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ふと思うと俺が創ったシナリオって絶対「夢の世界」があんのねw
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プロフィール
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狐さん
性別:
非公開
自己紹介:
生年月日:1642年水無月朔日

職業:妖怪(狐)

趣味:スイーツ(笑)づくり、東方、ものごとのリスト化
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「二ノ宮さん、明日からうちの課で働いてもらうことになった新入社員を新人教育してほしいんだけど」

E07817.jpg「あー?」

「あー?じゃなくて。珍しく新入社員入ってきたから。すごく真面目な子らしいから。新人研修して」

「別にいいんですけどあたしが新人研修したら世間一般の真面目な新入社員は翌日退社するんじゃないでしょうか」

「いや、別にそれならそうなってもかまわないから、とりあえず新人研修をしたという事実さえ成立すればそれで会社としては構わない」

「どういうことwww」
 


「これこれそうなってああいうことでどうなったらグッときてイエーイ。ここまでOK?」

「はい、だいたいわかりました。不明なことがあったら伺います」

「じゃあ藍沢さん、今から会員の方から人材派遣の問い合わせがあったときのシミュレーションをしましょう。レジュメの8ページを開いて、けれどその例文を読み合わせてもきっとイレギュラーな事態が多いから、最終的にはあなたのアドリブ力が試されると思うんだ。間違っていたら中断するから、やってみましょうか」

da-430079.jpg「はい、わかりました。よろしくお願いします」

LuLuLuLuLuLu

「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の藍沢絢でございます」

「あっ、あのう、ふへへへへ、わたくし、そ、そちらの会員になりました者なんですけれども、ぐへへへへへ」

「…」

「あ、あのう、今日はぁ、そちらで人材派遣のスタッフのかたをぉ、お願いしたいんですぅ。ふえーっへっへっへ」

「…」

「…応対は。どうしたの」

「…あ、あの。すいません。ちょっとびっくりしちゃったものですから」

「いや、ここで中断するのはおかしい。ちょっと。いいかな。うーん。どう説明しよう。藍沢さん、あなたはストーカーとか精神病のひとと電話で会話をしたことはあるかなあ」

「す、すいません、それは、ありません」

「ちょっとここは譲れないラインだな。半分健常でない人間の電話と言うものを、まあ言い方を悪くすると例えば変質者との電話を相手を傷つけないよう、途中で機嫌を損ねないよう、なおかつ、相手側が依頼することに対して、つまりうちの会社にお金を払う意思を継続させたまま電話を終わらせるには、どんなアレな人が依頼主でも真摯に会話を成立させないといけないと思うんだ。ここまではわかる?」

「はい、そこまでは理解できます。いえ、ちょっと驚いただけなんです。もう一度お願いします。今度はちゃんと応対させていただきます」

「そう。じゃあ続けましょう。ええと、本日はそちらで人の依頼をしようとしてまして」

「…あれ、口調が」

「ごめん。飽きたんだ。我ながら気持ち悪いし。いいから続けよう。依頼をお願いしたいんですが、よろしいでしょうか」

「は、はい。かしこまりました。恐れ入りますが、お名前と会員番号をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「名前は二ノ宮優次で、会員番号は978番です」

「かしこまりました」

「あ、復唱しよう。そこは」

「はい。かしこまりました。会員番号978番の二ノ宮様ですね」

「ええ」

「それで、本日はどのようなご依頼でしょうか?」

「実はわたくし、妻を千葉に残して単身赴任しているところでして、恥ずかしながらホームシックにかかっているのです」

「なるほど」

「ああ、そこも復唱しようか」

「あ、はい。二ノ宮様は奥様を千葉に残し単身赴任していらっしゃる。そして、ホームシックにかかっているのですね」

「そうそう。で、やりとりはしているのですが電話している時間もあまりなく、妻がメール無精でして、そこのところをですね…それと、私は料理が全くできないので妻の手料理に飢えているのもあるんです。ここまでおかしいでしょうか」

「いいえ、おかいしとは思いません。奥様と電話する時間もなく、メール無精なのでやりとりにご不満と言うことでしょうか。そして、二ノ宮様はお料理に疎くて、奥様の手料理を召し上がりたいと思っていらっしゃる」

「そうなんです。で、まず最初にやりとりについてです。電話はまあ諦めていますが、メールはこれは『妻を装った誰か』でも構わないと思っているんです。で、頻度は1日1回でいいんですが、ある程度コアな新婚夫婦のような内容で、例えば『ああ~ん今日もひとりでさみしいよぉー、ゆうじくんとちゅっちゅしたいよぉ』のような感じの文章がいいです。でも、そこまでセクシャルになる必要はないです。妻はそこまで大っぴらじゃないので」

「…」

「ほら、どうした?止まっちゃだめだよ」

「奥様を装った誰かでもよいので、1日1回、新婚夫婦のような内容でメールのやりとりをするのですね」

「復唱しよう」

「…え、今しましたが」

「いや、じゃなくて、メールの要求された内容を復唱しようって」

「…あ、あの。もう一度お願いしてもいいでしょうか」

「『ああ~ん今日もひとりでさみしいよぉー、ゆうじくんとちゅっちゅしたいよぉ』」

「…」

「はやく」

「メールの、内容は…例えば、…『あーん今日も一人でさみしいよー、ゆうじくんとちゅっちゅしたいよー』…ですね」

「違う。『ああ~ん今日もひとりでさみしいよぉー、ゆうじくんとちゅっちゅしたいよぉ』だよ」

「…」

「復唱はお客様が言った通り一字一句間違えずに語尾のアクセントまでしっかりと!」

「『ああ~ん今日もひとりでさみしいよぉー、ゆうじくんとちゅっちゅしたいよぉ』ですね」

「はい。そうです」

「…すいません、二ノ宮さん、少しだけ休憩をいただいてもよろしいでしょうか。少しめまいがしてきました」

「別にいいよ。うーん。いや、気持ちはわかるんだあ。あたしも新入社員のころ同じ感じになったかもしれないしね。でもねえ藍沢さん、これは覚えていてほしいんだけど、お客様が言ったことをメモするじゃない。それは殴り書きでもいいんだけど。でも、その内容はどんなに字が汚くても、誤字脱字省略は一切なく、お客様が言った通りの口調とアクセントで繰り返してほしい。信用と言うものはそこから生まれるんだ」

「…そうなんでしょうか。いえ、お客様が言った通りの言葉は理解できるんですが、口調とアクセントまでは」

「いやいや。もしもこっちの派遣したメンバーがお客様の要求通りにできず、棒読みになってしまったらそこに不満と手違いが発生して、費用を全額支払えないと言いだすかもしれない。そういうクレームはとてもばかばかしいの。だって、それは電話交換手である私たちが原因の半分を担うんだからね」

「な、なるほど」

「でしょ?お客様はきっと勇気を出して発言することもある、台本をあらかじめ書いておく人もいるでしょう。ひょっとしたら夜中や明け方のテンションで恥ずかしい中二病の文章を用意した人もいるでしょう。でも、そこでお客様が望んでいることを馬鹿にしてはならない。そして、それを復唱する自分は冷静に、恥ずかしがってはならない。下手をするとあたしはお客様の要求を伺い、泣き声やあえぎ声をあげなくてはならないかもしれない。もし仮にその結果、課内で『二ノ宮がなんかテレフォンセックスしてる』と思われたとしても、それは仕事なんだよ。それは割り切って行こう」

