LULULULULULU
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二「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、二ノ宮がお受けいたします」
依「お久しぶりです二ノ宮さん。私は上海の趙黒蓉です」
二「誰だよw」
依「小ネタはさておき、私は会員番号505番の五十嵐和司です。二ノ宮さん、依頼の前に私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
二「依頼の前に五十嵐様のお話を伺いするということですね。かしこまりました」
依「実はですね、私は現在商社で部長職を務めているのですが、最近肩書きというもののバカバカしさについて考えるようになったのです」
魅力的なことわざ講座No.3…
「あらいぐまのラスカル」
TVアニメなどで愛玩動物というイメージが植えついているアライグマだが、実際は非常に気性が荒い動物であり、安易に飼育することはできない。また、地方自治体で野生のアライグマによる人的被害、生態系の環境を保護するため防除対策がとられているが、動物愛護団体が圧力をかけているという。
この語例の意味づけは学会でも非常に意見が割れており、
① 「メディアで間違ったイメージを植え付けられ、現実世界で被害を被ってしまうさま」:日本ことわざを守る会・日常国語専門学会の論述
② 「メディアで間違った認識をしている人間に対しアライグマが『しめしめ』と嗤っている状態を指す。転じて、自分が保護される存在であることを認知しており、そのうえで確信犯的に悪事を行う意識の持ちよう」:IPA・groupE(国際ことわざ原理協会の一部の過激分派)説
③ 「ラスカルは通常のあらいぐまではなく、自然でも稀にみる人になつく生態をもつ特殊なあらいぐまの種だった。例外的な存在をことわざに用いてはならない。すなわち、こんなことわざは存在しない」:不苦労先生ほか同派閥の説
の3つの説が現在でも喧々囂々の議論を行っている。
二「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当はわたくし二ノ宮優有がお受けいたします」
依「あ、これはこれはお忙しいところ申し訳ないんですけど、先日会員になったばかりで、今回初めての依頼をしたいのですが」
二「はじめてのご依頼ということですね。それでは会員様のお名前と会員番号をお願いいたします」
依「あ、はい。宮坂功治と申します。会員番号は3001番です」
二「かしこまりましたありがとうございます。では宮坂様、どのようなご依頼かお聞かせ願えますか?」
依「私の小学生の娘の通っている学校に、専門の先生を呼んでいただき、野生動物の危険性について講義をしてほしいのです」
二「宮坂様のお嬢様が通っていらっしゃる小学校に、専門の先生を呼び、野生動物の危険性について講義をさせるということですね。この講義というものは、全校生徒を対象にして行われるのでしょうか?それともお嬢様の学年のみ、でしょうか?」
依「講義を聞く範囲はどうでもいいのです。別に娘のクラスの授業のヒトコマでも構いません」
二「そのあたりの範囲は指定なさらない。お嬢様のクラスの授業のヒトコマでも構わないということですね。しかしながら、こと小学校におきまして宮坂様のお嬢様のクラスの授業だけそのような専門の先生の講義が授業内で行われる、というのはいかがなものでしょうか。教師のかたがたが不審に思いはしないでしょうか。野生動物の危険性をお嬢様だけににレクチャーするというのは、小学校というコミュニティで行う限りは比較的広範囲を対象にしなくてはいけないのではないでしょうか」
依「…うーん、そういうことですか。確かにそうなんですけど」
二「失礼しました、依頼について私が難癖をつけるつもりは全くないのですが、費用の差異が激しいと思いましたので申し上げました。例えばお嬢様に野生動物の危険性を説くとする。お嬢様だけが対象であるならば、なまじ専門の動物学者などを呼ばなくとも、そういうのに詳しい学生などでもよいでしょう。しかし、小学校内において、となりますとそこに教師たちの目が光るわけですから、一般人ではく本当に学者クラスを呼ばなければなりません。専門職派遣依頼については、スタッフ時給が非常に高くつくので確認をしたいのです」
依「そうですね、あまり高いと困ります」
二「極端な話、宮坂様に専門知識を把握していただき、お嬢様に教えてあげるだけ、なら依頼料など1万円かかりはしないでしょうが」
依「そういうわけにもいかないんです。娘はあらいぐまを飼いたいと言っていて、妻もそれに味方しています。こないだペットショップをのぞいてきたそうですから。けれど、私はあらいぐまの危険性というものは知っているつもりです。とても危険な動物だと言うことではないですか」
二「そのようですね。お嬢様がお怪我をなさる可能性はあるでしょう、こと、あらいぐまに関しては」
依「しかし、娘も妻もあらいぐまのラスカルに毒されており、私の言うことなど聞く耳を持ちません。犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うのです」
二「なるほど、お嬢様も奥様もラスカルに毒されているがため宮坂様のご意見を聞いてくれない、と。確かに、犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うことでしょう」
依「はい、犬猫ハムフェレとはわけが違うのです」
二「宮坂様、今は犬猫ハムフェレと言いたいだけではないでしょうか」
依「いいえ、そんなことはありません」
二「そうですか、それは失礼いたしました」
依「ですから、できるだけ安価で済ませるように、娘に、それなりに説得力のあるような方が講義をしてくれればと思いまして」
二「それでは宮坂様このような提案はいかがでしょうか。宮坂様は一度、奥様とお嬢様に促し、ペットショップに行ってあらいぐまが幾らなのか、どのように飼えば良いのか聞いてくるように言うのです。そのペットショップに動物学に造詣の深い弊社の専門スタッフを待機させておき、奥様やお嬢様の質問に対し、非常に批判的に返答させるのです。あらいぐまなど飼いたくない、と思わせる程度に。それが一番、ご要望に添えられ安価で済むと思うのですが」
依「あ、それはいいかもしれませんね。大丈夫でしょうか?」
二「依頼のフロー自体は単純なのですが、ペットショップの店長を抱き込む必要があるのでざっと見積もりをした限りは8万円ほどかかってしまうのですが」
依「うーん」
二「小学校に呼んでどうこうするよりは、よっぽど安全かつ安価に、即座に行えることでしょう」
依「わかりました。それでお願いします。放っておくと今にも買ってきそうですから、できるだけ急ぎで」
二「課長、うちの専門職スタッフで動物学者っていますか?」
課「聞いたことないなあ。人材育成課に聞いてみたら?」
二「あー」
二「比嘉中課長、すいません。専門職スタッフで動物学者はいませんでしょうか?」
比「動物学者?動物学者ねえ。植物学者はいるけど、動物学者はいないなあ。それっぽい人はいるけど」
二「うーん」
二「神楽坂、ちょっとお願いあんだけど、スタッフで動物学とか先行してる大学院生とかいないか?探してほしいんだ」
神「そおだねぇ。ちょっとひとりひとり連絡しないとわかんないなぁ。大学生で獣医学を先行してる、とかはいるかもしれないけど、あたしも全員のこと把握してるわけじゃないからなあ」
二「いつごろわかる?」
神「そんなすぐにはわかんないよ。見つかったら連絡するよ」
二「むー」
二「そんなこんなでミュージカル『あらいぐまデンジャリスタ』っていうのの台本を昨日徹夜して書いたから、あやちゃんは深く考えなくていいから、そこにあるあらいぐまの着ぐるみを着てほしい。柳田さんは申し訳ないけど恥をしのんで黄色い帽子をかぶってと赤いランドセルをしょってほしい。スカート短いのな。大丈夫、劇中で胸チラとかパンツが見えることはないから。じゃあ、予行練習はじめようか。神楽坂!演技指導たのむわ!」
あ「(;´∀`)に、二ノ宮さん?何でこんなことになっちゃってるんでしょうか?」
柳「…こんな恥辱的な依頼は今まででもはじめてです」
神「そこまで引っ張るほど面白いネタじゃないと思うんだけどなぁ」
あ「ノ( ;゚Д゚)ノぉわあ!!」
神「つーかまーえた」
あ「か、神楽坂さん?」
神「あららん。あやちゃんいいとこにいたねぇ。ちょっと時間あるかなあ」
あ「(`・ω・´;)な、なんでしょう?」
神「メイカ、おいで!あやちゃんみっけたよ。あのさーあやちゃん、あたしの耳に入るのが本当さっきだったからさぁ、どうもこないだ、うちの子をゆうさんが専属派遣依頼とか言っていじめまくったらしいって聞・い・た・からさぁー。ちょっとどうなってんのかなぁって思って。人材派遣課にゆうさんがいねぇからさー。どこにいんのかなぁって思ってさぁ、連れてってくれるかなあ、心当たり」
あ「(((((((( ;゚Д゚)))))))あ、あたしはちょっとその件につきましては詳しく存じ上げておりませんものでして」
神「はやく歩きな、こっちも長居してらんないからさぁー」
あ「あ、あー、うー」
神「わかんないならいいよぉ、あたしらで見つけるから、その間は人質になってもらおうかな」
あ「ぃぃぃぃぃぃぃぃいl《(;´Д`)》」
柳「神楽坂さん、たぶん、本当に居場所は知らないかと…」
神「いいんだよとっ捕まえときゃ。ゆうさんの行動パターンは読めてるかんね、この時間いないんだったら、どっかで派遣の現場でも行ってるんでしょ」
柳「そういうわけだから。それともどこにいるかわかるなら案内して。いえ、違うね。二ノ宮さんに電話して」
あ「…(;・`ェ・) 」
神「まったく、事前に言ってくれりゃー何一つ文句なんか言わないのによぉ」
柳「はやく電話してよ」
二「なんだよお前ら、現場の真っ最中なんだから邪魔すんなよ」
あ「二ノ宮さん!!ごめんなさい!!」
神「ゆうさんあのさー。先日なんか、うちのメイカが3日も現場行って、帰ってきたら3日も休んだわけだよ。聞いたら300万口っつーじゃない。そこまでなら文句言わないんだけどさぁ、聞いちゃったからさぁ。なんでさぁ、そうなの。なんで内容のこと何も言わないで仕事させんのかなぁ。別の理由があるんだろ?どうせゆうさんの気まぐれっつーか気分的なさぁ。さすがに1週間この子なしってのはそれなりにきっつかったんだぜ?」
