ「か、身体?(*´ο`*)」

二「しばくぞwww夕ご飯作ってちょーだい」

あ「はーい。何がいいですか」

二「えーと。スンドゥブ」

あ「す、スンドゥブ…」

二「4年前かー。4年前ねー」


(4年前)

A「聞いた?人材派遣課にすげえ新人入ったんだって」

B「知ってる知ってる。なんか入社1ヶ月目でもう営業成績、猪元さんのつぎだって」

C「すげえよな、そんでかわいいんでしょ」

B「そうそう。美人だけどあんまり性格はよくないらしいけど」

A「でも仕事ができるってそういうことだよね」

B「そうだね。猪元さんもウハウハだよね。最近、急に業績伸ばしてるし。もうすぐ課長なるんじゃないの」

C「可能性は高いね。あれ?猪元さんが研修してんの?」

A「いや、それがww」

C「なになに」

A「山瀬ww」

B「ちょwwww」

C「山瀬wwwww」

A「何かもう研修じゃないよねwww」

B「山瀬ってww」


二「猪元さん、先ほど山瀬さんより電話がありまして、2時間ほど遅刻するとのことですが」

課(このとき代行)「んだとぉ!?あのガキふざけんな!メールして、1時間にしろって」

二「1時間にしろとメールするのですね。わかりました」

課「どっちが研修される側だあのバカ、新卒の給与まで落としてやろうか」

二「あ、いえ。今、来られました」

課「ちょwww」

山「おはようございます。遅刻しまして申し訳ない」

課「てめえふざけんなバカ!遅刻してんじゃねえ、いや違う、まだ20分しか遅刻してねえじゃねえか、何が2時間だ」

山「いえ、そのように伝えればあまり怒られることもないかなーって」

二「山火事にガソリンを注いでいますよ」

課「さっさと仕事しろバカ、今月の営業成績150万いかなかったら本当にこの課から飛ばすからな」

山「150万って、もう俺110万いってるじゃないっすか」

課「てめえwww」

二「山瀬さん、もう今月はあと2日しかないのですけど」

課「二ノ宮さんは新入社員なのにもう135万だ!少しは見習えこのバカ!」

山「いやーこの子はもうなんか。天才だと思うんで。もう俺が研修しなくってもいいんじゃないっすかね。もう。凡人と天才を一緒にしたらダメですよ」

課「じゃかあしいやボケ、さっさと仕事しろ!」


二「山瀬さんどうなさるのですか。本当に飛ばされますよ。猪元さん、本気ですけれど」

山「なに?心配してくれてんの?大丈夫大丈夫、そんな大ごとになるつもりはない」

二「いや、別に心配なんかしてませんが、研修してくださる方が今更変わるのもめんどくせえと言うか」

山「おまwwいや、いいけどさ。俺は俺のペースで仕事したいんだよ、ノルマに縛られて仕事してて何の楽しみがあるよ」

二「その発想は間違ってはいないとは思いますが、正しくもないと思うのですが」

山「いいのいいの。俺は俺らしくやりたいの。降格されてもいいの。あれーあれは?二ノ宮、月末締め切りの新入社員研修レポート」

二「もう少し。研修概要と今後の目標は書きましたが、この『研修に対する所感』というのは自分の言葉で素直に書いてよろしいのでしょうか」

山「いいよ。そのかわり教育担当のことを書く必要があるんだそこは。でも、俺がテキトーでうぜえとかあたしの方が仕事できるとか書いていい」

二「恐らくそういう書き方はしないと思いますが。私は山瀬さんを嫌っているわけではありませんので」

山「そいつぁー嬉しいね」

二「けれど、思ったことを書いていいなら自分の言葉で素直に書きます。私は山瀬さんの思想は嫌いではないですが仕事のやり方は少々首をかしげます。そのキャラで仕事をしていくなら、仕事はできなくてはおかしいと思うからです。今のままだと山瀬さんに長所が見えない。失礼にあたることを申し上げますが、私は与えられた数値は守るべきだと思いますし、今後一緒に仕事をしていくうえで目に見える評価としての成績がないと私は山瀬さんを尊敬できませんし、いずれ見方を変えていくかもしれません」
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山「ふーん。新卒なのにしっかりしてるねー、考え方が」