「に、二ノ宮さんってすごい方なんですね」

「自分の限界はよく知ってるから。まあ今言ったのはあくまで最たる例。あたしの限界。これ以上は、シラフじゃ無理」

「…」

「もうちょっと休む?」

「い、いいえ、もう大丈夫です」

「じゃあやろう。それでですね、メールについてはそのような感じでやってほしいんですが、同じ、メールをしてくださる女性で結構なんです。その方にはまず最初に私の妻から、時間がかかってもよいので料理を習ってきてほしいんですよ。それで、料理を覚えて慣れたら私のところに来て、妻に習った料理を作っていただきたいのです」

「…メールをするのと同じ女性で、奥様より料理を習い、ある程度料理を覚えたら二ノ宮様のお住まいに出向させ、お料理をするのですね」

「はい。ですから、話は前後してしまいますが、最終的に私のウィークリーマンションに来てもらうのですから、妻と同じような背格好の女性がいいんですよ。ただ、『あくまでこの人は自分の妻ではない』ことは心に刻んでおきたいですし、間違いが起こってはおけないのでその女性には仮面舞踏会で使うようなヴェネチアンマスクをしていただきたいのです。いや、あるいはKKKの白頭巾のようなものでも構いません。能面も悪くない。最悪、紙袋をかぶってもらう、とかでも。あ、大丈夫です。目のところに穴は開けますから。でないと料理できませんもんね」

o0300030010431727951.jpg「…」

「復唱しよう?」

「…二ノ宮さん、真っ最中にすいません。本当にすいませんが、これはあくまで常軌を逸した場合の…これは、その設定は現実的にはありえないですよね?」

「ううん。こういう依頼はあたしは受けたことがある。だから例にした」

「あの、ちょっと待ってください。おかしいですよ。その人の言い分とかそういうのもそうですけど、だってこの方、奥様を通して会社のスタッフの女性に料理を教えるようにしたんですよね?会社にお金を払ってまで。問題になるに決まってるじゃないですか」

「いや、そりゃあたしも気になったから聞いたよ。『単身赴任中に奥様の料理を毎日食べたいからといって、スタッフとは言え女性がマンションに伺うのは、しかも奥様を通して、そのようなご依頼はご家庭の問題にはならないでしょうか』って。でも、いいって言われたから受けたよ」

「だって。そのあとのお客様の家庭は」

「そこまでは踏みいることはできないなあ」

「ちょっと待ってください、それ以前にこの依頼主の方は普通に生活していらっしゃる―」

「藍沢さん、そういうことじゃない。そういうことじゃない。うちの顧客に健常性と金の心配をしては、いけない。この会社に人材派遣を依頼する人は何か欠損してるから。うん。特に会員番号3ケタ前半の人たちは。『町田市にゴミ袋のことで金を払いたくないから月額630円で町田市以外のどこかに捨ててきてくれる業者替わりのスタッフを依頼したい。予算は月額630円のほかに別途20万まで』とか平気で言われるんだ。でも、その人たちを傷つけちゃいけないし、できることなら彼らの夢はかなえてあげないといけない。もちろん度を越しておかしいって思ったら言ってあげなきゃいけないけど。そういう企業理念だから。大丈夫。じきに慣れるから。自分がおかしくなるわけではないから。スレるかもしれないけど。あたしの真似をしてれば上手くいくし、出世も早いと思う。この部署に来てくれたんなら。この会社はそういう人たちがいなくならない限り大きくなり続けるから。頑張ろう。一緒に頑張ろう」


「二ノ宮さん、藍沢さんなんだけど胃痛がひどいから出勤できないって」

「あー」

「でも、治ったらちゃんと出勤するから二ノ宮さんによろしくって」

「…ほう」

「続きそうな子で良かったねえ」

…骨のあるやつも、いるなぁ」

「なんか言った?」

「いえいえ、なんか今日、骨がかゆいなあって」
 

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MP107044.jpg「お電話ありがとうございます、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当の二ノ宮優有でございます」

「お世話になっております、中根隆和と申します」

「あっ、中根様でしょうか、いつもありがとうございます。前回ご依頼していただきました『結婚式場にいきなりみすぼらしい男がやってきて騒ぎ立て、新郎が勇敢に撃退するがその矢先に新婦はその男がかつての恋人だったことに気づき、男の名前を一声呼ぶと男は万歳三唱をしてからその場を立ち去る』という寸劇はうまくいきましたでしょうか」

「はい、あれのおかげで式場では新郎がとても正義感があることで話が持ちきりになりましたし、新婦としてもトラブルはあったけれども誰しもの心に強く残る結婚式になった、とお互いに喜んでおります」

「それは良かったですね。私としましては新婦の親族が受ける印象が心配だったのですが、大丈夫でしたでしょうか」

「いいえ、彼女は彼女で若いころ遊んでいたことは両親はよくわかっていましたから、ああいうことが起こってもおかしくはなかった、と問題にはなりませんでした」

「本当ですか、お役に立てたようでほっといたしました」

「そして二ノ宮さん、今回も寸劇をしてくださる方々を依頼したいと思っているのです」

「本日もご依頼ということですね。誠にありがとうございます」

「恥ずかしながら、今回は私の身辺のトラブルが発端になっているのです」

「中根様の身辺のトラブルが原因なのですね」

「ええ、実は最近私、妻と折り合いが非常に悪く、離婚となる可能性があるのです」

「奥様と折り合いが悪いために離婚する可能性があるのですね」

「私にも非があるのはわかっています、わかってはいるんですが説得しても向こうも意固地なので和解までの道のりが遠いこと。今度、妻とそのことで真剣に談義する予定なのですがそのときのために二ノ宮さんにふたり、寸劇をしてくださる人の用意をしていただきたいのです」

「ふたり用意し、寸劇を行わせるのですね。ところで、諍いの原因は何なのでしょうか?」

「私の趣味に対する金のかけ方、が―」

「中根様、非常に申し上げづらいのですが前回の依頼内容だけでも12万強かかっているのですから、ここで弊社に依頼するのは火に油を注ぐ結果とはならないでしょうか」

「いいえ、それとこれは別腹です」

「別腹なのですね。かしこまりました」

「ええと」

「では、その内容と寸劇を行わせるスタッフについてお伺いしたいと思います」

「はい。今度、私が妻と話し合いを持つ機会、恐らくどこかのカフェになると思うのですが、話が煮詰まってきたころに私どもの隣のテーブルにいる学生服のカップルがケンカし始め、こちらの席で『離婚』というワードが出る直前にそのカップルが先に別れてしまった、という寸劇です」