二「あー悪かった。それは謝る。あたしの個人的な暴走だよ。詫び、なにすればいい?」
神「そういうの、もういらない。何が個人的な暴走だよ。なんだかんだ言って、いつも客観的な態度のようでその実、自分の後輩の方が大事で人様の後輩のことなんかどーだっていいのが伝わってくるわ、いい加減腹立ったね!ちょっと今日は戦線布告しにきた」
二「あのなぁ神楽坂、戦線布告もクソもな」
神「雷鳴の轟く麗かな初夏の友引、時は決した!今こそあたしの生涯のライバル二ノ宮優有、雌雄を決するときがきたようだね!さあメイカ、矢倉太鼓を用意するのよ!」
二「だwwwかwwwらwww何なんだよw何なんだお前wどういうキャラをもらってんだwww何が生涯のライバルだwwどうやって雌雄を決するんだよここでww何をしたら勝負として成り立つんだwwジャンケンかwあっちむいてホイかwいいか、あたしら部署が違うんだよ、それでどうやって勝負とかそういう発想になるんだよwwwあたしら電話を受けるほう、お前ら人を手配する方、それで何でライバル関係が成立すんだよwどうやって勝負すんだよwww言ってみろ」
あ「二ノ宮さん!さすがにメタにもほどがあります!話が進まないからつきあってあげてください!」
ヽ(♯ ・Д・)ノ┌┛ゲシッΣ(ノ `Д´)
柳「驚きましたね。神楽坂さんの生涯のライバルともあろう方がお逃げになるのですか」
二「逃げねえwww逃げねえよwwwどうやったらそういう発想に陥るww逃げても明日も仕事しなきゃいけないだろうがwww」
神「そうやって毎回毎回逃げるのね!?クッ、あの鋭利な刃の表象こと二ノ宮優有、ホスト通いをしなくなって以来本当にパワーダウンしたんだね!最近の隠遁生活が枷となったようね!ここまで腰抜けだとは思わなかったよ!」
二「逃wげwるwのwねwじゃねえwwwいい加減にしろお前、そういう口調する女は小説の世界でしか存在しないww何が腰抜けだwww現実世界の24の女はそんな単語使わねえよwww」
あ「二ノ宮さん!確かに言いたいことはわかるんですが、少しぐらい眼をつぶらないと無駄に行数が増えるだけなんです!そうだ、あたしもノリます!二ノ宮さん、これは人材派遣課と人材育成課の均衡を破る破滅的なクライシスです!さあ、ご一緒に」
(♯´_ゝ`)ノシ スパン )))Д`;)
神「ふん、行くよメイカ。もういい。こんな錆びついたナイフに用はない!人違いだったわ。ここにいるのはあたしの知ってる二ノ宮優有さんじゃない。そんなことがあるもんですか!ここにいる女は、ただの牙を抜かれた臆病者のフェレットだわ!」
柳「はい。課に戻りましょう」
二「臆病者のフェレットって言いたいだけだろwwwどこの漫画から拝借してきた表現だwwwさっさと消えろwww人違いでいいよ、もうww」
神「けれど覚えておくことね、ゆうさん。この借りは必ず返す。近いうちにあたしたちが巡り合ったあの場所で逢いましょう。そこがあなたの静岡(サイレントヒル)という名の墓標に変わるのよ」
二「迷走すんなwww失せろwww」
神「オールヴォワール、次の邂逅を楽しみにしているわ」
二「うぜえwwww」
あ「いやぁ、ここまでキャラが不安定な人は久しぶりに見ました」
二「感心すんなよww柳田さん、ちょっと。あたし、あなたがこういう、神楽坂まで巻き込んで揉め事を起こすような子だとは思えなかったんだけど。なんでこういうことになったの」
柳「いやあの。あたしはあの仕事で160万近く手に入ったので不満や遺恨は一切なかったんですけど。ついつい口が滑ってしまい神楽坂さんの耳に入ったが最後、あれやあれやと言う間にこのようなことになってしまい大変申し訳ございませんでした」
二「神楽坂にはブレーキがない。今後、あなたの背負ったものは大きいよ?」
柳「はい。肝に銘じます。ご無礼いたしました」
あ「えーと。二ノ宮さん、お疲れ様でした(´・ω・`) 」
二「ああああああああ面倒臭かったwww」
柳「もしもし。はい。ええ。うまく行きました。ええ」
あ「…」
柳「はい、はい。その通りにしました。はい。計画どおりです。はい」
あ「?」
柳「多少体は壊しましたけれど、これでKI-TSU-Eスタッフの頑健な課同士のつながりは断ったも同然です。人材派遣課の二ノ宮、人材育成課の神楽坂、このふたりの関係のバランスを壊した今、KI-TSU-NEスタッフの主軸は混乱状態は必死でしょう。これで私の役員の椅子は保障されましたよね?」
あ「(;゚Д゚)…」
柳「全く、面白いくらい簡単にことは進みましたよ。こんな産業スパイをしやすい会社は今までではじめてです。あとは数名、二ノ宮と神楽坂の息のかかった連中を排除してしまえばKI-TSU-NEスタッフの内部崩壊は約束されたようなものでしょう。ふふふふふ」
あ「(;゚Д゚)…!!」
柳「! お待ちください、後ほどかけなおします。あら。いたの?」
あ「や、柳田!?お前、今の電話…」
柳「ふっ、ばれてしまっては仕方がないけれどあなたごときにばれても何の問題もない。そう、あたしはKI-TSU-NEスタッフの体制を内部から壊滅させる役割を負った、組織のエージェントだったのよ!」
あ「な、なんだってー!!(; ・`д・´) 」
柳「しかしさすが二ノ宮優有の懐刀と言われた女ね、藍沢絢!今まで誰にも疑われなかったのに。まあここで難なく始末することは容易い。ねえ藍沢さん、あたしはあなたをそれなりに評価してる。今からでも遅くない、あたしサイドについて、一緒にKI-TSU-NEスタッフを潰すというのはいかが?もちろんタダとは言わない、あたしの下で一生の安全を約束し、望むものは何でも与えてあげるよ!」
あ「ふざけんな!あたしは二ノ宮さんを裏切るわけにゃいかないんだよ!あたしを舐めるな、誰がお前なんかの下で働くか!それなりにこっちは愛社精神ってーもんがあんだよ、許せねえ!柳田明佳、こいよ!今ここで決着つけてやる!」
柳「ふふん、軽く見られたもんだね。歳は同じでもあたしとあなたでは格が違う、あなたごとき、あたしに触れることもできない!さあ、かかっておいで!」
あ「二ノ宮さん、あたしを見守ってください。今からこのクソ女と戦います!あなたはあたしが守ります!」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
あ「ZZZZZ うーんなんて卑怯な…っ!でも負けるもんか!あたしが、あたしが…ZZZZZZZZZ あいたたたた痛い痛いお前そこは、ZZZZZZZZ。。(o_ _)o」
二「という感じの夢を見てると思うのですが、とりあえず今から叩き起こすのでぎったんぎったんにする許可だけもらえないっすか、最低でも」
課「まさかの、夢オチ…www」
あ「ヘ(゚∀゚ヘ)アハハハハ八八ノヽノヽノヽノ\/\」
山「なんか電話の向こうであやちゃんの発狂寸前の笑い声が聞こえんだけど」
二「まあ簡単に言うと前編参照、あれあれどれどれこうなってそしたらぴしゃっときてイエーイ。人材育成課の新卒が3日、食事抜きで監禁されたのが本当に楽しくてたまらないらしい。ここまで喜ぶとは思わなかった」
山「おまwww」
二「まあ何だろうな。あたしもちょっと虫の居所が悪くてさ。人材育成課の新卒の態度にちょっとムカついたのと、そのあと課長に怒られたからさ。ついやっちゃったんだ」
山「お前、神楽坂大丈夫か?んなことして今頃どんなことになってんだよww」
二「いンや。実質上300万強にはなったわけだから、あたしは余裕で目標ノルマ大幅に越せたし、神楽坂も何も言ってきてないな。何しろ300万だからね。あとは…その新卒の子、かなり根性あるわ。訴えられる覚悟で連れて行ったけど、特に何もない。まあそのあと体調不良で3日は休んだみたいだけどね」
山「いいけどさ、とは言えないなw一歩間違うと犯罪だからな。わかってんのか?」
二「ああ、ちょっと今更ながら反省してるけど。まあ、あやちゃんの味方だからな、あたしは。人材育成課の新卒の味方ではないよ。どんだけ正しいことを言っててもね」
山「うーん。なるほどね…ちょっと話変わるんだけど、今、そっちでは社則をしっかり遵守しようとする流れになっていると。例えばあれか?いわゆる社則に触れる依頼を専門に受け持つ部署ができたら、今回のようなトラブルはなくなるか?」
二「別にトラブってないよ。トラブる可能性があったってだけ」
山「あーいいわかったわかった」
二「そうい部署ができたらって、できねえよ。社則の届く範囲じゃあ」
山「わかったわかった。あとでそっち行くよ。ちょっと考えがある」
二「別に来てもいいけど、あんたちゃんと仕事してんの?」
山「余計なお世話。俺も少しは仕事のことで考えてんだぜ?」
二「あー。あんたの考えは癖があるからな…」
(人材育成課)
柳「!」
あ「(・∀・)!よー、おはよう」
柳「おはよう。何その顔。下品だよ」
あ「うるさいな。なーんだちゃんと出勤してんじゃんって思って」
柳「そりゃ体調なおったら出社するよ。何の用。派遣依頼書受け取ってほしいならさっさと出してくれる?」
あ「これやって」
柳「…」
あ「なに?何か問題でもあんの?」
柳「ないよ。確認した。スタッフ手配しとくからもういいよ」
あ「…」
柳「なに」
あ「歯ごたえねーなーって思って。まだ弱ってんじゃねえ?」
柳「本調子じゃないかもね。3日で300万の依頼なんてやって響かないわけないでしょ。早く行ってくれるかなあ。そこまで暇じゃないんだよ。あとひとつだけ言っておく。酒臭い。おっさんみたい」
あ「同期の飲みってもんもあるだろ(*`д´)」
柳「行きすぎなんだよ。同期の飲みってのはグループごとに行われるもんでしょ。なんで全部参加してんの。そんなにかっこいい男の人、いないよ?」
あ「おいちょっと待て、人が男に飢えてるみたいな言い方しやがって、結局全然弱ってないよな。へらず口ばっか」
柳「…あたしを自分でどうにかした、と思わない方がいい。あなたはいつも他力本願だから」
あ「…o(`Д´*)o」
柳「はやく戻んなよ」
あ「すません(#ToT)」