二「レポートは明日、出します」

山「よろしくー」



LuLuLuLuLu

二「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の二ノ宮優有がお受けいたします」

会「電柱が倒れてくるんです」

二「はい?」
 

会「今にも私に向かって電柱が倒れてきそうで恐ろしくてたまりません。ぜひ、私のために、私が歩いているときにだけで結構なので電柱を押さえておいてくれる人たちを依頼したいのです」

二「ご依頼主様、申し訳ございませんがお名前と会員番号をお伺いしてもよろしいでしょうか」

会「永田昌也、302番です」

二「会員番号302番の永田様ですね。そして、今にも電柱が永田様に倒れてくるかもしれないと不安がっておられるのですね」

会「かもしれない、ではなく本当に私に向かって倒れてくるのです。あんな長いもの、私に向かって倒れてこないわけがありません」

二「電柱のような長いものが永田様に向かって倒れてくるに違いないと仰るのですね。しかしながら、それは道を歩いていれば誰しも同じような可能性下にあるのではないでしょうか。電柱は常に360度と言う角度のどの角度に向かって倒れてくる可能性は一致しているのではないでしょうか。そこで永田様にだけ倒れてくるというのは取り越し苦労と言うものではないでしょうか」

20091214.jpg会「そんなことはありません!あの電柱どもの群れは常に私に照準を合わせているのです!」

山「…」

二「いや、狙ってねえよw大丈夫だよ」

会「何ですって!そんなことあなたに何がわかるというんです!」

二「少々お待ちください。今ネットで調べましたが、全長の1/6が地面に埋まっているようです。確かに電柱が折れる事故はたまにあるようですが、永田様の理屈ですと電柱が意思を持って襲いかかってくるような、そういうことはないのではないでしょうか。台風一過のあとでさえあんなに折れてないのですから、私には危険性は薄いように感じます。老朽化した電柱は頻繁に交換するらしいですから。1本22000円とか安いようなので」

会「違います!老朽化していようが新品であろうが、私に向かって折れてくる可能性は高いのです!」

二「折れねえよw大丈夫だよ」

会「何ですって!」

二「あー、永田様」

山「二ノ宮、代われ」

二「? 少々お待ちください。山瀬さん、ちょっとこの方、相手にできかねます。私は断っておきますので他の電話を取り次いだ方が」

山「いいって。聞いた感じ、俺が得意そうな人だ」

二「あー?」

山「大変申し訳ありません、私は二ノ宮の上司で山瀬幸輔と申します。永田様のご依頼に添えるようにいたしますので、2度手間とは思いますがどうか私にもう一度ご依頼の概要を教えていただきたく存じます」

会「…大丈夫なのですか、私の依頼を理解していただけるのですか」

山「もちろんです。どのようなご依頼でもお受けするのが弊社のモットーです」

会「私に向かって電柱が倒れてくるのです。ですので、私の眼の届く場所で押さえてておいてくれる人を依頼したいのですが、あなたの部下は理解してくださらなかった」

山「それは、申し訳ございません。では具体的に依頼の打ち合わせをいたしましょう。永田様に向かって倒れてくる電柱は明確に殺意をもっていることは確かでしょうか?それは冤罪とはなりませんか?」