「なるほど、流れとしては中根様ご夫妻の話し合いの隣の席に当社のスタッフを配置し、学生のカップルであると」

「いいえ、学生服ですが学生ではありません、私の予定では」

「…と、申されますと?」

「ブレザーを着ている男性は30代初め、女性は20代半ばでお願いしたいのです」

「中根様、仰っていることが少し私の理解を超えているのですが」

「いいえ、私の言った通りの解釈で構いません。制服に似つかわずのカップルを用意し、まあ内容は女性のほうが『ジーンズがくさい』とか『鼻毛が出てる』とか『一緒に食堂かたつむりを見に行ってくれない』のような内容ですね、男性の方は『うるせえ』と『金がない』の1点張り。ただ、男性の方のかばんは高級ブランド品、装着してるアクセサリーは目に見えてわかる高価なもの、ということで。あ、カフェでなくてもいいんですよ。少し高いレストランでもいいんです」

「中根様、軽くご意見なのですが、そういう企画物のAV的な配役を用意して茶番を行ったところで中根様の家庭のトラブルに一石を投じることができるとは到底思えないのですが」

「いいえ、離婚という結果になったとしてもその光景は私の心に強く残ることでしょう。横で行われている何か矛盾した学園ドラマが私の悲運を慰安してくれるならばそれだけでいいのです。希望的観測ですがその横で行われている不可思議現象に妻があきれ返り、『なんかもう離婚とかどうでもいいや』という気分にさせたならそれはそれで儲けもんではありませんか?」

「いやいや、それはねーよww」

「はい?」

「失礼いたしました、私の隣の席の者の声が入ってしまいました」

「ああそうでしたか、では、以上でお願い致します」

「中根様、私が簡素にこの依頼の見積もりをしましたが、15万をオーバーするのは確実なのですがそれはよろしいのでしょうか。この15万で奥様と温泉旅行にでも行ってプレゼントでもすれば少しは違うのではないでしょうか」

「いいえ、それとこれは別腹です」

「別腹なのですね。かしこまりました」

「15万なんて安いものです。公共の場で一種の羞恥プレイを押し付けるのだから、スタッフの方には臨時手当として倍額出しても私は平気ですよ。いえ、むしろ出しましょう」

「…ほう」

「来週の水曜夜でも大丈夫ですか?」

「時間的に問題はございません。ただ、こういうのが得意なスタッフの女性の方をよく知っているのですが、できれば顔が割れてしまうので話し合いの場所はこちらで「できない地域」を指定できないものでしょうか。20代半ばで演技力もありますし、高校生時代の制服も持っているので必ずお役にたてると思うのです」

「いいですねえ。ええ、私は別に、地域は問いません」

「では、こちらからスタッフを手配次第すぐにご連絡を差し上げます」



HY097.jpg「二ノ宮さん、暇だったらみんなのお昼ご飯買ってきて」

「わかりました。課長、お願いがあるんですが1週間ほど有給―」

「だめ」

「二ノ宮さーん、お客さまからお電話です」

「あー?」

「スタッフの依頼なんですけども、二ノ宮さんご指名でとのことです」

「何て人?」

「北条様です」

「…知らないなあ」

「でも、ご指名とのことだそうで」

「簡単に言うけどさあ、知らない人があたしを指名って言うのは、他の人の紹介でしょー?

紹介された人があたしのやり方を気に入らなくてクレームになったの、何回あったと思ってんの」

「いやー、私にそう言われましてもー」

「あーいい。代わる。ちょーだい」

「すいませーん」

MMP95010.jpg「お電話代わりました。わたくし、二ノ宮優有でございます」

「あ、二ノ宮さんですか?あのー私、北条と言うものですが二ノ宮さんにスタッフを依頼したくてお電話さし上げました」

「ありがとうございます。どなたかのご紹介でしょうか?」

「はい、知人が前に二ノ宮さんにスタッフを紹介していただいて、よかったと聞きまして先日私も会員登録をいたしました」

「それは、誠にありがとうございます。ご期待に添えるよう努力させていただきます。北条様、会員番号はご存知ですか?」

「2444番です」

「2444番ということですね、かしこまりました。北条悠太郎様ですね」

「はい、そうです」

「それでは北条様、スタッフ依頼についてお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「はい、あの、これは私のためのスタッフではなく、私の友人のために依頼してあげたいのです」

「北条様向けの手配ではなく、ご友人の方への代理依頼ということですね」

「そうなんです。で、私の友人が最近鬱病めいてきて、そばにいてとても心配なんですよ」

「ご友人の方が鬱病のようになってしまい、心が痛ましいということですね」

「はい、はい。それで、友人を励ますために、私だけでは心もとないので、スタッフの方に数名来ていただき、彼を励ましてほしいんです」

「わかります。北条様だけではなく、弊社のスタッフ数名により、ご友人を励ますのですね」

「そうです。ただ、勘違いしてほしくないのは、安易に『励ます会』などというような程度の低い集まりの中ではなく、彼をとりまく半年以上のスパンでひと月に一回あるかないか、くらいのペースで、そうですね、例えば彼の職場で、噂話でもいいんですが、『あの人こないだ電車の中でお年寄りに席譲ってたんですけど、そのとき熱が38度あったんですってー。思いやりのある人よねえー』とか、言ってもらいたいんです」

「ふーむ。安易に『励ます会』などを開催するのではなく、半年以上の期間において、月1以下のペースで噂話のような形で挟み込むのですね。例えば、ご友人の方の職場で、『あの人こないだ電車の中でお年寄りに席譲ってたんですけど、そのとき熱が38度あったんですってー。思いやりのある人よねえー』と言わせるとか」

「他には、コンビニのレジで、『この前、銀行の自転車置き場で強風で倒れていた自転車をご自分のだけでなく全部元に戻していましたよね?ああいうのはなかなかできないですよ』と、ふと店員がつぶやくとか」

「『この前、銀行の自転車置き場で強風で倒れていた自転車を全部元に戻していましたよね?ああいうのはなかなかできないですよ』とコンビニの店員がレジでつぶやく、と。わかります」

「あとは、『北条さーん偉いですねえ、見ましたよ?新年会でみんなが散らかした宴会席、ひとりで片づけてましたよね!本当、お店のことも考えてるんですねー!感動しちゃいました』とか」

「北条様、今、ご友人のお名前が『北条さん』だったような気がするのですが」

「いいえ?気のせいです」

「気のせいでしょうか。それは失礼しました」

「まあ、彼も大変というか、かわいそうなんですよ。ぶっきらぼうで人見知りが激しいから、たまにそういう気のきいたことをしたり、身を削って何かに親身になっているのに周りは見ていないし、そういうことを初めからする人間でないと偏見をもたれたり、ああ、俺は実はこんなに優しいのになあ、彼の不満は募るばかりですよ。それは鬱にもなりますよ。彼は本当に優しいんです。いい人なのにねえ。ああ、私はこんな環境に取り囲まれてつらい思いをしているのが本当に嫌になりましたよ」

「…そうですね」

「だってそうじゃないですか。仮に『俺、こないだ駅の階段で重い荷物を持ったおばあちゃんに一声かけ、荷物を持って降りてあげた。どうだい実は俺は優しいんだぜ?』と言ったところで、『うそばっかり』、とか、『作り話乙』とか、信じてもらえたとしても『そういうことを自分で言うからダメなんですよ』って言われたり。じゃあどうやって私がそんな親切をしたことが周りに伝わるというのでしょう。誰も見ちゃいねえし、口で言っても正当に評価されないし。じゃあどうやって私が心の清い人間だということをみんなに伝えることができるというのでしょう。あ、これは22歳の時の話ですが」