二「こう、あれだな。人材派遣課の弱点。挑発に乗りやすすぎる。いっつもあたしらが最終的にケンカふっかけたほうになってる。原因は半々なんだけどな。営業部長が止めに入ったとき、ぶちギレてんのがいつも課長だからな。そういう風に見られるのがダメだ、もう。いいかいあやちゃん。柳田さんとしゃべることがあっても、何も話しかけるな。向こうの話を深く聞こうと思うな。挑発に乗る前にその場から帰る。いいね。あたしと約束して」
あ「はい、約束はできます。あたしだってあんなのと深入りして話す気なんてないです。仕事の話だけしかしません、これからは」
二「それでいいそれでいい。それをわかってくれれば。それがオトナってやつなのだ」
あ「はいっ」
二「おや。あれ、柳田さんじゃね?」
あ「え?」
二「あの感じは。ああ、やっぱそうだ。一緒にいるの、彼氏かな?」
あ「…(;゚д゚)」
二「あやちゃん?」
_, ._
…(;゚ Д゚)
二「おいwwwちょwww」
(廊下にて)
神「あっ」
二「おっ」
あ「( ゚_゚)」
神「ゆうさんおはよーございます、あやちゃんも」
二「おぅ、おはよう。いっぱい連れてスタッフ研修か?」
神「そーですよー。あ、この子たち全員新卒ね」
二「噂の優秀な新卒な」
神「みんなごあいさつして!人材派遣課の課長代行の二ノ宮さんだよ!整列!!」
ぴしっ
あ「Σ (゚Д゚;)」
全員「おはようございます!!!!」
二「…」
神「なおれ」
二「…その、部下の掌握力は本当に見習いたいね」
神「いーえーとんでもない。最近の若い子には礼節から習わせないとダメだからね。あ、そうだ、そうだそうだ。メイカ!ちょっと!」
柳「はい」
神「メイカ、先日ご迷惑をおかけした謝罪をゆうさんとあやちゃんにすること」
二「…いや、いいよ。どっちかっていうとこっちが騒いだだけっつーか」
柳「このたびは私の態度のため人材派遣課に失礼をしてしまい大変申し訳ありませんでした」
あ「…(#゚д゚メ)」
二「こちらこそすいませんでした。ほら、頭下げろ」
あ「(_ _ ")」
神「これで後腐れなしね。いいね、これでいいよね」
二「まあ確執が消えたとは思わないけど…今日はこれでいいんじゃないのか」
神「おっけー、じゃあみんな行くよ。軽く整列!」
全員「お疲れさまでしたー!!」
神「なおれ」
あ「(゚Д゚;)…」
神「じゃーねーゆうさんおつかれー。来週あたし、そっち行くからよろしくねー」
二「あー。お疲れー」
あ「(゚Д゚;)」
二「あの統率力ばかりは真似できないな、大したもんだ」
俺用。最終更新日5/12
ほとんど完成版。あとひとり。
二ノ宮優有(人材派遣課 課長代行)
YU NINOMIYA
26歳
二つ名…最強のオペレーター、腹黒天使、お茶目でキュートな女の子(自称)
趣味…旅行、変な仕事の現場派遣に行くこと
性格…非常に難しい。初登場時と比べ随分丸くなったというか攻撃的でなくなった。協調性を重んじるが、神楽坂かなでの挑発で一瞬でキレる。常識人だが、常識人ではない。二律背反の女。
その他…顔が毎回違う、去年までホストにはまってたので高給取りだが貯金は少ない(このへんを突っつくと激昂する)。彼氏はその、はまってた元ホストであるという設定になってしまった。どうも面倒くさくて。
藍沢絢(人材派遣課 新入社員)
AYA AIZAWA
22歳
あだ名…あやちゃん
趣味…月9ドラマの鑑賞
性格…微妙に少女趣味、微妙にシンデレラコンプレックス、微妙にレズ
その他…入社2カ月め、仕事がどんどんできるようになったのと比例してどんどん口が悪くなっている。また、今後二ノ宮優有に次いで顔が毎回違うようになるのではないかと懸念している。柳田明佳と非常に仲が悪い。それは、本能的に。
猪元由正(人材派遣課 課長)
YOSHIMASA INOMOTO
33歳
課外評判…沸点45度、激情の恵比須顔、デキる男/キレる男
趣味…競輪鑑賞
性格…愛社精神たっぷりの激情家。3次関数なみに感情の起伏が激しい。
その他…KI-TSU-NEスタッフを利用し悪事を目論む悪者に鉄槌を下すという内密業務を行っている。比嘉中課長とは非常に仲が悪いが、どのよな原因で衝突したとしても傍目には一方的にケンカを売っているようにしか見えない。
山瀬幸輔(元人材派遣課社員 退職→???)
KOUSUKE YAMASE
29歳
二つ名…幻想の住民、偽精神科医、エセセラピスト
趣味…めがねコレクション、MAD動画作成
性格…のらりくらり。超マイペース。精神に難をきたしている顧客に対しての営業能力は二ノ宮優有を大きく上回る。
その他…退社後、仙台で事業を立ち上げた。暇を見つけては人材派遣課に遊びに来るので、たぶん寂しいのだと思う。
赤井瞳(KI-TSU-NEスタッフ会員 ロックバンドDimMasterのプロデューサー兼ドラムダンサー)
Ririe / HITOMI AKAI
28歳と29か月(自称)
芸名…リリィ
趣味…演奏したことのない楽器の練習
性格…ヒトラーのような独裁者風味。楽曲の売り方と倫理は別、という考え方。
その他…キているPVの脚本を思いついてはKI-TSU-NEスタッフに依頼し撮影している。二ノ宮優有を信頼し、友人関係でもある。
ちなみにもちろん遠野文小説「Bent Love」のリリィ(マゼンタレディ)と同一人物。しかし「もちろん」と言ってもそれはもう誰もわからない。
芝浦耀子(経理課 主任)
YOKO SHIBAURA
35歳
課外評判…貴重な一般人
趣味…ワイン全般
性格…KI-TSU-NEスタッフの良心。面倒見がよく落ち着き払っており、このシリーズでも数少ない常識人。
ボケでもツッコミでもない。客観的な視点で常に物事を考えている。クセの強い人材派遣課&人材育成課社員の相談役として重宝されている。
その他…既婚。人材派遣課と人材育成課がケンカしないように見張っていることが多い。経理なのに。
神楽坂かなで(人材育成課 課長代行)
KANADE KAGURAZAKA
24歳
課外評判…最年少課長代行、イケイケの象徴、二ノ宮優有の生永遠のライバル(だっておww)
趣味…夜遊び全般
性格…一種の完璧超人のようなもの。だいたい何でもそつなくこなす相当の自信家で、口調の刺々しさを自在に操る(空気が読めないのではなく、人がどれだけの言い方でどのように機嫌が運動するかを熟知している)
その他…二ノ宮優有にかなりの対抗心を燃やしている。口先が達者なので、二ノ宮優有へのコンプレックスは周りには見えない。
比嘉中悟司(人材育成課 課長)
SATOSHI HIGANAKA
37歳
見た目…ものっそいラブリー
趣味…主に放電と語る
性格…精鋭ぞろいの人材育成課のまとめ役。猪元課長と非常に仲が悪い。
飄々としたたたずまいだが、そのキュートな瞳の奥には相反する冷静な判断力と知性を備えている。かなりの策略家。
その他…脚が短いのがコンプレックス。でも誰もそんなことは思っていない。
柳田明佳(人材育成課 新入社員)
MEIKA YANAGIDA
22歳
第一印象…かわいい二ノ宮、ロリ二ノ宮、アイシィガール
趣味…ガーデニング、フラワーアレンジメント
性格…二ノ宮優有によく似ているが、やや稚拙で挑発的。一見冷たそうに見えるが自分が好きでない相手には本当に冷たい。KI-TSU-NEスタッフ歴は2年強、そこらの社員より会社の事情に詳しい。アンチ人材派遣課。
その他…この手の女は清純派を装い、隠して水商売や風俗をやっている。とあやちゃんがデマを流している。
脇A「それじゃここから1時半まで休憩時間にしますね。食事して来てください。このフロア内は禁煙ですから、喫煙場所を守ってください。じゃー休憩」
比「ちょ、ちょ、柳田さん話あるからちょっと来て」
柳「はい?」
あ「(゚Д゚#) …」
LULULULULULU
脇A「はい第1会議室です…はい?はい。すいません比嘉中課長、営業部長からお電話です」
比「え。あー。あー。わかった。ありがとう…」
あ「おい、お前」
柳「なに?」
あ「自分も新入社員じゃねえかよ!!偉っそうな口聞きやがって舐めてんの!?」
柳「別にもうその話どうでもよくない?」
あ「よくない!あたしはあのあと二ノ宮さんにガンガンに怒られたんだよ!ヽ( `Д)ノ」
柳「あたしはあたしであのあと神楽坂さんに怒られて反省したんだから痛み分けじゃないかなあ、蒸し返されるのも気分が悪いもんだよ」
あ「いや、お前、お前。ことの発端、お前だから」
柳「本当にそうかな。あたしとしては…そっちが意味不明な依頼を持ってくるのが、悪いと思う…」
あ「どおいうこと?あたしらの仕事ガンシカト決め込むのか?あたしはあたしらの仕事やってんのに、あんたはあんたらの仕事しないのかよ(゚Д゚#)」
柳「アルバイトの離職率という観点からものごとを見たときに」
あ「あ?」
柳「そっちの持ってくる仕事を断る権利は、あたしたちは持っている」
あ「んなこと言ってたら仕事になんないだろぉ!?」
ざわざわざわざわ
柳「あなたさぁ、やらされる方の気持ちを考えたことがないなあ。あたしはずっと、ずーっとずーっと、そっちが持ってくる絶望的な依頼をバイトの時から何度もこなしてきたんだよ。どんなバカげた内容でも。あたしにそれを断る権利を持っていなかった。あたしの身の回りはみんな、みーんな耐えられずに辞めてった。社則にあるのに。スタッフの退職をまねく依頼を強制してはならないって。あたしには行使力がなかったから。いい。あたしは研修が終わったら、今のこの現状、人材派遣課が持ってきた仕事を問答無用で受けなくちゃいけないこの流れを真っ先になおす。神楽坂さんもそれで了解してるからね。全体の10%を占める頭のおかしい人たちの依頼のために、バイトの退職率3割を占めさせるわけにはいかないよ。長期的に見たら、今のままにしておいたら求人コストの方が上なんだよ、そういうのを受ける依頼料より」
あ「あんだと?お前、バイトあがりだか何だか知らねえけどあたしらの課の予算知ってて言ってんのかよ、選んでる場合じゃないのに、どんな仕事でもできるだけ受けなきゃいけないのに」
柳「あなたたちのノルマなんか興味ない。あたしたちには、あたしたちが教育するスタッフを守る義務があるね。考えてみれば。電話段階でそういう仕事を受けなくてすむようになるんだよ。そっちとしてもいい条件じゃないの」
あ「もぉわかった。もぉいい。噛みあわない。だめだ。噛みあわない。お前とは(*`Д´)」
柳「そうだね。噛みあわないね。あなたとは。考え方の相違っていうのはこういうことなんだろうね」
ぷいっ
あ「ねー誰か一緒にごはん行こ…」