二「ちょwww」

会「冤罪ではないと思いますが、恣意があるのは間違いありません。でないと、あんなに私に向かって倒れてくるような様相は持たないのではないでしょうか」

山「そうかもしれません。しかしここは非常に大事なのです。仮にホームパーティーに招かれたとします。そこの奥さんが『この包丁、よく切れるのよねえ』と言って包丁を来客に向けたときに、その奥さんが大量虐殺を目論んでいるかもしれないと信じ大勢で押さえつけて包丁を奪ったら、せっかくのパーティーは台無し、料理も食べられずに帰宅する羽目にはならないでしょうか。仮に永田様に向かって倒れてくる電柱が、加害者ではなくて被害者かもしれないという視点で私は物事をとらえようと思うのです」

会「電柱が?被害者?」

山「その通りです。確かに中には人間に向かって意図的に倒れてこようと思っている愉快犯、確信犯的な電柱もいるでしょう。しかし、彼らとて折れたいと願っているわけではないのです。なぜなら、それは交換=自分の死と同じ意味合いをもつのですから。肝心なのは被害者たる電柱たちです。先ほど二ノ宮が説明したように、電柱は22000円と安価。すなわち、ほんの些細なことで交換されてしまう運命にあると私は考えます。だからこそ、心のある電柱、いわば真剣に生きている電柱ほど、自分は折れないぞ、地面に、この大地に食いついて行くぞと必死なのかもしれません。つまり、永田様を狙っている電柱は加害者ならそのような心ない電柱。被害者だとしたら年老いた自分を支えきれない電柱なのです。いかがでしょう。これで、永田様を狙っている電柱は半分以下になりましませんか?」

会「は、はい!その通りです!」

二「ならねえwwwならねえよwww」

山「しかし現実問題、心ない加害者的電柱から永田様を守って差し上げないといけないのは火急を要します。まず、提案なのですが私どもで永田様のご住所から通勤経路、プライヴェートエリアを確認しその近辺にある電柱をリサーチします。そして、その中にあった加害者的意識を持った電柱をリストアップし、そこから初めて当社のスタッフをそれら心ない加害者電柱を押さえるため出向させます。いかがでしょう」

会「すばらしい!それで結構です!ああ、死なばもろともと思って電話したらこんな素晴らしい人にお会いできるとは!」

山「とんでもございません。しかしながら、私の簡素な見積もりですと現段階で人員と時間帯を多大に必要とすることが予想されるので、すでに20万弱になっているのです。これでは永田様の金銭面でも私は心配です」

二「ちょwww」

会「何をいうんですか!20万ごとき、私の命に比べたら安いものです!」

山「ありがとうございます。しかしそれはあくまで最小限にすぎません。場合によってはスタッフだけで押さえておいても必ず数本の電柱殺人鬼たちが永田様を狙い続けるでしょう。これはもう、弊社で撤去するしかありません」

会「で、電柱殺人鬼ですって!?そんな恐ろしい輩がこの世に!!」

二「電ww柱ww殺ww人ww鬼wwwwwwwww」

JQ148.jpg山「工事費用だけでも私の大まかな見積もりでは15万。しかし永田様の安全はさらに強固になることでしょう」

会「構いません!お支払いします!」

山「ありがとうございます。ところで永田様、そんな不安を抱えておられるのでは私も今から心が痛みます。実は私、カウンセリングも得意なのです。永田様の不安を取り除くべく、私が直接永田様にお会いになって不安の元を取り除いてあげたいと思うのですがいかがでしょう。もちろん任意なのですが」