「北条様、先ほどから誰に向かって話をしていらっしゃるのですか」

「いえいえ、独り言ではありません。だっておかしいでしょう。私は自分がアメリカ人に生まれればよかったと思いますよ。間違いなく自己主張しても決して顰蹙を買わないでしょうに。ヘーイジョニー、俺、こないだバスの中で1万円をくずせなくてもうすぐ出発だ、どうしようっておろおろしてる女子大生がいたから1千円札をいっぱい持ってた俺は両替してあげたんだぜ?あのときは参ったよー、何度も『ありがとうございます』って、彼女がバス降りるときまで言われて。本当かいフォックス?そいつぁすげえや、キミのテンダーハートにはオージービーフもまっ青さ!HAHAHAHAHA!とか言われて、みんなが私を称賛してくれるでしょうに。あ、これは去年の話ですが」

「北条様、先ほどから誰に向かって話をしていらっしゃるのですか」

「いえいえ、だから私はそういう社会が嫌でしょうがなくなるときがあるんです。でも大丈夫、こちらのスタッフを手配していただいて私を、いや彼をときおり励ましてもらえるんであればこんな不安やカオスな気分ももうすぐ消失することでしょうて。あどのー♪ゆあのどぅりーぃーいまぁー♪いやあ、夢が広がるなあ」

「北条様、失礼ですが以前私とお会いしたことはなかったでしょうか」

「いえいえ、二ノ宮さんとは今日がはじめてです」

「そうですか。それは失礼いたしました」

「例えば二ノ宮さん、あなたが新宿のダーツバーで投げっぱなし980円で遊んでいたとします。一緒に来ていた友達がトイレに行きました。となりのライヴでやっている大学生が暴投してしまいこちらの台にダーツが飛んできて落下した先は自分が遊んでいる台の真下の隙間で、入り込んでしまったと。当然あなたも隣も集まってその下のダーツを拾おうと思うでしょう。しかし奥に入り込んで取れない。店員はレジにはまっておりすぐに来れない。そのとき、腕の長いあなたは床にはいつくばってボールペンを手に持ち、擦り傷を負いながら隙間をひっかきまわしやっとこさダーツを拾って隣に渡します。『ありがとうございます!』と言われるでしょう。しかしその2,3分後に隣の大学生はもう帰ろうぜ、とぞろぞろ帰り出しました。あなたには、『すいません、ありがとうございました!』と。そして彼らがいなくなってトイレから友人が戻ってきます。そしてあなたは武勇伝のように『これこれこうなってダーツ拾ってやったんだぜ?手の甲に擦り傷できちゃったよ』と言います。そして友人は『ふーん。大変だったね』と無関心に言います。そんな理不尽な話がありますか」

「北条様、わたくし、知人からそのような全く同じ話を聞いた記憶がなんとなく残っているのですが」

121749866651316226104.jpg「いえいえそれは偶然でしょう。例えばこんなこともありました。私は昨日、一昨日と入念にクッキーとパウンドケーキと焼きメレンゲを作っていました。わざわざきび砂糖とアーモンドプードルと高級無塩バターを買って。バターの融解がこの気温のため悪くレンジや湯煎を活用し必死で初めて作るスイーツ(笑)に苦難し、やっとこさ焼きあがったと思ったら予想以上に見栄えが悪く味も自分好みではなかった。どうしようどうしよう大丈夫かなあ、クッキーもレシピを崩して5分長めに焼いて文句を言われないようにしたら、自分が求めていたのとは別のものができてしまった。ああ、おいしいと言ってくれるかなあ、食べてくれるかなあ、とそんな気持ちで持っていったら藤沢の職場と鎌倉の職場では非常にウケがよくあなたはやっと微笑みます。そして最後に湘南台に持って行ったら仲のよいバイトがほとんどおらず、面識が薄い人ばかりでさきほどの2店舗と比べそこまで喜ばれなかった。そしてめんどくせえ同僚の社員に『この人はこういうもんを徹夜して作ってきて、こないだ遅刻してたからねえ。本当すごいと思うよ』と言われたとしましょうか。私が破壊衝動に駆られたとして、誰が責められるというのでしょう」

「あなた、うちの社長でしょう?」

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t02200155_0224015810378636382.jpg「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフでございます。担当はわたくし、二ノ宮優有でございます」

「もしもし?わたくし、大田と申しますが派遣スタッフを依頼したいのですけれども」

「派遣のお問い合わせですね。ご利用ありがとうございます。大田さまは会員番号はご存知でしょうか?」

「…ちょっとお待ちください、はい、あ、わかりました、2204です」

「2204番は、はい。お調べいたします。おととい会員登録をしていただいた大田尚子様ですね。それでは恐れ入りますが、ご利用目的とご希望をお伺いしてもよろしいですか?」

「あのう、単刀直入に言いますけど、私の息子のことで、今高校2年生で演劇部に在籍していて、3週間後に舞台に参加するんです」

「大田様の高校2年生の息子さんが演劇部の舞台に参加なさるのですね」

「ええ、それでですね、本人はともかく、私自身が息子に与えられた配役に対して納得がいかないんです」

「息子さんの配役に大田様が納得がいかないのですね。それはなぜでしょうか」

「息子の役が、木の役だからです」

「・・・失礼ですが、高校生とお伺いしましたが演劇部の舞台の配役で木の役、なのでしょうか?」

「そうでしょう!あなたもそう思うでしょう!?ええと、お名前何とおっしゃいましたっけ!?」

「わたくしは二ノ宮と申します。なるほど、今の話だけを聞くと大田様が憤りになられるのも仕方がないと存じ上げます」

「そうでしょう!二ノ宮さん、私は大事な息子が木の役をやるというだけで信じられないし、家によく遊びに来るという息子の友達というのも決してまじめそうには見えません、ひょっとしたら息子がいじめに遭っているのではないかって心配になったんです、だってそうでしょう」

「息子さんのご学友の皆様は大田様には不真面目な印象で、いじめに遭っているかもしれないということなのですね」

「そうなの、もうそういうのを想像するだけで腹がおさまりません、あなただってそうでしょう」

「話の最中で気になったのですが、息子さんが木の役を与えられたことについて、その配役はどなたが決定し、息子さんはどのような心象なのかおわかりでしょうか」

「ええ、それはもう部活内全員で決まったことらしく、息子もそれを甘んじているんです」

「部活内全員の総意であり、息子さんもそれで納得しているのですね」

「しているとは思えません!常識的に考えてありえないでしょう、きっと息子は無理やりその役を押し付けられたに違いありません!」

「なるほど、穿った見方では押し付けられた役かもしれないということですね、わかります」

「こほん、それで派遣スタッフの方をひとり、ご用意していただき、手配がすみましたらその人を息子の代わりにしたいのです。息子にはもう演劇部はやめさせます。息子よりその人のほうが役に適していると見なされれば何の問題もないはずです」

「息子さんの代わりに木の役で舞台に立つ派遣スタッフをご用意するのですね。かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