柳「目的もなく二ノ宮さんの金魚のフンしてるから感覚がマヒしてるんじゃないの?少しは自分のしてることを疑った方がいいよ」
あ「ふざけんなお前二ノ宮さん馬鹿にしてんのか!?」
柳「馬鹿にはしていない。ああいう凄い人のそばにいると、自分のなかの倫理が崩れてしまうこともある」
あ「何がわかんだよ!Σ (゚Д゚♯)」
柳「あたしは神楽坂さんを尊敬してるけど、盲信はしない。だから自分の主張は、曲げない。あなたとは、違う」
あ「あー!?」
二「まあ↑みたいな主張の子、みたいですね」
芝「二ノ宮さん、メタ発言はよくないわ」
二「芝さんとしてはどっちが正しいですか?」
芝「業績的責務という点ではあやちゃんのほうが会社的に好かれはするんだけど…社則的に、という点と将来的利益、という観点では人材育成課の新卒ちゃんのほうが『正しい』ね。なおかつ。その子はバイト上がりという立場で、しかも今までの常識を覆そうとしてる、神楽坂さんが了解しているというのは、人材育成課はそういうボトムアップの意見が好まれるからよ。自立してる証拠だから」
二「そうなんすよね。なかなか、2か月そこらで神楽坂から自立してる新入社員なんて、たぶん初めてですよ」
芝「あやちゃんは二ノ宮さんを大好きだからね。自己主張という点で、本質的に合わないんだろうね」
二「うーん。まあねえ。べったりっすからねえ。どっちがいいとはあたしには言えないけど」
芝「実際に現実離れしすぎた依頼を断っていいようになったら、どうする?」
二「あたしたちは楽になりますけど、そのぶん予算を下げてくれるような便宜をもらわないと反対ですよ」
芝「そう簡単に実現はしないだろうけど」
二「そりゃそうですよ。アレな依頼ぜんぶ断ってたら、そもそもこのシリーズのネタがなくなって書けなくなるじゃないか」
芝「二ノ宮さん、メタ発言はよくないわ」
脇A「ではここでひっかけ問題。受けた依頼について、依頼に対する達成率が半分だったとします。この場合、依頼費用はどのように変遷してくか、誰かわかりますか?」
ざわざわざわざわ
脇A「人材派遣課、コストのことは教わった?」
あ「あ?あ、あ、はい。結果遂行度が半分になります。依頼料も半分です…か?」
脇A「ぶー。残念。でも70点。誰かわかる?」
柳「はい。結果遂行度は私たちが決めるものではなく顧客が決めるものです。ですので、安易に半分では社則的に問題になります。顧客の方はその半分の実績の依頼でも80%満足していただくかもしれませんし、20%しか満足しないかもしれません。事前打ち合わせで複数の着地点を私たちが設定し、納得いただいてから依頼内容を遂行します」
脇A「ぴんぽーん。さすが柳田さん。最近はそういうのも有名無実化してるから、改善させていきたいね」
_, ._
…(;゚ Д゚)
比「…」
脇C「じゃあそれに関連して質問です。これも社則としてありますが実際そのようになされてないことですよね。クライアントが望んでいる状態に当社のスタッフがイメージがわかない場合、一般マスメディアの映像などをモデルとして使用してそれを行ったとします。その場合の著作権の権利問題について、詳しく教えてください」
脇A「あーそれは難しい話ですね。話すとだいぶ長くなるんですけど…藍沢さん、このへん、猪元課長とかはどう対処してます?」
あ「え…ええと。ちょっとあたしはそういうのを見たことがなくて」
柳「よければ私が端的に説明しましょうか?著作権の問題は、クライアントがその映画なりドラマなりを自分の知識として認識してる場合にしか発生しません。この辺は説明しだすと確かに長すぎるので置いといてください。後日、クライアントが『こないだのあれ、最近気づいたんですけどなんとかってドラマのワンシーンでしたよね』って言われたら、真摯に受け止め、そのご意見を受け次第すぐに著作権協会に申請をする必要があります。向こうもKI-TSU-NEスタッフ用の書式を持っていますけど、たいてい提出だけで済みます。費用は依頼料の3%です」
脇A「素晴らしい。わかりやすいし合ってます」
お―――――
脇C「さすが柳田さんだねー」
脇E「すごーい」
_, ._
…(;゚ Д゚)
比「…」
これはよくないな。どうしても柳田さんのオンステージだ。確かに社則について一番詳しいからこうなるのは当然なんだけど…
あやちゃんの知識は二ノ宮さんから直接教わっただろうことだから、どうしても社則外の知識に偏ってる。
知識的にはあやちゃんも大したもんなんだが…
このままだと気分を悪くして返しちゃうな。
ちょっと目立たせてあげたいな。
どうしよう。
…
比「ああそうだ。ちょっと私からもいいですか。社則ということなら。みなさんで考えてください。これは、私が人材派遣課から受け取った依頼です。『自分はヴァイオリニストなんだが、仕事に集中しすぎて恋人に別れ話を持ちかけられてしまった。確かにヴァイオリンは大切だが、彼女のことの方がもっと大切である、と。ヴァイオリンを失ってもいいが彼女は失いたくない。しかし今まで仕事一辺倒で生きてきたから、そんなことは信じてもらえない。数名のスタッフを依頼し、たちの悪そうな連中に絡まれた彼女を自分がヴァイオリンを武器とし助ける、という寸劇を行いたい。ヴァイオリンは自分の愛器で構わない。もちろん傷がつかなければそれに越したことはないけど』という。さて、この依頼はどうなったでしょうか」
あ「あ、その話…!」
柳「論外です。楽器に対する保障ができませんし、そもそも依頼主は当社スタッフに怪我をさせる可能性もある。比嘉中課長ならお断りしたでしょう?」
あ「ちょ、ちょっと待ってください、それ…」
柳「いいですか。スタッフの人権が守られないと話が進まないんです。これが、ヴァイオリンを振り回す方も当社スタッフだと言うならそれなりの訓練をした人を手配することもできますが、今比嘉中課長が仰った話では、依頼主がそのままヴァイオリンを振り回さなくてはいけないんです。どんな危険か承知ですか?」
あ「ちょ…」
柳「みなさんこれ、聞いてください。どんな依頼でも受けるのがわが社のモットーっていう考え方はもう終わっていいと思うんです。助長する。間違いなく。今後重病人や死人が出たらどうしますか。精神病にかかってしまったりとか。規範を習ってほしいんです。上司から言われたことだけじゃなくて。特に人材派遣課なんか、社則を一番無視してるわけだから」
あ「おま、ちょっと待て!」
比「が、その仕事は成立し、ちゃんと費用が発生しました」
柳「…え?」
比「私も断ったんですが、人材派遣課の二ノ宮さんが再度同じ企画書を書きなおして持ってきました。ひとつ、ヴァイオリンは依頼主が持っている物の複製を作成する。ふたつ、スタッフは当社専属の特殊業務手当のつくスタッフを使用する。二ノ宮さんは人脈を利用し、知人のアクションスタントマンを数名、当社に臨時スタッフで登録しました。彼らは元ショッカーの類の人たちで、クライアントがどんなに乱雑にヴァイオリンを振り回してもかわし、さも素人目には本当に鈍器が激突したかのようにふるまったらしいですよ。素晴らしいじゃないですか。個人の人脈を活用して、一度突っぱねられた依頼を私に持ってきたんです。そして、予定を上回る依頼料を獲得しました。これは、社則に縛られててはできない発想なのです」
柳「…」
比「感動した人、同じ人材派遣課のあやちゃんに拍手をしたげて。彼女はその二ノ宮さんから直接教育されてる、分身みたいな子だからねー」
パチパチパチパチパチパチ
柳「…課長、どちらの味方なんです」
比「さあねー。困ってる方の味方かな。全員に見せ場を上げるのが、俺は好きなんだよー」
比「ん?」
あ「ほら正しかったー!!ほら正しかった―!!あたしらが正しかったー!!見たことか―!!」
比「ちょwww」
ざわざわざわざわざわ
柳「うわ、これは…引くわー」
あ「うるせえバカ女、社則に縛られた結果がこれだよ!お前がどんだけ知識自慢厨か知らないけどなー!あたしらが正しいんだ!あたしらが正義なんだ、何でお前ごときに仕事を断る権利があんだよ!あー!?どぉせ課長も二ノ宮さんも比嘉中課長と神楽坂さんと仲悪いんだ、今更あたしがお前と仲悪くなったって何も変わりゃしねーよ!!これからどんな依頼でも受けてやる、どんな頭のおかしい依頼でもお前に持ってってやる、意地でもだ!今から覚悟しやがれ、あたしと出会ったことを今から後悔させてやるからな!!あはははははははは\(o ̄▽ ̄o)/ 」
ざわざわざわざわ
比「…はっはっはっは柳田さんこりゃー一本っ取られたね。ちょっと誰か、すぐ人材派遣課に電話して。収拾つかなくなるから」
柳「…ちょっと、ひどい。ウザいですね」
つかつかつかつかつか
ガチャ
二「失礼いたします」
比「あ、二ノ宮さん!」
あ「二ノ宮さん!二ノ宮さん!やりました!あたしは人材育成課に勝ちました!!にゃー!」
∧_∧
(♯・∀・) | |ドバキッ
と ) | |
Y /ノ 人
/ ) < >__Λ∩
_/し' //.V`Д´)/
(_フ彡 /
柳「…」
比「…」
ざわざわざわざわざわざわ
二「ご無礼をば致しまして申し訳ございません。ぺこり」
ガチャ
バタン
比「…」
柳「ないわー」
二「あやちゃん。こないだあやちゃんが受けた依頼番号1000023548の、スタッフの方で失敗したらしくてクライアントが『金払わない』って言ってるんだよ」
あ「えっ!…うわー、あの依頼かぁ…なんかおかしいとは思ってたんですよねぇ(´A`)」
二「いいよいいよ。あやちゃんが悪いわけじゃないと思うから。派遣依頼費の事故報告書が1枚あるから、人材育成課に届けてきて。書面はあたしが作ったから」
あ「はあ。事故報告書って何ですか?(・x・)」
二「『金払わない』系の場合についてはそれ用の報告書を提出しないといけないの。うちのハンコと人材育成課のハンコと営業部長のハンコの順番に必要だから、人材育成課に渡しに行ってほしいんだ」
あ「あ、はい。わかりました。行ってきます。渡す相手はどちらに」
二「神楽坂に渡せばいいよ。いなかったら、杉田ってのか南部ってのがいるけど、まあ偉そうなやつに『事故報告書お願いします』って言えばいいよ。で、どういう感じで電話を受けたのかとか聞かれるだろうからちゃんと答えてね。説明できるよね?」
あ「はい。覚えてますから説明はできます。神楽坂さんですね。わかりました。行ってきます」
二「よろしくー」
あ「あのーすいません、神楽坂さんいらっしゃいますか?人材派遣課の藍沢です」