会「なるほど!しかし、そこにも費用は発生しますよね?」

山「確かにすでに多額になってしまっており、私のカウンセリングの相場では5万強、普段はいただいております、いいえ、あくまで提案です」

会「確かに山瀬さんのような方とお話しできるのは心強い。うーむ。少々考えさせてもよろしいでしょうか?」

山「まったく問題ありません。私のおせっかいなのですか…あ…う…ぉ」

会「ど、どうしました?」

山「い!今は駄目だ!今は来るんじゃない!!くそっ! 大変申し訳ございません。今、危うく私の別人格が目を覚ますところでした」

二「ちょwww」

会「…山瀬さん、ぜひお会いしましょう、会ってお互いの心の闇をぶちまけましょう」

山「本当ですか!ぜひ私からも!ありがとうございます。では、すぐにセッティングしこちらからお電話いたしますでは、失礼いたします」

二「…」

山「ほーら、40万きた」

二「…」


課「山瀬ぇー!!!!」

ML260016.jpg山「はいはい猪元さん。どーしました?ノルマならクリアしましたけど」

課「そんなこと言ってんじゃねえ!何だこの二ノ宮さんの研修レポートは!!」

山「あれ?そう言えば俺、確認しなかったなあ。直でそっち、行っちゃいました?ちゃんと所感欄、書けてないですか?」

課「所感欄だ!何だこの所感欄は!どうなってんだてめえ!」

山「いやー彼女の好きに書かせたというか」

課「なおさら問題だろうが!どうなってんだこれは!!」

【…また、先日研修をしてくださる山瀬さんの営業能力を間近に見て、教育を受けましたがこれについては純粋に気持ち悪いと感じました。せっかく仕事ができるのに非常に残念に思う所存です。完璧に見方が変わりました。感銘にはなりません。】

山「ちょwww」

課「お前あれか!セクハラめいた教え方してんだろーがどうせ!!」

山「ちがwwしてねえよwwwww」

<注>

「二」→二ノ宮優有
「藍」→藍沢絢(あやちゃん)
「課」→課長
「会」→今回登場の会員
 

フリーダイヤルにおつなぎします。しばらくお待ちください。 
da218026.jpg
藍「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、私は担当の藍沢絢がお受けいたします」

会「・・・ああ、すいません。折り入って依頼なんですが」

藍「ご依頼の件ですね。どうもありがとうございます。お客様、会員―」

会「KI-TSU-NEスタッフの営業の方で、藍沢さんと言う方ははじめて耳にしますが、最近そちらに来られたのですか?」

藍「? はい。私は4月に入社いたしました、藍沢絢と申します」

会「なるほどなるほど。そちらの部署で、藍沢さんの直属の上司はどなたにあたるのでしょう」

藍「私の直属の上司ですね。課長の猪元と、課長代行の二ノ宮がおります」

会「ほうほうほう。二ノ宮さんがいる、と。二ノ宮さんは今、出られますか?」

藍「…少々お待ちください。…申し訳ございません、二ノ宮は席を外しておりまして、もう少しで戻る予定にはなっておりますが、こちらからお電話をかけなおした方がよろしいでしょうか?」

会「あ、いえ。それは別に結構です。別に二ノ宮さんに特別用があるわけではない。では、山瀬さんはいらっしゃいますか?」

藍「うちの部署には山瀬と言うものはいないと、思いますが・・・」

会「ああそうですかそうですか、もうそちらには山瀬さんはいないんですね。では、あなた。藍沢さんで結構です。私からの依頼を言ってよろしいかな?」

藍「はい、私でよろしければお伺いさせていただきます」

会「では、藍沢さん、あなたは長財布を持っていますか?持っていたら、今から私の言うようにしてほしい」

藍「はい?長財布と言うことですね。私は、はい。持っていますが?」

会「ではそれを握りしめたとします。財布を右手で持ちますよね。親指が財布の右、人差し指と中指が財布の上部。薬指と小指が財布の左です、ここまで大丈夫ですか?」

藍「…え。はい。そのようにいたしました。そのように持ちましたが」
t02200396_0480086410446300951.jpg 
会「それをあなたの胸でもお腹でもよいのでつけたとします。これであなたの長財布は上下左右前後からストッパーがかかっている状態になるわけです。さて、この状態にある財布を外部からの力により落下させるには、どうしたらよいのでしょう。あるいは、あなたはこの財布にどのような力が加わったら落としてしまうのでしょうか。なお、あなたは握力を弱めることはできません。常に財布に加わる力は一定とします」