「信じられないわ、うちの息子にそんな・・・話をしているだけで腹が収まらないわ」

「ところで大田様、その依頼内容は息子さんはご理解いただいているのでしょうか?こちらがご要望を受け違えていると思わぬトラブルになりかねます。できることなら私がそちらに伺い、大田様のご要望と息子さんの状況を教えていただき、息子さんからもご意見を頂戴したいと思うのです」

「いいえ、それは結構です。息子は木の役が与えられたことにニヤニヤ笑いながらはしゃいでいて、きっと私の思いなどわかってくれないでしょう、かわいそうに、騙されていて」

「・・・はて、息子さんは配役に納得しておりさらにははしゃいでいらっしゃると。失礼ですが、それを止める必要は果たしておありなのでしょうか?」

「あたりまえでしょう!!私の話を聞いていなかったんですか!?」

「とんでもございません、お話は内容をしっかり聞き、控えています。質問を変えてもよろしいでしょうか、息子さんが出演なさる舞台は、どのような舞台なのでしょうか」

「そうです!言い忘れていました、舞台の内容もとてもひどいんです。息子がメインで出るシーンはもっとも盛り上がるシーンで男性が女の人を思い切り蹴り飛ばすとか。とても暴力的な話なんです。息子はそのシーンでずっと立っているんです。そんあ馬鹿な話がありますか」

「・・・もうひとつ質問いたしますが、息子さんの配役の木とは、ひょっとして松なのではないでしょうか」

「ええ!?どうしてわかるんです!?」

「・・・金色夜叉」

「はい!?」

「えー。わかりました。わたくし、全て理解いたしました。ええと、息子さんは、それははしゃぐのも当然かと思います。そのシーンがある限り、息子さんはその舞台で誰よりも目立つでしょう。間違いありません」

「意味がわからないわ!どうして目立つもんですか、そんな暴力的なシーンで!」

「わたくしの話を聞いてください。息子さんはいじめに遭っておりませんし配役に対し一切の陰りもございません。よろしいですか、息子さんは『おいしい』んです。役に喜んでるんです。その役で舞台に立たせるべきです。それが息子さんにとって一番良いと考えます。わたくしの判断では今回のご依頼はお受けすることはできません」

「何ですって!!信じられない、こんなに悩んでいて、親身になって聞いてくれていると思っていたのに依頼を断るなんて!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「こちらは会員になって金を払う側なのよ!どうしてあなたにそんな権利があるのかしら!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「いい加減にしなさい!もういいわ、今日限りで会員はやめさせていただきます!何ていうひどい態度なのかしら!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「ふざけないで!あなた、お名前何とおっしゃいましたかしら!」

「わたくしは二ノ宮と申します」

「二ノ宮さん!あなたの言っていることは完璧に的外れだわ!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「あなたじゃ話にならないわ!上司と代わりなさい!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「聞いているの!?もっと上の人に代わりなさい!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「きー、もう我慢できないわ!!KI-TSU-NEスタッフさんごと告発してやるわ!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」

「私の知り合いには新聞社に勤めている人もいるのよ!どうなるか覚えてらっしゃい!!」

「その役で舞台に立たせるべきです」
 

t02200182_0450037310378656600.jpg
フリーダイヤルにおつなぎします。
しばらくお待ちください。

o0170012110377455627.jpg「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ担当、二ノ宮がお受けいたします」

「あーお忙しいところすいません、会員番号1114の岡田ですけど、今度の日曜日にまたいつもどおり伊藤玲子さんをお願いしたいんですけど」

「いつもご利用ありがとうございます。1114番の岡田様ですね。ただいま確認をお取りしますので、少々お電話このまま切らずにお待ちいただけますか?」

「はーい」

「…大変お待たせしまして失礼しました、岡田様、誠に申し訳ございませんが、伊藤玲子は先日当社のスタッフ契約を停止し、退職してしまいました」

「えっ!!」

「日ごろより継続的なご利用のところ申し訳ないのですが、またこちらでも別のスタッフを手配させていただきますが、いかがでしょうか」

「それは困ります!彼女でないと、急に別の女の子が来てしまったら、僕の親にもう僕の彼女として紹介してしまっているのに、話がおかしくなっちゃうじゃないですか!」

「まてww何してんだお前ww」
「二ノ宮さーん、赤井様という方からお電話です」

「あー?」

「そのまま電話とってくださーい」

o0200012510384374190.jpg「お電話かわりました、二ノ宮でございます」

「あー優有ちゃん?おはようございます赤井瞳ですけど」

「おはようございます」

「今大丈夫っすか」

「はい大丈夫です。赤井さん、この前は大人数の起用本当にありがとうございました」

「いえいえエキストラ雇うより安いし信用できるから」

「どうもありがとうございます。本日はどうなさいましたか?」

「こないだと同じでPV作るんで芝居できるエキストラを2人」

「DimMasterのプロモーションビデオ作成にエキストラを2名ですね」

「撮影日はいつもぱつぱつで申し訳ないんだけど2月16日」

「かしこまりました。2月16日の月曜日ですね」

「うん。でも、前日に芝居あわせするから全員15日に集めといてほしいんだ。だから2日拘束ってことでさ」

「15日にお芝居あわせを行うのですね。実質2日拘束。プロモーションビデオにお使いになる2名はどのような者をご指定なさいますか?」

「美容師と客。それっぽいのを。客は、きれいな女がいい。美容師は性別問わず、どっちでもいいの。でも、カリスマ美容師っぽいの」

「美容師の方とそのお客様ということですね。そして、美容師の方は性別はどちらでもよいが、カリスマ美容師のような者。お客様はきれいな女性がよいということですね」

「そうそう」

「お客様はどのようなシチュエーションに拠るのでしょうか。パートナーが美容師の方ですと、スタッフの髪の長さに応じていろいろあると思いますので」

「あのねー、実質、客の髪型はどうだっていいんだ」

「ご指定はないということですね」

「うん。でさあ、何でそういうのをプロダクションとかに頼まないのかって思うでしょ?」

「はい。ただ、赤井さんは私共を信用してくださっておりますので詮索は致しません」

「ありがと。あのね、PVの構成は決まってんの。女が美容師とおしゃべりしながら髪切ってもらってんのね。そんで合間合間に曲を演ってるシーンをはさむんだけどさあ、基本的には美容師と客のやり取りがメインなのさ」

「なるほど。PVは演奏をはさみつつも美容師さんとそのお客様のやりとりがメインということですね」

「そうそう。でも曲が流れてるわけだから美容師と客の台詞はない。芝居がそこそこ上手いやつが要求されるわけではない」

「やりとりの台詞がないので、そこまでお芝居に長けている必要はないということですね」

「うん、んで、まあ簡単に言うと曲が進行するにつれて客の女の髪がどんどん抜けていって、PVの終わり際にはスキンヘッドになってしまったっつー構成にしたいわけ」

「…ほう」

「だから女の髪型は問わないし。一回スキンヘッドにしたらあとは5パターンくらいヅラを容易しとけばいいじゃない。女の客の芝居はずっとニコニコしてて、だんだん「あれ?」みたいな顔になってって、最後唖然とした顔になればいいじゃん?それは美容師も同じ芝居だろ?」