脇役「神楽坂さんは出てますねー。事故報告書ならあそこのデスクの方に渡してください」
あ「はーい(*゚ー゚)」
?「…」
あ「あのーすいません、人材派遣課の藍沢と言いますけど、事故報告書をお願いしていいですか?」
?「…」
あ「あのー(´・∀・`)」
ドナルド狩りを行いたい』とのことなんですが、この方、会員を装ったうちの社長ですよね?(´・ω・`)」課「ちょっと次の依頼、普通の依頼で、必要なスタッフが少数だったら、あやちゃん連れて現場に行ってくれ」
二「現場?何でですか。オペレーター業務でしょ、あたしたちの仕事は」
課「このへん話すと長くなるんだけど、人材育成課のほうで新入社員が4人入って教育担当としてやってるわけだ」
二「あー」
課「去年もそうだったけど新入社員がスタッフの教育に携わるとこっちに回ってくるクレームが増えるじゃない。で、あいつらって『新入社員を教育しながらスタッフ育成をしているため、多少の不備は生じます』とか言ってきてうっとうしいじゃない。あれは本来教育すべき連中が4月、5月にサボる口実だと思うんだよな」
二「まあ、言ってきますね。でも最終的には去年もそうだったけど全部向こうのせいになるんだからそこまで問題じゃないっつーか」
課「それだけじゃ気が収まらない。今年はこっちから釘を刺しておきたいんだよ。上に、明確に人材育成課だけの問題だってことを早めに知らせたいからな、現場に社員をこっちから投入して成功させて、あいつらのプライドを刺激すればいい。違う課の新入社員がわざわざ出向くほど、この時期の人材育成課は信用されてないってことになるからね」
二「う~ん…そうなんですよね。けど、それは比嘉中課長と神楽坂の責任でしょう。あやちゃんが現場に行くのは違わないっすか?うちと向こうがケンカしても」
課「それだけじゃないよ。それだけだったらあやちゃんでなくて、僕や二ノ宮さんが行けば済む話だ。けど、二ノ宮さんが現場に行くときって好奇心とか、依頼料とは別途に出るご祝儀目当てで行くでしょう」
二「ん~。否定はしません」
課「ああいうのはもう会社としてよくないからやめようって。その辺のルール決めを考査するために何回か、社員がスタッフとして現場に行って、その賃金はどうなるのかを明確に定めようって重役会議で上がって、意見を回収するため今月は何人か現場経験のない社員にスタッフとして現場を回ってもらおう、それで意見を募ろうってことになった」
二「でも、それは明確に決めてないから直接現場に行きたいって気持ちになるんであって」
課「それだ。それが問題だ。その最たる例が山瀬だ。あいつのカウンセリングとやらは、辞めたからいいけどいずれ問題になってた。勝手に会いましょうって言って会って、額を決めるのは他の誰でもないあいつだったんだもの。費用は誰もが納得いく明確なルールを作ること。別に締め付けようってだけじゃないよ。二ノ宮さん、直接現場に行ったあと手続きを面倒くさがって賃金をもらわないでしょう。そこんとこもちゃんと給与に反映されるようになるから、協力して」
二「あー。はー。わかりました」
二「そんなこんなで次の依頼の電話、現場に直で行くことに」
あ「 (・`ω・´) すごく納得いかない話です」
二「まあなあ」
あ「人材派遣課なら現場入る必要はまったくないって面接のときに言われたんですけど!どうして人材育成課の問題にあたしたちが立ち入んなきゃいけないんですか?課長が人材育成課に行って怒ってくれば解決するもんじゃないんですか?」
二「向こうの比嘉中課長がまた、自分より上の指摘にしか耳を貸さない人だからね。ちょっと搦め手にもほどがあるにせよ、やり方としてはあながち間違いではないかな」
あ「うちの課長って向こうの課長と仲良くないんですか?」
二「性格が真逆だな。仲が悪いかって言うと、まあそうなのかもしれない」
あ「二ノ宮さんと神楽坂さんも仲よくないですよね」
課「はい、お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、猪元由正が承ります」
あ「…今の電話の音、なんですか?」
二「あー、あれは課長専用電話の」
あ「課長専用?だから電話が2台あるんですか、あそこのデスク」
二「そうそう。あれは人材派遣課の課長しか出ちゃいけない電話。あそこにかかってくるのは、あたしも詳しくは知らないけど法人の高額すぎる依頼とか、医療系、宗教系、警察系、学会系のあたしらには相手できない依頼が来るらしい」
あ「それってすごいですね、二ノ宮さんも出たことないんですか?」
二「ないなあ。禁止されてるから。幸い、月1回鳴る程度の世界なもんだから、課長が休みのときにかかってきたことはないねえ。まあ出たら怒られるから出ないけどさ」
あ「なるほどー」
二「全然成立しないらしいけどね。2、300万クラスの依頼が来るけど、そんなの月1で成立してたら課長の月間の業績はとんでもない額になってるよ。部長クラスの」
あ「2、300万!?」
二「まあ世の中にはそういう依頼をする人もいるってことだよ」
会「恐れ入ります、私は先週にそちらで会員登録を済ませた者です。会員番号は2668番。山本敬蔵と申します」
課「会員登録いただき誠にありがとうございます山本様。軽い人材依頼のご説明をいたしましょうか?」
会「いえ、資料は熟読しましたので大丈夫です。私もあまり時間がある方ではないので、すぐに依頼をお願いしたいのです」
課「かしこまりました」
会「で、それなんですが、あなたは臓器提供意思表示カードをご存じですかな」
課「いわゆるドナーカードのことですね」
会「はい。その通りです。そして私はドナーカードを所持しており、すべての臓器提供にマルをつけているのです」
課「ふむ」
会「ですから、私は死後に全ての臓器を医療機関に委ねる覚悟があるのです。しかし、私の家族がそれに反対しているのです」
課「ふむ。臓器提供意思をご家族が理解しておられないのですか。現在のドナーカードの現状を見ますと、失礼な話ですが山本様の死後に臓器提供はなされず、そのまま火葬されてしまうでしょうね」
会「そうなのです。どう思いますか。例えて言うならこれは遺言状を破棄されるようなものです。今のところ、私の甥ただ一人だけが私に賛同してくれています。しかしそれでは何の意味もないのです」
課「そうですね。奥様やご子息が反対していれば、殆ど意味はない。さて、つまり山本様のご依頼の要旨とは、それは?」
会「誰にもわからない密室と十分な医療器材、口の堅い医師をひとり、準備していただきたいのです」
課「…なるほど。だいたい理解できました」
会「お察しの通りです。正式な医師免許を持っている者、同意者としての私の甥がいれば私の望みは成就します。さらにそのときに臓器提供を受けるクライアントがいれば完璧です。いかがですか。どうか私の真意をーッ!依頼料は500万お出しいたします!」
課「あなたはまさか…先ほど時間がないと仰いましたが…」
会「はい…末期の肝臓癌です。もはや余命幾許もありません。今も病床で電話をしています。しかし!肝臓以外の臓器は!」
課「了承いたしました。このご依頼、お受けいたしましょう。まず、山本様の甥御さんにお会いしたいと思います」
会「それと、これは補足なのですが―」
課「はい?」
会「これが実現するだけでも私は十分です。しかし甥にも要望があるのでお伝えしたいのです。甥は、私のような、臓器移植を親族に反対される人たちのため、それについての記録を取りたいと言っているのです」
課「記録を?取りたい?」
会「はい、そして私の死後にそれを公表し、社会に公表したいと言っています」
課「記録…医師だけでは、不十分だと。例えば、カメラマンのような?」
会「恐らく。私は構いません。どうか甥の話も聞いてやってください」
課「かしこまりましたが…山本様、少しだけ会員情報の確認をしたいのですがよろしいでしょうか?」
会「どうぞ、構いません」
課「山本様のご家族で中世日本史を専門とした大学教授をしていらっしゃるのが、甥御さんでしょうか?そのような略歴が手元にございます」
会「はい。甥の片山裕太郎は大学で日本史と美術を専門にしています」
課「ふむ。山本様ご家族はこちらに在住しているが甥御さんは京都にお住まいである、と…中世日本史上の美術といえば嵯峨天皇とかですか」
会「いえ、私はそちらにくわしいわけでは…」
課「檀林皇后の絵は有名ですからねえ」
会「はい?檀林皇后とは一体何のことでしょう?」
課「失礼いたしました。では、細かい打ち合わせを…」
(3週間後)
LULULULULULULU
課「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当は私、猪元由正が承ります」
甥「お世話になっております、私は先日お会いしました、山本の甥の片山です」
課「片山様。先日はどうも。叔父様のご容体はいかがでしょうか」
甥「はい、昨日、延命の甲斐なく亡くなりました。ですので、すぐに叔父の遺言どおりにしたいと思います。ですので、さっそく準備を…」
課「準備をするのですね。準備を。では、すぐに致しましょうwwww」
甥「? どうしたのですか?なぜ笑って」
課「自作自演ごくろうさんw」
甥「何ですか!叔父が死んだというのにその笑い方は!!どうなっているのですか!!」
課「まあまあ、そういきり立つこともないでしょう。そもそも寿命を縮めたのはあなたに他ならない」
甥「は!?」
課「余計なことを依頼し墓穴を掘った本当の会員。記録に残したいと言ってしまったのがあなたの過ちですな。カメラマンを依頼したかったのか。はたまた画家が欲しかったのか、そればかりはご自分で用意するべきではなかったのですか」
甥「な、なんのことを」
課「実際、私が用意した医師はわが社から依頼料を受け取り、しかもあなたから口止めの買収金を受け取った上に結局何の仕事もなかったのだからもの言わず、足はつかない。それはその通りだ。臓器移植の必要性はそこになかったからだ。あなたが必要なのはドナーカード記入など考えられない死にかけの老人が一人と、その死後を克明に記録する、ある程度精神の据わっているというか、気のふれた…カメラマンか画家。そしてその記録を現在の闇美術市場に持ち出せば好事家が大枚をはたいて買い取ることは必死でしょうな」
甥「な、な、何を言っているかわかりませんが…」