藍「…え?」

会「聞こえませんでしたたか?もう一度言いましょうか?」

藍「いいえ、聞こえなかったわけではありません。確かに、財布を上下左右前後から固定してます。これを、どうやったら、落とせるのか?ですね?」

会「そうです」

藍「あの、大変申し訳ございません。これが、ご依頼なのでしょうか?」

会「そうです。もしも藍沢さんが私が納得する返答をしていただければ、20万程度の人材依頼報酬を支払います」

藍「…え!?」

会「さあ、いかがでしょう?その代わり、僕は納得する返事をもらうか、あなたが『降参』するまで電話を切りませんし、切れてもかけ続けます。今16時38分です。あなたが帰社できるかどうかは、あなた次第です」


二「ぺーこぺーこにゃーんにゃーんぺーこにゃーんにゃーんぺーこぺーこふーんふーんぺーこふーんふーん♪」

課「お。あれ、二ノ宮くんも外出だった?」

二「おおう、課長。お疲れ様です。お戻りっすか」

課「残業残してる子いないよね?新入社員の歓迎会は遅刻厳禁、でないと上層部がうるさいぞ」

二「いやぁ大丈夫っしょう。今日来た面倒そうな派遣依頼は全部あたしが片づけたし書類も変なのはないし、あっても明日に回しても平気なやつばっか」

課「新入社員の出席状況は?」

二「他の部署はなんか欠席が目立つらしいんですけど、欠席っつーかばっくれ?うちはあやちゃんだけっすからねえ。あの子はあたしの舎弟だからあたしが出れば絶対出ますわ」

課「で、今何時」

二「17時30分」

課「歓迎会の開始時刻は」

二「知ってて言ってますか。18時」

課「早いよね」

二「今日は全員残業なし、が決まりごとなんで。開始が早い分2次会3次会4次会が怖いっすよ」

課「で、その残業なしデーにあの子は何してんの」

二「…あー」

藍「で、では古田様、私の指が疲れてきたころにもう片方の手に重いものを持たされて、落としてしまいそうになって慌てて右手を添えたら、財布を落としてしまった、というのはいかがでしょう」

会「さっきと同じじゃないですか。それは外的要因で落としたように見せかけて、あなたが意図して財布からの力を緩めてしまったのでしょう。本当にその財布を離してはいけないとしたら、あなたは左手に持った荷物を落とすはずなのです」

藍「…ううっ。じゃ、じゃあっ、胸に当たった財布の圧力のせいで、私の服が裂けてしまい滑り落ちる、というのはいかがでしょう」

会「冷静に考えてください。実際にそんなことが有り得るのですか。このご時世にそんな圧力ごときで裂けるような服を着ている輩がどこにいるというのです。それともあなたはそういう破れやすい服を着ているというのですか。ましてや、手の角度的に胸に垂直に固定された財布が、服が破れたところでどうして水平に滑り落ちるのでしょうか」

藍「でっ、ではっ、財布がふと気づいたら二つに折れてしまって…」

会「私は長財布を指定しました。いつ二つ折りになったのですか。最初の設定を無視してはいけません。それともあなたの財布は力を込めるとふたつに折れてしまうのですか」

藍「うっ、ううっ」

二「ちょww」

課「今、『古田様』と聞こえた。会員番号104番の古田さんだという可能性は」

二「…まずいな」

課「これはまずいぞ」

二「あたしが代わります」

会「ふふふふふ、どうです、時間の無駄でしょう。しかし報酬を確保したい。絶対に答えられるとあなたは考えているのに、延々と時間だけが過ぎてゆく。さあ、いかがですか?降参しても構いません、しかし僕はここで降参されても明日また同じような内容をあなたに投げかけるでしょう。ここで食いとめておけば僕はもう何も文句はありません。さあ、次の返答を僕にしてください」

藍「でっ、ではっ!」

二「あやちゃん保留!」

藍「! 申し訳ございません、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」

(ローレライ)