「うーん」

「おたくのスタッフに頼むにはちょっときっつい話かもしれないけど、それなりに金は払うからさ、手配できない?会社的にまずい?」

「会社的にはぎりぎり問題はないのですが、この条件でその女性スタッフを探すほうが大変です。美容師のほうは即座にご用意できますが、2月15日までに合意を得るところまでもっていくほうが困難かと思います。失礼ですが、先ほどのお話に触りますがプロダクションに依頼をかけたほうが確実で早いのでは?」

「金がかかる」

「そうですけど、赤井さんでしたらそういうのをお気になさらないかと思います」

「まあ例えばTというプロダクションに、そこそこかわいい女をスキンヘッドにする権利をくれと言うとする。個人の尊厳の問題がからむから80万必要だとふっかけられたとするだろう?あたしは、50万で済むと思った。まあ、値切ったとしよう。使った女はそこのプロダクションで『DimMasterの新曲のPVでスキンへッドになった女』になって、それを元に売名活動の一環にする可能性が生まれてくる。DimMasterのPVに出したいのは常に素人であり続けたいと思うあたしの考え方としては、あたしが作ったPVに出た誰かしらがある日別の媒体に出て、『××さんってDimMasterのPVでスキンヘッドになった方ですよね?』ってなるのがさあ。嫌なんだ。あたしの言ってることおかしいか?」

「仰りたいことはわかります。うーん」

「無理を承知で言ってるのはごめんねなんだけどさ、手配してくれたら相当うれしいんだ」

「…瀬戸内寂聴」

「何か言った?」

「いえ、何も申し上げておりません。赤井さん、少しだけお時間を頂戴してよろしいでしょうか。16時までにお返事を差し上げますので、お願い致します」

「いいよ!全然いいよ!16時とか全然。優有ちゃんを信じて待つ」

「ありがとうございます。それでは、一度切らせていただきますのでお願い致します」

「おー」
「赤井さんでしょうか?私、KI-TSU-NEスタッフの二ノ宮です」

「あーもしもし?」

「赤井さん、弊社の登録スタッフではないんですが、お金に困っている知り合いがおりますので、ご紹介したいのですがいかがでしょうか」

「いいね!いいね!全然気にしないよ!」

「それで約束をしてほしいのですが、撮影時に簡素なメイクで彼女の職場や知人にわからないようにしていただきたいのです」

「うんうん、それはできる」

「そして、彼女は髪がある程度伸びるまで会社の有給を使い切ると言っていますので、報酬希望金額と致しましてはやや高く60万という額を提示しておりますが、いかがなものでしょう」

「80万より安く済めばいい!」

「また、その有給も1ヶ月以内で終わってしまいますため、撮影に使われたかつらを彼女に貸してあげてほしいのです」

「ぜんっぜん大丈夫」

「では。彼女をご紹介させていただきます」

「どんな子?いくつ?」

「はい。26歳で見た目は結構美人だと思います。会社でデキるからという理由で余計な仕事を大量に押し付けられていて長めの休暇がほしいと思っています。根は素直ですがちょっと黒いです。あだ名は腹黒天使です。去年までホストにはまっていたので貯金が少なく、行きたいときに海外に行けないと悩んでいます。みずがめ座のB型、お茶目でキュートな女の子です」

「まてwwwお前かwwww」
フリーダイヤルにおつなぎします。
しばらくお待ちください。

HE096.jpg「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフでございます。担当はわたくし、二ノ宮がお受けいたします」

「えー、会員番号877の神谷と申しますが、派遣スタッフをお願いします」

「派遣のお問い合わせですね。ご利用ありがとうございます。会員番号は877ということですね。・・・は。神谷祐次様ですね。いつもありがとうございます。今回はどのようなご依頼になりますか?」

「少々困ったことになっておりまして、私は個人で洋服店をしているのですが、最近近場に紳士服のコナカができて以来売上が芳しくないのです」

「神谷様が経営していらっしゃる洋服店が、最近出来た紳士服のコナカのために売上が伸び悩んでいるということですね」

「はい。それで一計を講じましてフォーマルスーツの一掃処分と赤札企画と同時に、この機会に春物を購入してくれたお客さんに対してセールを行おうと思うのです」

「なるほど、フォーマルスーツ一掃処分と春物のフェアを同時に行うということですね」

「そうなんです。しかし、国道沿いの辺鄙なところに店があるんです。告知方法に悩んでおりまして、場所が場所だけに看板を書き換えても効果は薄いだろうし、大手の折込広告にはかなわないと思うんです」

「わかります。それではどのように告知のお手伝いが出来るでしょうか」

「それでですね、御社のスタッフの方を3名ほどお借りして、まずは3日間限定でフォーマルスーツ一掃のポスティングを広範囲にやっていただきたいんです」

「かしこまりました。ポスティング要員を3名ですね。期間と時間さえご指定していただければ明日にでもご用意させていただきます」

「そ、それでもうひとつ、これがメインなのですけども」

「メイン?メインでいらっしゃいますか?特殊業務については特殊形態労働手当てが発生いたします。どのような業務でしょうか?」

「金髪のうさんくさい男の外人さんを一人ご用意していただきたいのです」

「金髪のうさんくさい男性外国人スタッフということですね。うさんくさいと申しますとどのようにうさんくさいのでしょうか。素性ですか?着ている物、佇まい、体型などいろいろな要素があると思いますので」

「金髪のマッシュルームカットです。カツラでも構いません」

「金髪のマッシュルームカット、かしこまりました」

「大きな赤縁の眼鏡をかけていて、鼻が大きくて白いスーツを着てもらいたいのです」

「なるほど、大きな赤縁の眼がね、白いスーツ。鼻が高いとは、鼻は『高い』のでしょうか『大きい』のでしょうか」

「できれば両方」

「両方ですか。かしこまりました。弊社の外国人スタッフも決して多くはないので、地毛ではなくかつらになる可能性はございます。また、スタッフの整形についてはお受けできかねますがよろしいでしょうか?」

「ええ、そこまではしなくてもいいです」

「かしこまりました。外国人スタッフはどのタイミングでご利用なさるのですか?」

「セールの期間中に3回ほど利用を希望します。店のピークタイムは日によって違いますから、その時間になるまで待機をしていただき、頃合を見計らって私が今来てくれと連絡をします」

「期間中に3回ということですね。そして、日によって異なるピークタイムにあわせ、神谷様が待機中のスタッフに連絡をして召喚するのですね、わかります」

「それで、初回から3回目まで言い方は異なると思いますが、とりあえず店に来て、私に向かって『あのな、パーティー行かなあかんねん、パーティー行かなあかんねんな』と切り出して私に服の質問をさせてください」

「・・・少々お待ちくださいませ。3回全てにおいて、言い方は違えど、神谷様に『あのな、パーティー行かなあかんねん、パーティー行かなあかんねんな』と神谷様に服のことをお尋ねすると。申し訳ありません、2回目以降はどのような設定なのですか?2回目も初来店のようにするのですか?それとも『ああん、また来てもうたわ』等、台詞があったほうがよろしいいのでしょうか?」