課「それはわが社への依頼費用、医師とカメラマンへの買収額を支払っても十分に有り余る。そして、わが社にスタッフ登録をしている『副業的に金だけが欲しい』専門家を利用すれば、社会が追求しようとしても足取りはわが社に突き当たり、警察が捜査したとしても『あーKI-TSU-NEスタッフなら金さえ積まれれば何でもやってそうだからあいつらが犯人だろ』と誤解をさせることができるとでも思ったのか、バカめ。わが社を利用したな?」
甥「ま、まて!どこにそんな証拠があるのです!」
課「あなたの専門である中世日本美術において、死後の記録といえば嵯峨天皇の妃である檀林皇后を描いた九相図が有名だ。有名と言っても知らない者は知らないだろうがな。私は檀林皇后の名を出してカマをかけてみた。電話越しだからわからないとでも思ったか。お前がその単語を聞いた後息をのみこんだのを私が察知できないとでも思ったか」
甥「な、なんだと、なぜそんな」
課「俺の知識をそこらの一般人と同等に見たのが間違いだ。会員の山本すなわち甥の片山。自作自演はもうおしまいだ。お前の真意は、病中の叔父を偽り、KI-TSU‐NEスタッフに共犯を依頼したうえ隠れ蓑に利用し、九相図を作成させ闇オークションで売りさばくことだったーっ!!」
甥「うっ!く、くっそォー!!!なぜ俺の、完璧な計画がぁっ!!」
課「会員が相手ならどのような要望でも期待に添えようとする、そんなわが社の名を騙ったり、利用して犯罪や法に触れる行為を画策する者が多少はいるということさ。お前がどこからこの電話番号を入手したかわからんがね、この電話番号はわが社のどこの資料を探してもホームページを探してもわからない電話番号のはずなんだよ。ある特定の機関の人間しか知らない、社内でもごく数人しか知らない、な」
甥「ち、ちっくしょおおおおおおおお!!」
課「もうすぐ警察がそっちに向かう。まあ早めに言い訳を考えておくことだな。幸いまだ罪状は尊属殺人だけで済んでいる。抗癌剤を止めさせたくらいか」
甥「うわああああ!!もう何もかもおしまいだあーっ!!」
課「俺に電話をかけたのが運のつきだったな。俺はなあ、お前みたいな、真実をねじ曲げる奴が、でぇ~っ嫌いなんだよ!!!」
あ「課長ーおべんと買ってきましたけど…あーあーあー」
二「うわーまた顧客にキレてるよ。あれさえなきゃあたしより単月の業績、上だろーになあ」
ガチャ
課「おーおかえり、弁当ありがとう」
あ「課長すいません、からあげ弁当なかったんですぅー(´・ω・`)」
課「えええええええ!!からあげ弁当ないの!?俺は一体何食えばいいんだよお!!」
二「いやー何か売り切れですって。天ぷら弁当でいいっすか、代わりに」
課「からあげじゃなきゃやだぁ~」
二「やだぁじゃねえよwww天ぷらの方が150円高えんだよ」
課「何なんだよ~高額の依頼も外すし、からあげ弁当はないし、今日俺もう仕事できないかもしれない~」
二「しろよw何で幼児退行してんだよww」
あ「課長!泣いちゃだめです!あたしのエビフライいっこあげますから!」
課「エビフライ!?」
二「バカwやめろw甘やかすなww」
二→二ノ宮優有
あ→あやちゃん(藍沢絢)
課→課長(猪元さん)
山→山瀬幸輔
あ「課長っ!新入社員研修レポートできたので確認お願いしますっ」
課「はーい。二ノ宮さんに見せた?」
あ「えーすいません、今日できあがったのでまだ確認してもらってないんですが、電話したら直接課長に出してくれと」
課「あーそうか。2連休か、二ノ宮さんは」
あ「はい、明日まで来られないので」
課「…」
あ「…」
課「ちょっと足りないなあ。もう一度書き直しなさい。今度はちゃんと二ノ宮さんに見せてから。社会人っぽい文章になってない」
あ「…す、すいません」
課「提出期日はまだ先だから、急がなくていいよ」
あ「はい、すいません。書きなおします」
あ「というわけでおじゃまします。お休みのところすいません」
二「あーいいいい。連日飲んでて昏倒してた。誰かに起こしてほしかった」
あ「ごめんなさい本当に」
二「課長の言う締め切りは実際より『遅い』からね。きっと締め切りは」
あ「明日なんですよね」
二「傾向的にはそうだね。ちょっと見せて。どういうこと書いて没なのさ」
あ「これこれこういう感じで」
二「ちょwww視界がブレて読めねえwwwスピリタスこええww」
あ「スピリタスてwもう少ししてから出直しましょうか?」
二「あーいいいい。うーん。ほうほうほう。あらーん。それーん。いやーん」
あ「どうですか?」
二「確かに課長の言うとおりだね。文章が若い。仕方ないと言えば仕方ない。敬語すぎるのと、感情が多すぎるな。しかしアホ大学出の新卒の小娘の文章にしてはしっかりしてると思うんだけどなあ」
あ「アホ大学言わないでくださいwでも課長はダメですって」
二「ちょっと待って、新入社員研修ならあたしが4年前に同じもん書いてるわ、まだあるから探すね」
あ「本当ですか!?ありがとうございます、ぜひお願いします」
二「ところであたしがそいつをあやちゃんに見せてあげたら、あやちゃんはあたしに何をしてくれるのかな」
あ「…何を、と言われても、何をお望みで」
二「うふふふふふふふ」
あ「か、身体?(*´ο`*)」
二「しばくぞwww夕ご飯作ってちょーだい」
あ「はーい。何がいいですか」
二「えーと。スンドゥブ」
あ「す、スンドゥブ…」
二「4年前かー。4年前ねー」
(4年前)
A「聞いた?人材派遣課にすげえ新人入ったんだって」
B「知ってる知ってる。なんか入社1ヶ月目でもう営業成績、猪元さんのつぎだって」
C「すげえよな、そんでかわいいんでしょ」
B「そうそう。美人だけどあんまり性格はよくないらしいけど」
A「でも仕事ができるってそういうことだよね」
B「そうだね。猪元さんもウハウハだよね。最近、急に業績伸ばしてるし。もうすぐ課長なるんじゃないの」
C「可能性は高いね。あれ?猪元さんが研修してんの?」
A「いや、それがww」
C「なになに」
A「山瀬ww」
B「ちょwwww」
C「山瀬wwwww」
A「何かもう研修じゃないよねwww」
B「山瀬ってww」
二「猪元さん、先ほど山瀬さんより電話がありまして、2時間ほど遅刻するとのことですが」
課(このとき代行)「んだとぉ!?あのガキふざけんな!メールして、1時間にしろって」
二「1時間にしろとメールするのですね。わかりました」
課「どっちが研修される側だあのバカ、新卒の給与まで落としてやろうか」
二「あ、いえ。今、来られました」
課「ちょwww」
山「おはようございます。遅刻しまして申し訳ない」
課「てめえふざけんなバカ!遅刻してんじゃねえ、いや違う、まだ20分しか遅刻してねえじゃねえか、何が2時間だ」
山「いえ、そのように伝えればあまり怒られることもないかなーって」
二「山火事にガソリンを注いでいますよ」
課「さっさと仕事しろバカ、今月の営業成績150万いかなかったら本当にこの課から飛ばすからな」
山「150万って、もう俺110万いってるじゃないっすか」
課「てめえwww」
二「山瀬さん、もう今月はあと2日しかないのですけど」
課「二ノ宮さんは新入社員なのにもう135万だ!少しは見習えこのバカ!」
山「いやーこの子はもうなんか。天才だと思うんで。もう俺が研修しなくってもいいんじゃないっすかね。もう。凡人と天才を一緒にしたらダメですよ」
課「じゃかあしいやボケ、さっさと仕事しろ!」
二「山瀬さんどうなさるのですか。本当に飛ばされますよ。猪元さん、本気ですけれど」
山「なに?心配してくれてんの?大丈夫大丈夫、そんな大ごとになるつもりはない」
二「いや、別に心配なんかしてませんが、研修してくださる方が今更変わるのもめんどくせえと言うか」
山「おまwwいや、いいけどさ。俺は俺のペースで仕事したいんだよ、ノルマに縛られて仕事してて何の楽しみがあるよ」
二「その発想は間違ってはいないとは思いますが、正しくもないと思うのですが」
山「いいのいいの。俺は俺らしくやりたいの。降格されてもいいの。あれーあれは?二ノ宮、月末締め切りの新入社員研修レポート」
二「もう少し。研修概要と今後の目標は書きましたが、この『研修に対する所感』というのは自分の言葉で素直に書いてよろしいのでしょうか」
山「いいよ。そのかわり教育担当のことを書く必要があるんだそこは。でも、俺がテキトーでうぜえとかあたしの方が仕事できるとか書いていい」
二「恐らくそういう書き方はしないと思いますが。私は山瀬さんを嫌っているわけではありませんので」
山「そいつぁー嬉しいね」
二「けれど、思ったことを書いていいなら自分の言葉で素直に書きます。私は山瀬さんの思想は嫌いではないですが仕事のやり方は少々首をかしげます。そのキャラで仕事をしていくなら、仕事はできなくてはおかしいと思うからです。今のままだと山瀬さんに長所が見えない。失礼にあたることを申し上げますが、私は与えられた数値は守るべきだと思いますし、今後一緒に仕事をしていくうえで目に見える評価としての成績がないと私は山瀬さんを尊敬できませんし、いずれ見方を変えていくかもしれません」
山「ふーん。新卒なのにしっかりしてるねー、考え方が」
二「レポートは明日、出します」
山「よろしくー」
LuLuLuLuLu
二「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の二ノ宮優有がお受けいたします」
会「電柱が倒れてくるんです」
二「はい?」
会「今にも私に向かって電柱が倒れてきそうで恐ろしくてたまりません。ぜひ、私のために、私が歩いているときにだけで結構なので電柱を押さえておいてくれる人たちを依頼したいのです」
二「ご依頼主様、申し訳ございませんがお名前と会員番号をお伺いしてもよろしいでしょうか」
会「永田昌也、302番です」
二「会員番号302番の永田様ですね。そして、今にも電柱が永田様に倒れてくるかもしれないと不安がっておられるのですね」
会「かもしれない、ではなく本当に私に向かって倒れてくるのです。あんな長いもの、私に向かって倒れてこないわけがありません」
二「電柱のような長いものが永田様に向かって倒れてくるに違いないと仰るのですね。しかしながら、それは道を歩いていれば誰しも同じような可能性下にあるのではないでしょうか。電柱は常に360度と言う角度のどの角度に向かって倒れてくる可能性は一致しているのではないでしょうか。そこで永田様にだけ倒れてくるというのは取り越し苦労と言うものではないでしょうか」