藍「に、にのみやさん」

二「あたしが代わる、こいつ、会員番号104の古田だな」

藍「うっ、そ、そうですっ」

二「ちっくしょー、何でこんなタイミングでかけてきやがって、泣くな!もういい、先に歓迎会に行って!」

藍「は、はいっ」
 

二「申し訳ございません。お電話代わりました。古田様、私は二ノ宮優有でございます」

会「おお、二ノ宮さんではありませんか。選手交代かな?あなたなら少しは相手になるでしょう、さあ、私の質問に答えてください」

二「かしこまりました。どのような内容かお教えください、こちらで不手際がございまして申し訳ありませんでした」



課「あやちゃんここは行こう。君たちの歓迎会だから、君たちが遅刻はよくない」

藍「で、でも二ノ宮さんが」

課「うまくいなしてくれるといいんだが。会員番号104番の古田さんはわが社のブラックリストで5本の指に入る依頼主だ。彼のせいで時間をつぶされ残業を誘発された社員、連日相手にしてノイローゼになった社員も少なくない。君では無理だ。ここは二ノ宮さんに」

藍「だ、だいじょうぶなんでしょうか」

課「きわどいな。古田さんの相手ができるのは、昨年退社した山瀬という男か、人材育成課にいる神楽坂さんだけだと言われている。二ノ宮さんは確かに社内最強のオペレーターだが得意分野のジャンルが違う。下手をすると二ノ宮さんは今日の飲みには参加できなくなるかもしれん」

藍「そ、そんな!二ノ宮さんがいないこの会社の飲み会なんて怖くて行けません!」

課「あやちゃん、けっこう毒舌だね」

藍「はい?」


二「それでは古田様こういうのはいかがでしょう。そのような状態で歌舞伎町の奥を歩いていたら、急に暴力団と蛇頭の抗争に巻き込まれてしまい、奮闘はしたが匕首が私の手首を落としてしまい財布は下水に落下。しかし私は持ち前の機敏さと判断力で目の前の最後の中国人に正中線3段突きを喰らわせ、崩れ落ちる身体を背にして夕陽を仰ぐ」

会「二ノ宮さん。非常に面白い。面白いけど私の質問に殆ど答えていませんね。外的要因で落とすのは構いません。しかし、財布を持った手首ごと落ちる、というのはシチュエーション的に可能なのでしょうか。どうもみくちゃにされたらその体勢から手首だけが切り落とせますか。それ以前に、あなたの言ったことは藍沢さんの言ったことと全く本質は一緒なのです。握力をなくして落とす。そんな回答は僕は求めていないんですよ。握力が失われない状況で、6方向からガードされた財布をどうやって落とせるのか。それが問題なのです。あなたは破天荒で素晴らしく頭の良い女性だ。しかし、あなたは少し自分の道を歩きすぎる。だから設定を把握していながらそれを破壊しようとする、それでは設定と私の趣旨が理解できなかったあなたの後輩とまったく変わりはないのですよ」

二「ご期待に添えない答えで申し訳ございません。では、このような答えはいかがでしょうか。私が持っていたのは財布であったが実は長財布ではなかった。それどころか、私の持っていたのはがまぐちだった。ああ、そうだったのか!私は長財布なんか持っていなかったんだ!今まで長財布を抱えていた私は私の幻想だったんだ!人間は幻想に生きてはならない、現実を見つめて生きていかなければ!ああ、私は今、もう一度生まれた!」

会「うわべだけですね、二ノ宮さん。それはあなたのキャラではない。それは山瀬さんのモノマネにすぎません。あなたと山瀬さんではキャラクターの構成要素が違う。あなたにそのキャラは見合わない。なぜならあなたは生粋のリアリストだからですよ」