「あー、うー、それでいいです」

「初来店の挙動は初来店時のみということですね。失礼ですが、関西弁なのですよね?」

「はい、うさんくさい関西弁です」

「当方の外国人スタッフでそのように器用に関西弁を使えるものがいるかどうか確認しなければなりませんが、おそらく訓練をする期間が必要とされる場合がありますのでご了承ください。平常時給は発生いたします」

「はい、わかりました」

「イメージとして描いていらっしゃるのはMr.BATERですか?」

「あ!そうです、そうです!」

「大変失礼ですが、神谷様のお店にベーターさんが来たとしてましょう。『Mr.BATERに会える店!』という触れ込みや噂がめぐったところでお店の売上に安易に結びつくものではないと思うのですがいかがなものでしょうか。もう15年以上前の話ですし」 ※参考 

t02200160_0240017410384381015.jpg「うっ」

「仮に私が自分のよく行くブランドに芸能人が通っているという話を聞いても、店に行く回数は多少増えても服を購入する回数がそこまで増えるとは到底思えないのですが」

「いえ、実はもうひとつ目的があるのです」

「もうひとつ目的があるのですね。伺います」

「実は、先日恩師の娘さんと食事に行ったのですが、その現場を妻に目撃され、浮気をしていたと言って聞かないのです」

「神谷様の恩師の方のお嬢様と食事をしていたのを奥様に見られてしまい、浮気をしていると誤解されたのですね」

「はい。恥ずかしながら妻に信用されておりませんでして、ですのでその、外人スタッフに方に、3度目の来店時にちょっとした、そのままのコントみたいに『そんなんお前、恩師の娘さんと食事行って浮気と間違えられるわ!』と、妻に聞こえるように言っててほしいんですよ」

「なるほど。よく見たシーンですね。繰り返します。『そんなんお前、恩師の娘さんと食事行って浮気と間違えられるわ!』と、3度目の来店時に言わせるのですね。奥様はお店のお手伝いをしていらっしゃるのですよね?」

「はい、その通りです」

「以上でよろしいのでしょうか」

「はい」

「それではお見積もりを取らせていただきます。お電話切らずにそのまま2分程度お待ちくださいませ」

「わかりました」

「神谷様、大変お待たせしました。お見積もり完了いたしましたのでお伝えいたします。ポスティングに関しましては時間×1450円、平常時給となります。それと外国人スタッフに関しましては、非常にイレギュラーな業務となりますので、かつらのリース代等は当方で負担いたしますが時間×1450円のほかに特殊形態労働手当が時間×800円かかります。それと、実務必要額として35521円発生いたしますがよろしいでしょうか」

「・・・もう少し、実務安くなりませんか」

「外国人にMr.BATERのコスプレをさせて店でモノマネという茶番を強制させるにはだいぶお安い価格とは思いますが」

「・・・はい、すいません。わかりました。それで結構です」

「それと、外国人スタッフについて作業内容の確認と是非について打ち合わせをしつつ適正なスタッフを選別いたしますので、明後日の同じ時間にお電話を差し上げてもよろしいでしょうか」

「はい、セールは来月の話ですのでかまいません」

「それではご依頼をお受けいたしました。担当は私、二ノ宮優有がお受けいたしました。よろしくお願い致します」


「お忙しいところ申し訳ありません。私、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、営業担当の二ノ宮と申します」

「あ!はい、はい」

「誠に申し訳ありませんが、弊社の身辺調査の結果、神谷様の恩師のお嬢様は実在せず、誤解などではなく事実、浮気が発生していたことが判明しました」

「うっ」

「それによって当方がお受けした業務について取り消しが行われるものではございませんが、来月のセールシーズンに外国人スタッフを使ってまでMr.BATERをフィーチャーし、売上増大を狙うのみならず浮気の誤解を解かせるという嘘偽りの内容を執り行うにはそれなりの社会的リスクが発生いたしますので実務必要額は倍額をお願いしたいと思います。弊社は多目的人材派遣会社であり、アリバイ工作会社や違法行為斡旋の会社ではございません。それにご不満がございましたら業務変更でも構いません。ご提案ですが、ここは神谷様はポスティングのみをご依頼なさり、浮気云々についてはしっかりと奥様と話し合い、今後一切浮気をしないことを誓約することが妻帯者としての責務ではないでしょうか」

「すいません、もういいです」

「キャンセルなさるということですね。それは本業務につきまし・・・課長、ご依頼内容104582番の神谷様、キャンセル頂戴致しました」


「二ノ宮さん、クライアントの神谷さんっていう方から菓子折りが届いてますけど」

「捨てな」
フリーダイヤルにおつなぎします。
しばらくお待ちください。

HE095.jpg「お待たせいたしました。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフでございます。担当はわたくし、二ノ宮がお受けいたします」

「あっ、すいません、派遣の方を一人お願いしたいんですけど・・・」

「派遣のお問い合わせですね。ご利用ありがとうございます。ご利用内容をご質問いたしますがよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「こちら、私どもも会社のご利用は初めてでいらっしゃいますか?」

「いえ、以前利用しましたので2回目です」

「ありがとうございます。会員番号はおわかりでしょうか?」

「ちょっと待ってください・・・はい、すいません。1432です」

「1432。1432ですね。少々お待ちください。お調べいたします。・・・菊池香苗様ですね。ご利用ありがとうございます。今回はどのようなご利用方法でしょうか?」

「ええと、少しわかりづらいんですけど、男の人をひとり、私の働いてる、コンビニで働いてるんですけど、そこに男の人を一人アルバイトとして入ってもらいたいんです」

「コンビニエンスストアに1名、男性を勤務させるのですね。かしこまりました」

「で、私はそのコンビニで働いてる、夜の時間帯に働いているバイトの人が好きなんです」

「好きな男性が夜勤をしているのですね、わかります」

「で、こないだの飲み会があって、もうお店にはバレてて冷やかされたりしたんです」

「はい。お互いの状況は周囲の勤務なさっている人たちは理解なさっているということですね」

「私は途中で恥ずかしくなって帰ったんですけど、朝番だったからもあるんですけど、途中で帰ったんです」

「なるほど」

「でもそのあとの話を聞いたら、向こうもまんざらではないらしいんです」

「お相手の男性も悪くは思っていないということですね」

「はい。でも彼はすごくオクテで自分からぐいぐいいくような人じゃないらしいんです」

「はい。お相手の男性は積極的に菊池様にアプローチするような性格ではないということですね」

「で、派遣の人は私の友達という設定で、うちの面接を受けてほしいんです」

「はい。当方の者には菊池様のご友人という設定になさるのですね。そのあと面接を受けさせる、ということですね。それでは、菊池様と当方の者には事前に打ち合わせが必要になってまいります。その打ち合わせの段階より規定時給は発生してしまいますがよろしいですか?」

「かまいませんけど、それは実務と同じ時給ですか?」

「いいえ、実務外時給ですので1000円とさせていただきます。期間は必要であれば24時間まで。それ以降は平常時給となります」

「わかりました」

「打ち合わせは派遣開始日の1週間前より行えますが、ご指定はございますか?」

「前日で結構です。それであの、面接の段階でうちの店長に『とても気の利く好青年』と思わせて即時採用させますよね。でも、うちの店長に『即採用で問題なかったけど、ちょっと癖があるかもなあ、でも俺は夜働かないからいいや』と思わせてほしいんです」