会「そんなことはありません!あの電柱どもの群れは常に私に照準を合わせているのです!」
山「…」
二「いや、狙ってねえよw大丈夫だよ」
会「何ですって!そんなことあなたに何がわかるというんです!」
二「少々お待ちください。今ネットで調べましたが、全長の1/6が地面に埋まっているようです。確かに電柱が折れる事故はたまにあるようですが、永田様の理屈ですと電柱が意思を持って襲いかかってくるような、そういうことはないのではないでしょうか。台風一過のあとでさえあんなに折れてないのですから、私には危険性は薄いように感じます。老朽化した電柱は頻繁に交換するらしいですから。1本22000円とか安いようなので」
会「違います!老朽化していようが新品であろうが、私に向かって折れてくる可能性は高いのです!」
二「折れねえよw大丈夫だよ」
会「何ですって!」
二「あー、永田様」
山「二ノ宮、代われ」
二「? 少々お待ちください。山瀬さん、ちょっとこの方、相手にできかねます。私は断っておきますので他の電話を取り次いだ方が」
山「いいって。聞いた感じ、俺が得意そうな人だ」
二「あー?」
山「大変申し訳ありません、私は二ノ宮の上司で山瀬幸輔と申します。永田様のご依頼に添えるようにいたしますので、2度手間とは思いますがどうか私にもう一度ご依頼の概要を教えていただきたく存じます」
会「…大丈夫なのですか、私の依頼を理解していただけるのですか」
山「もちろんです。どのようなご依頼でもお受けするのが弊社のモットーです」
会「私に向かって電柱が倒れてくるのです。ですので、私の眼の届く場所で押さえてておいてくれる人を依頼したいのですが、あなたの部下は理解してくださらなかった」
山「それは、申し訳ございません。では具体的に依頼の打ち合わせをいたしましょう。永田様に向かって倒れてくる電柱は明確に殺意をもっていることは確かでしょうか?それは冤罪とはなりませんか?」
二「ちょwww」
会「冤罪ではないと思いますが、恣意があるのは間違いありません。でないと、あんなに私に向かって倒れてくるような様相は持たないのではないでしょうか」
山「そうかもしれません。しかしここは非常に大事なのです。仮にホームパーティーに招かれたとします。そこの奥さんが『この包丁、よく切れるのよねえ』と言って包丁を来客に向けたときに、その奥さんが大量虐殺を目論んでいるかもしれないと信じ大勢で押さえつけて包丁を奪ったら、せっかくのパーティーは台無し、料理も食べられずに帰宅する羽目にはならないでしょうか。仮に永田様に向かって倒れてくる電柱が、加害者ではなくて被害者かもしれないという視点で私は物事をとらえようと思うのです」
会「電柱が?被害者?」
山「その通りです。確かに中には人間に向かって意図的に倒れてこようと思っている愉快犯、確信犯的な電柱もいるでしょう。しかし、彼らとて折れたいと願っているわけではないのです。なぜなら、それは交換=自分の死と同じ意味合いをもつのですから。肝心なのは被害者たる電柱たちです。先ほど二ノ宮が説明したように、電柱は22000円と安価。すなわち、ほんの些細なことで交換されてしまう運命にあると私は考えます。だからこそ、心のある電柱、いわば真剣に生きている電柱ほど、自分は折れないぞ、地面に、この大地に食いついて行くぞと必死なのかもしれません。つまり、永田様を狙っている電柱は加害者ならそのような心ない電柱。被害者だとしたら年老いた自分を支えきれない電柱なのです。いかがでしょう。これで、永田様を狙っている電柱は半分以下になりましませんか?」
会「は、はい!その通りです!」
二「ならねえwwwならねえよwww」
山「しかし現実問題、心ない加害者的電柱から永田様を守って差し上げないといけないのは火急を要します。まず、提案なのですが私どもで永田様のご住所から通勤経路、プライヴェートエリアを確認しその近辺にある電柱をリサーチします。そして、その中にあった加害者的意識を持った電柱をリストアップし、そこから初めて当社のスタッフをそれら心ない加害者電柱を押さえるため出向させます。いかがでしょう」
会「すばらしい!それで結構です!ああ、死なばもろともと思って電話したらこんな素晴らしい人にお会いできるとは!」
山「とんでもございません。しかしながら、私の簡素な見積もりですと現段階で人員と時間帯を多大に必要とすることが予想されるので、すでに20万弱になっているのです。これでは永田様の金銭面でも私は心配です」
二「ちょwww」
会「何をいうんですか!20万ごとき、私の命に比べたら安いものです!」
山「ありがとうございます。しかしそれはあくまで最小限にすぎません。場合によってはスタッフだけで押さえておいても必ず数本の電柱殺人鬼たちが永田様を狙い続けるでしょう。これはもう、弊社で撤去するしかありません」
会「で、電柱殺人鬼ですって!?そんな恐ろしい輩がこの世に!!」
二「電ww柱ww殺ww人ww鬼wwwwwwwww」
山「工事費用だけでも私の大まかな見積もりでは15万。しかし永田様の安全はさらに強固になることでしょう」
会「構いません!お支払いします!」
山「ありがとうございます。ところで永田様、そんな不安を抱えておられるのでは私も今から心が痛みます。実は私、カウンセリングも得意なのです。永田様の不安を取り除くべく、私が直接永田様にお会いになって不安の元を取り除いてあげたいと思うのですがいかがでしょう。もちろん任意なのですが」
会「なるほど!しかし、そこにも費用は発生しますよね?」
山「確かにすでに多額になってしまっており、私のカウンセリングの相場では5万強、普段はいただいております、いいえ、あくまで提案です」
会「確かに山瀬さんのような方とお話しできるのは心強い。うーむ。少々考えさせてもよろしいでしょうか?」
山「まったく問題ありません。私のおせっかいなのですか…あ…う…ぉ」
会「ど、どうしました?」
山「い!今は駄目だ!今は来るんじゃない!!くそっ! 大変申し訳ございません。今、危うく私の別人格が目を覚ますところでした」
二「ちょwww」
会「…山瀬さん、ぜひお会いしましょう、会ってお互いの心の闇をぶちまけましょう」
山「本当ですか!ぜひ私からも!ありがとうございます。では、すぐにセッティングしこちらからお電話いたしますでは、失礼いたします」
二「…」
山「ほーら、40万きた」
二「…」
課「山瀬ぇー!!!!」
山「はいはい猪元さん。どーしました?ノルマならクリアしましたけど」
課「そんなこと言ってんじゃねえ!何だこの二ノ宮さんの研修レポートは!!」
山「あれ?そう言えば俺、確認しなかったなあ。直でそっち、行っちゃいました?ちゃんと所感欄、書けてないですか?」
課「所感欄だ!何だこの所感欄は!どうなってんだてめえ!」
山「いやー彼女の好きに書かせたというか」
課「なおさら問題だろうが!どうなってんだこれは!!」
【…また、先日研修をしてくださる山瀬さんの営業能力を間近に見て、教育を受けましたがこれについては純粋に気持ち悪いと感じました。せっかく仕事ができるのに非常に残念に思う所存です。完璧に見方が変わりました。感銘にはなりません。】
山「ちょwww」
課「お前あれか!セクハラめいた教え方してんだろーがどうせ!!」
山「ちがwwしてねえよwwwww」
<注>
「二」→二ノ宮優有
「藍」→藍沢絢(あやちゃん)
「課」→課長
「会」→今回登場の会員
フリーダイヤルにおつなぎします。しばらくお待ちください。
藍「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、私は担当の藍沢絢がお受けいたします」
会「・・・ああ、すいません。折り入って依頼なんですが」
藍「ご依頼の件ですね。どうもありがとうございます。お客様、会員―」
会「KI-TSU-NEスタッフの営業の方で、藍沢さんと言う方ははじめて耳にしますが、最近そちらに来られたのですか?」
藍「? はい。私は4月に入社いたしました、藍沢絢と申します」
会「なるほどなるほど。そちらの部署で、藍沢さんの直属の上司はどなたにあたるのでしょう」
藍「私の直属の上司ですね。課長の猪元と、課長代行の二ノ宮がおります」
会「ほうほうほう。二ノ宮さんがいる、と。二ノ宮さんは今、出られますか?」
藍「…少々お待ちください。…申し訳ございません、二ノ宮は席を外しておりまして、もう少しで戻る予定にはなっておりますが、こちらからお電話をかけなおした方がよろしいでしょうか?」
会「あ、いえ。それは別に結構です。別に二ノ宮さんに特別用があるわけではない。では、山瀬さんはいらっしゃいますか?」
藍「うちの部署には山瀬と言うものはいないと、思いますが・・・」
会「ああそうですかそうですか、もうそちらには山瀬さんはいないんですね。では、あなた。藍沢さんで結構です。私からの依頼を言ってよろしいかな?」
藍「はい、私でよろしければお伺いさせていただきます」
会「では、藍沢さん、あなたは長財布を持っていますか?持っていたら、今から私の言うようにしてほしい」
藍「はい?長財布と言うことですね。私は、はい。持っていますが?」
会「ではそれを握りしめたとします。財布を右手で持ちますよね。親指が財布の右、人差し指と中指が財布の上部。薬指と小指が財布の左です、ここまで大丈夫ですか?」
藍「…え。はい。そのようにいたしました。そのように持ちましたが」
会「それをあなたの胸でもお腹でもよいのでつけたとします。これであなたの長財布は上下左右前後からストッパーがかかっている状態になるわけです。さて、この状態にある財布を外部からの力により落下させるには、どうしたらよいのでしょう。あるいは、あなたはこの財布にどのような力が加わったら落としてしまうのでしょうか。なお、あなたは握力を弱めることはできません。常に財布に加わる力は一定とします」
藍「…え?」
会「聞こえませんでしたたか?もう一度言いましょうか?」
藍「いいえ、聞こえなかったわけではありません。確かに、財布を上下左右前後から固定してます。これを、どうやったら、落とせるのか?ですね?」
会「そうです」
藍「あの、大変申し訳ございません。これが、ご依頼なのでしょうか?」
会「そうです。もしも藍沢さんが私が納得する返答をしていただければ、20万程度の人材依頼報酬を支払います」