二「…」

会「違いますか?」

課「…いかん。二ノ宮さんが」

藍「!?」
t00840127_0084012710446287954.jpg 二「…確かに。安易に山瀬のまねごとをしてしまったのは落ち度かもしれませんが・・・それは・・・」

会「二ノ宮さん。パワーダウンしましたねえ。あなたの少し前の勢いはどこにいったんですか。昔のあなたならリアリストとしてのあなたのキャラをつきつけ、それでも僕の要求する答えを返してきたでしょう。ふふ、どうやらホスト通いをやめて精神的に守りに入ってしまったという噂は本当でしたね」

二「…関係ねーだろあたしの過去の趣味と今の依頼内容の返事は」

藍「あっ…」

課「ちょwwおまww」

会「はっはっは。そして二ノ宮さん、あなたの最大の、短気という弱点がそれなんです。もうあなたは僕の難題に答えることはできない。あなたの負けです。さあ、降参とお言いなさい。神楽坂さんが笑うのも仕方がありませんよ。そんなことだから結婚できないんだって」

二「あたしが結婚しねーのは彼氏に金がねえからだボケがァーッ!!!!!」

課「二ノ宮さん!やめなさい!やめるんだ!代わろう!保留にしてくれ!」

(ローレライ)

課「大変申し訳ありませんでした。私は二ノ宮の上司の猪元と申します」

会「ああ!いつぞやはどうもどうも。はっはっは。二ノ宮さんが暴れていますよ。どうにかしたほうがよろしい」

二「うわああああ!!神楽坂はどこだ!神楽坂はァーッ!!誰が行き遅れだぁ!!あの雌豚ァ横ッツラしばき回してやらぁ!!もう会場かぁーッ!!!」

藍「二ノ宮さん落ちついてください!」

二「山瀬ー!!山瀬ー!!今から呼ぶから来い!すぐ来い!頼む!新幹線乗って仙台から来い!!このォキチガイぶっ飛ばしてやってくれえーっ!!!」

藍「電話つながってません!つながってません二ノ宮さん!落ちついてください!」
 
HY105.jpg課「して、今回はどのような?」

会「それでは課長さん、あなたは長財布をもっていらっしゃいますか?」




二「ふー、ふー、ふー」

藍「だいじょうぶですか」

二「あー落ちついた。くそー10代のときみたいなキレ方しちゃったよ」

藍「二ノ宮さん」

二「ああ、OKOK。もーだいじょうぶ。いけないいけない。はあ、あたしの負けだ。駄目だもうこいつは。山瀬じゃないと」

藍「…その、山瀬さんって方かもうひとりしかお相手できないんですよね?どうしてこんな人、会員にさせておくんですか」

二「あやちゃんそれは違うよ。どんな変人でも金が発生するなら汚い話、顧客なんだよ。山瀬はこいつから報酬を受け取ってきた。だからってあいつがいないからって切るのは違うと思うんだ。それはあたしたちの実力不足なんだ。どんな顧客に対しても満足のいく結果を残しリピートしてもらいお金を払ってもらう。それがあたしたちの仕事なんだよ。まあ、ごらんな。課長の手腕を見るさ。歓迎会の遅刻は、もう3人ともあきらめよう」

藍「…はい。わかりました」

課「てめえいい加減にしろこのイカレトンチキが!!俺たちぁこれから新入社員の歓迎会やんだよ!てめえの相手なんかしてらんねんだよ!山瀬はもう辞めたんだ、てめえみたいな社会不適応者なんか相手にしてられっか!!俺ぁ早く飲みたいんだよ!!早く新入社員に『猪元課長ってカッコイーラブラブて言われてえんだよ!お前は今日限りで会員剥奪だ!電話も着信拒否だ!!もう二度とうちの会社にかけてくんじゃねえこのド変態が!!

ブチッ  ツー  ツー  ツー

さあ、二ノ宮さん、あやちゃん、行こう。まだ間に合うよ」

二「…ああ、それでいいのか」

藍「…」
 

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