「打ち合わせは前日ですね。かしこまりました。そして、当方のスタッフに面接させ、とても気の利く好青年だが少し癖があるように思わせ、かつ採用させるのですね。演技が出来る者を探しますので、前回ご利用の際と同じく特殊形態労働手当を発生させなくてはいけませんので、こちらは1時間当たり800円の手当てが発生いたしますがよろしいですか?」

「はい、かまいません」

「ご質問ですが、面接の折にスタッフは菊池様のご友人であることは店長様にお伝えするのですか?」

「いいえ、それは採用されてからでいいです」

「なるほど。採用後の業務についてお願い致します」

「で、入って4回目くらい、全部夜の時間でいいんですけど、たぶん彼がスタッフの人に教えると思うんです。その、4回目くらいのシフトのときに、彼以外の誰かに『僕は菊池さんの友達なんだ』って言ってほしいんです。そしたらすぐ広まるので」

「菊池様のご友人であることは当方のスタッフが4回目の勤務の折に菊池様がお気に召していらっしゃる方と別の方にお伝えするのですね」

「その後は、全体に広まった頃に同じように、スタッフの方と私が昔関係があったようにうわさを立ててほしいんです」

「なるほど。当方のスタッフと菊池様の過去にそのような接点があったことを噂として流すのですね。噂を広める際に別のスタッフは、例えば女性のスタッフなどをご利用なさいますか?30分まででしたら、2回目のご利用ですので料金は発生しません。30分以降は平常時給が発生いたします」

「それはどっちでもいいです。」

「かしこまりました。後ほどお見積もりを2パターンご用意いたします」

「はい。その噂が流れたら、私がお店に客として行きます。そのときの夜のシフトは彼とスタッフの方、あともう一人が休憩中の状況がいいです」

「ええ、菊池様がお客様として夜に伺うのですね。その折は当方のスタッフ、菊池様がお気に召していられる男性、別の方が休憩中ですね。その時間帯はいつごろまでにお分かりになりますか?」

「10日前にシフトは出ますけど、ごちゃごちゃしてるので3日前が確実です」

「それでは、3日前にお尋ねします」

「で、そのときにどういう感じでもいいんですけど、私とスタッフの方が話し込むんです。で、すごい険悪なムードにしてほしいんです」

「菊池様と当方のスタッフが険悪なムードで話し込むのですね。内容はお任せで。わかります」

「で、スタッフの人は、私に対して『で!?どーすんですか!どーすんだよ!このお弁当温めるんですか!?温めんのかよ!?早く言えよ!冷たいもんと一緒に入れるぞ!?』ってキレてほしいんです」

「・・・少々お待ちください。申し訳ありません。確認をお取りさせていただきます。当方のスタッフが菊池様に対し『で!?どーすんですか!どーすんだよ!この弁当温めんのかよ!?早く言えよ!冷たいもんと一緒に入れますよ!?』と激昂するのですね」

「あ、『で!?どーすんですか!どーすんだよ!このお弁当温めるんですか!?温めんのかよ!?早く言えよ!冷たいもんと一緒に入れるぞ!?』です」

「『で!?どーすんですか!どーすんだよ!このお弁当温めるんですか!?温めんのかよ!?早く言えよ!冷たいもんと一緒に入れるぞ!?』ですね。かしこまりました」

「でも、そのお弁当は温めないお弁当なんです。っていうかサラダなんです。だから、私は『あっためるもんじゃないし!意味わかんない!バカじゃないの、あんた』って軽蔑するんです」

「・・・はい?温める、お弁当ではないのですね。サラダ。そのあと、菊池様が当方のスタッフに軽蔑して言い返すのですね」

「スタッフさんにはレジカウンターから出てきて私を捕まえようとしてもらいます。ビンタくらいしてもいいです。そしたら、私が彼の後ろに逃げ隠れます」

「当方のスタッフがレジカウンターから出てきて、菊池様を捕まえようとするのですね。その際に平手を打ってもよいと。そして、菊池様がお気に召していらっしゃる男性の後ろに逃げ隠れるのですね。かしこまりました」

「あとは、こっちでいろいろ考えて私は彼が好きなのとか言うんで、スタッフの人は最後までびびってる感じとショックを受けてやるせない感じにしてください。そんで最後は無言で着替えて、そのままばっくれた感じにしてください。スタッフの方はそこまでで終わりでいいです」

「・・・その機に菊池様がどさくさにまぎれて思いをお伝えになったあと、当方のスタッフはうろたえた様子で、恐れとやるせなさを抱いてそのまま着替え、菊池様の勤務先を無断退職なさるのですね」

「あ、最後にいっこだけ。最後に、スタッフの方に『まったくひでえや!このバイト先は地獄だぜ!』と捨て台詞を吐いてほしいんです」

「・・・捨て台詞を残すのですね。『まったくひどいや、このバイト先は地獄だぜ!』でよろしかったでしょうか」

「『まったくひでえや』です」

「申し訳ありません、『まったくひでえや』ですね。以上でよろしいですか?」

「以上です」

「それでは直ちにお見積もりを取らせていただきます。お電話切らずにそのまま2分程度お待ちくださいませ」

「はい」

「菊池様、大変お待たせしました。お見積もり完了いたしましたのでお伝えいたします。特殊なシチュエーションの勤務と、スタッフの今後の尊厳問題も加味いたしますと、できるだけ菊池様のご勤務先よりは遠方のものを探しますが、面接から勤務放棄・・・『まったくひでえや!』までですね。実務必要額が67632円。あとは打ち合わせの時間×1000円。24時間以上は×1450円です。スタッフの勤務につきましては時間×1450円。特殊形態労働手当が時間×800円です。別途スタッフが必要な場合は30分まで無料。それ以降は×1450円です。当方のスタッフが勤務して稼動した給料はどうなさいますか?料金と相殺することも出来ますが」

「いえ、そのスタッフさんにあげていいです。たぶんばっくれの日はもらえないと思いますけど」

「かしこまりました。ありがとうございます。それではこちらの条件にてただいまよりスタッフを探し、極力早くご期待に沿えるように尽力いたします」

「おねがいします」

「お支払方法はどうなさいますか?以前と同じ口座からの引き落としでよろしかったでしょうか?」

「15万を越したらカードで払いたいんですけど」

「かしこまりました。その際は追ってお伝えいたします」

「はーい」

「ところで、菊池様、少々ご質問をしてもよろしいでしょうか」

「なんですか?」

「まとめますと、当方のスタッフが店長様に何か一点よろしくない印象を残すことや、お弁当の温めの件、『まったくひでえや』等の言葉は必要ないように思われますが、いかがなものでしょうか」

「いいえ、どうせ彼は私に気があるんだし普通にやっても大丈夫なんですけど、私と彼がつきあいだして最初の飲み会とかで、『あいつ、サラダ温めるんですか!?とか大声張り上げてたんだぜ』とか、『面接の段階でちょっと変な子だなって思ってたよ』とか、『爆笑だよねまったくひでえや!とか頭悪いよね』とか、そういう言葉で私の祝福された恋路を彩ってほしいんです」

「ねーよwwww」
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