藍「…え!?」
会「さあ、いかがでしょう?その代わり、僕は納得する返事をもらうか、あなたが『降参』するまで電話を切りませんし、切れてもかけ続けます。今16時38分です。あなたが帰社できるかどうかは、あなた次第です」
二「ぺーこぺーこにゃーんにゃーんぺーこにゃーんにゃーんぺーこぺーこふーんふーんぺーこふーんふーん♪」
課「お。あれ、二ノ宮くんも外出だった?」
二「おおう、課長。お疲れ様です。お戻りっすか」
課「残業残してる子いないよね?新入社員の歓迎会は遅刻厳禁、でないと上層部がうるさいぞ」
二「いやぁ大丈夫っしょう。今日来た面倒そうな派遣依頼は全部あたしが片づけたし書類も変なのはないし、あっても明日に回しても平気なやつばっか」
課「新入社員の出席状況は?」
二「他の部署はなんか欠席が目立つらしいんですけど、欠席っつーかばっくれ?うちはあやちゃんだけっすからねえ。あの子はあたしの舎弟だからあたしが出れば絶対出ますわ」
課「で、今何時」
二「17時30分」
課「歓迎会の開始時刻は」
二「知ってて言ってますか。18時」
課「早いよね」
二「今日は全員残業なし、が決まりごとなんで。開始が早い分2次会3次会4次会が怖いっすよ」
課「で、その残業なしデーにあの子は何してんの」
二「…あー」
藍「で、では古田様、私の指が疲れてきたころにもう片方の手に重いものを持たされて、落としてしまいそうになって慌てて右手を添えたら、財布を落としてしまった、というのはいかがでしょう」
会「さっきと同じじゃないですか。それは外的要因で落としたように見せかけて、あなたが意図して財布からの力を緩めてしまったのでしょう。本当にその財布を離してはいけないとしたら、あなたは左手に持った荷物を落とすはずなのです」
藍「…ううっ。じゃ、じゃあっ、胸に当たった財布の圧力のせいで、私の服が裂けてしまい滑り落ちる、というのはいかがでしょう」
会「冷静に考えてください。実際にそんなことが有り得るのですか。このご時世にそんな圧力ごときで裂けるような服を着ている輩がどこにいるというのです。それともあなたはそういう破れやすい服を着ているというのですか。ましてや、手の角度的に胸に垂直に固定された財布が、服が破れたところでどうして水平に滑り落ちるのでしょうか」
藍「でっ、ではっ、財布がふと気づいたら二つに折れてしまって…」
会「私は長財布を指定しました。いつ二つ折りになったのですか。最初の設定を無視してはいけません。それともあなたの財布は力を込めるとふたつに折れてしまうのですか」
藍「うっ、ううっ」
二「ちょww」
課「今、『古田様』と聞こえた。会員番号104番の古田さんだという可能性は」
二「…まずいな」
課「これはまずいぞ」
二「あたしが代わります」
会「ふふふふふ、どうです、時間の無駄でしょう。しかし報酬を確保したい。絶対に答えられるとあなたは考えているのに、延々と時間だけが過ぎてゆく。さあ、いかがですか?降参しても構いません、しかし僕はここで降参されても明日また同じような内容をあなたに投げかけるでしょう。ここで食いとめておけば僕はもう何も文句はありません。さあ、次の返答を僕にしてください」
藍「でっ、ではっ!」
二「あやちゃん保留!」
藍「! 申し訳ございません、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
(ローレライ)
藍「に、にのみやさん」
二「あたしが代わる、こいつ、会員番号104の古田だな」
藍「うっ、そ、そうですっ」
二「ちっくしょー、何でこんなタイミングでかけてきやがって、泣くな!もういい、先に歓迎会に行って!」
藍「は、はいっ」
二「申し訳ございません。お電話代わりました。古田様、私は二ノ宮優有でございます」
会「おお、二ノ宮さんではありませんか。選手交代かな?あなたなら少しは相手になるでしょう、さあ、私の質問に答えてください」
二「かしこまりました。どのような内容かお教えください、こちらで不手際がございまして申し訳ありませんでした」
課「あやちゃんここは行こう。君たちの歓迎会だから、君たちが遅刻はよくない」
藍「で、でも二ノ宮さんが」
課「うまくいなしてくれるといいんだが。会員番号104番の古田さんはわが社のブラックリストで5本の指に入る依頼主だ。彼のせいで時間をつぶされ残業を誘発された社員、連日相手にしてノイローゼになった社員も少なくない。君では無理だ。ここは二ノ宮さんに」
藍「だ、だいじょうぶなんでしょうか」
課「きわどいな。古田さんの相手ができるのは、昨年退社した山瀬という男か、人材育成課にいる神楽坂さんだけだと言われている。二ノ宮さんは確かに社内最強のオペレーターだが得意分野のジャンルが違う。下手をすると二ノ宮さんは今日の飲みには参加できなくなるかもしれん」
藍「そ、そんな!二ノ宮さんがいないこの会社の飲み会なんて怖くて行けません!」
課「あやちゃん、けっこう毒舌だね」
藍「はい?」
二「それでは古田様こういうのはいかがでしょう。そのような状態で歌舞伎町の奥を歩いていたら、急に暴力団と蛇頭の抗争に巻き込まれてしまい、奮闘はしたが匕首が私の手首を落としてしまい財布は下水に落下。しかし私は持ち前の機敏さと判断力で目の前の最後の中国人に正中線3段突きを喰らわせ、崩れ落ちる身体を背にして夕陽を仰ぐ」
会「二ノ宮さん。非常に面白い。面白いけど私の質問に殆ど答えていませんね。外的要因で落とすのは構いません。しかし、財布を持った手首ごと落ちる、というのはシチュエーション的に可能なのでしょうか。どうもみくちゃにされたらその体勢から手首だけが切り落とせますか。それ以前に、あなたの言ったことは藍沢さんの言ったことと全く本質は一緒なのです。握力をなくして落とす。そんな回答は僕は求めていないんですよ。握力が失われない状況で、6方向からガードされた財布をどうやって落とせるのか。それが問題なのです。あなたは破天荒で素晴らしく頭の良い女性だ。しかし、あなたは少し自分の道を歩きすぎる。だから設定を把握していながらそれを破壊しようとする、それでは設定と私の趣旨が理解できなかったあなたの後輩とまったく変わりはないのですよ」
二「ご期待に添えない答えで申し訳ございません。では、このような答えはいかがでしょうか。私が持っていたのは財布であったが実は長財布ではなかった。それどころか、私の持っていたのはがまぐちだった。ああ、そうだったのか!私は長財布なんか持っていなかったんだ!今まで長財布を抱えていた私は私の幻想だったんだ!人間は幻想に生きてはならない、現実を見つめて生きていかなければ!ああ、私は今、もう一度生まれた!」
会「うわべだけですね、二ノ宮さん。それはあなたのキャラではない。それは山瀬さんのモノマネにすぎません。あなたと山瀬さんではキャラクターの構成要素が違う。あなたにそのキャラは見合わない。なぜならあなたは生粋のリアリストだからですよ」
二「…」
会「違いますか?」
課「…いかん。二ノ宮さんが」
藍「!?」
二「…確かに。安易に山瀬のまねごとをしてしまったのは落ち度かもしれませんが・・・それは・・・」
会「二ノ宮さん。パワーダウンしましたねえ。あなたの少し前の勢いはどこにいったんですか。昔のあなたならリアリストとしてのあなたのキャラをつきつけ、それでも僕の要求する答えを返してきたでしょう。ふふ、どうやらホスト通いをやめて精神的に守りに入ってしまったという噂は本当でしたね」
二「…関係ねーだろあたしの過去の趣味と今の依頼内容の返事は」
藍「あっ…」
課「ちょwwおまww」
会「はっはっは。そして二ノ宮さん、あなたの最大の、短気という弱点がそれなんです。もうあなたは僕の難題に答えることはできない。あなたの負けです。さあ、降参とお言いなさい。神楽坂さんが笑うのも仕方がありませんよ。そんなことだから結婚できないんだって」
二「あたしが結婚しねーのは彼氏に金がねえからだボケがァーッ!!!!!」
課「二ノ宮さん!やめなさい!やめるんだ!代わろう!保留にしてくれ!」
(ローレライ)
課「大変申し訳ありませんでした。私は二ノ宮の上司の猪元と申します」
会「ああ!いつぞやはどうもどうも。はっはっは。二ノ宮さんが暴れていますよ。どうにかしたほうがよろしい」
二「うわああああ!!神楽坂はどこだ!神楽坂はァーッ!!誰が行き遅れだぁ!!あの雌豚ァ横ッツラしばき回してやらぁ!!もう会場かぁーッ!!!」
藍「二ノ宮さん落ちついてください!」
二「山瀬ー!!山瀬ー!!今から呼ぶから来い!すぐ来い!頼む!新幹線乗って仙台から来い!!このォキチガイぶっ飛ばしてやってくれえーっ!!!」
藍「電話つながってません!つながってません二ノ宮さん!落ちついてください!」
課「して、今回はどのような?」
会「それでは課長さん、あなたは長財布をもっていらっしゃいますか?」
二「ふー、ふー、ふー」
藍「だいじょうぶですか」
二「あー落ちついた。くそー10代のときみたいなキレ方しちゃったよ」
藍「二ノ宮さん」
二「ああ、OKOK。もーだいじょうぶ。いけないいけない。はあ、あたしの負けだ。駄目だもうこいつは。山瀬じゃないと」
藍「…その、山瀬さんって方かもうひとりしかお相手できないんですよね?どうしてこんな人、会員にさせておくんですか」
二「あやちゃんそれは違うよ。どんな変人でも金が発生するなら汚い話、顧客なんだよ。山瀬はこいつから報酬を受け取ってきた。だからってあいつがいないからって切るのは違うと思うんだ。それはあたしたちの実力不足なんだ。どんな顧客に対しても満足のいく結果を残しリピートしてもらいお金を払ってもらう。それがあたしたちの仕事なんだよ。まあ、ごらんな。課長の手腕を見るさ。歓迎会の遅刻は、もう3人ともあきらめよう」
藍「…はい。わかりました」
課「てめえいい加減にしろこのイカレトンチキが!!俺たちぁこれから新入社員の歓迎会やんだよ!てめえの相手なんかしてらんねんだよ!山瀬はもう辞めたんだ、てめえみたいな社会不適応者なんか相手にしてられっか!!俺ぁ早く飲みたいんだよ!!早く新入社員に『猪元課長ってカッコイー
て言われてえんだよ!お前は今日限りで会員剥奪だ!電話も着信拒否だ!!もう二度とうちの会社にかけてくんじゃねえこのド変態が!!
ブチッ ツー ツー ツー
さあ、二ノ宮さん、あやちゃん、行こう。まだ間に合うよ」
二「…ああ、それでいいのか」
藍「…」