魅力的なことわざ講座No.3…
「あらいぐまのラスカル」
TVアニメなどで愛玩動物というイメージが植えついているアライグマだが、実際は非常に気性が荒い動物であり、安易に飼育することはできない。また、地方自治体で野生のアライグマによる人的被害、生態系の環境を保護するため防除対策がとられているが、動物愛護団体が圧力をかけているという。
この語例の意味づけは学会でも非常に意見が割れており、
① 「メディアで間違ったイメージを植え付けられ、現実世界で被害を被ってしまうさま」:日本ことわざを守る会・日常国語専門学会の論述
② 「メディアで間違った認識をしている人間に対しアライグマが『しめしめ』と嗤っている状態を指す。転じて、自分が保護される存在であることを認知しており、そのうえで確信犯的に悪事を行う意識の持ちよう」:IPA・groupE(国際ことわざ原理協会の一部の過激分派)説
③ 「ラスカルは通常のあらいぐまではなく、自然でも稀にみる人になつく生態をもつ特殊なあらいぐまの種だった。例外的な存在をことわざに用いてはならない。すなわち、こんなことわざは存在しない」:不苦労先生ほか同派閥の説
の3つの説が現在でも喧々囂々の議論を行っている。
二「お電話ありがとうございます。多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフ、担当はわたくし二ノ宮優有がお受けいたします」
依「あ、これはこれはお忙しいところ申し訳ないんですけど、先日会員になったばかりで、今回初めての依頼をしたいのですが」
二「はじめてのご依頼ということですね。それでは会員様のお名前と会員番号をお願いいたします」
依「あ、はい。宮坂功治と申します。会員番号は3001番です」
二「かしこまりましたありがとうございます。では宮坂様、どのようなご依頼かお聞かせ願えますか?」
依「私の小学生の娘の通っている学校に、専門の先生を呼んでいただき、野生動物の危険性について講義をしてほしいのです」
二「宮坂様のお嬢様が通っていらっしゃる小学校に、専門の先生を呼び、野生動物の危険性について講義をさせるということですね。この講義というものは、全校生徒を対象にして行われるのでしょうか?それともお嬢様の学年のみ、でしょうか?」
依「講義を聞く範囲はどうでもいいのです。別に娘のクラスの授業のヒトコマでも構いません」
二「そのあたりの範囲は指定なさらない。お嬢様のクラスの授業のヒトコマでも構わないということですね。しかしながら、こと小学校におきまして宮坂様のお嬢様のクラスの授業だけそのような専門の先生の講義が授業内で行われる、というのはいかがなものでしょうか。教師のかたがたが不審に思いはしないでしょうか。野生動物の危険性をお嬢様だけににレクチャーするというのは、小学校というコミュニティで行う限りは比較的広範囲を対象にしなくてはいけないのではないでしょうか」
依「…うーん、そういうことですか。確かにそうなんですけど」
二「失礼しました、依頼について私が難癖をつけるつもりは全くないのですが、費用の差異が激しいと思いましたので申し上げました。例えばお嬢様に野生動物の危険性を説くとする。お嬢様だけが対象であるならば、なまじ専門の動物学者などを呼ばなくとも、そういうのに詳しい学生などでもよいでしょう。しかし、小学校内において、となりますとそこに教師たちの目が光るわけですから、一般人ではく本当に学者クラスを呼ばなければなりません。専門職派遣依頼については、スタッフ時給が非常に高くつくので確認をしたいのです」
依「そうですね、あまり高いと困ります」
二「極端な話、宮坂様に専門知識を把握していただき、お嬢様に教えてあげるだけ、なら依頼料など1万円かかりはしないでしょうが」
依「そういうわけにもいかないんです。娘はあらいぐまを飼いたいと言っていて、妻もそれに味方しています。こないだペットショップをのぞいてきたそうですから。けれど、私はあらいぐまの危険性というものは知っているつもりです。とても危険な動物だと言うことではないですか」
二「そのようですね。お嬢様がお怪我をなさる可能性はあるでしょう、こと、あらいぐまに関しては」
依「しかし、娘も妻もあらいぐまのラスカルに毒されており、私の言うことなど聞く耳を持ちません。犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うのです」
二「なるほど、お嬢様も奥様もラスカルに毒されているがため宮坂様のご意見を聞いてくれない、と。確かに、犬猫ハムフェレを飼うのとはわけが違うことでしょう」
依「はい、犬猫ハムフェレとはわけが違うのです」
二「宮坂様、今は犬猫ハムフェレと言いたいだけではないでしょうか」
依「いいえ、そんなことはありません」
二「そうですか、それは失礼いたしました」
依「ですから、できるだけ安価で済ませるように、娘に、それなりに説得力のあるような方が講義をしてくれればと思いまして」
二「それでは宮坂様このような提案はいかがでしょうか。宮坂様は一度、奥様とお嬢様に促し、ペットショップに行ってあらいぐまが幾らなのか、どのように飼えば良いのか聞いてくるように言うのです。そのペットショップに動物学に造詣の深い弊社の専門スタッフを待機させておき、奥様やお嬢様の質問に対し、非常に批判的に返答させるのです。あらいぐまなど飼いたくない、と思わせる程度に。それが一番、ご要望に添えられ安価で済むと思うのですが」
依「あ、それはいいかもしれませんね。大丈夫でしょうか?」
二「依頼のフロー自体は単純なのですが、ペットショップの店長を抱き込む必要があるのでざっと見積もりをした限りは8万円ほどかかってしまうのですが」
依「うーん」
二「小学校に呼んでどうこうするよりは、よっぽど安全かつ安価に、即座に行えることでしょう」
依「わかりました。それでお願いします。放っておくと今にも買ってきそうですから、できるだけ急ぎで」
二「課長、うちの専門職スタッフで動物学者っていますか?」
課「聞いたことないなあ。人材育成課に聞いてみたら?」
二「あー」
二「比嘉中課長、すいません。専門職スタッフで動物学者はいませんでしょうか?」
比「動物学者?動物学者ねえ。植物学者はいるけど、動物学者はいないなあ。それっぽい人はいるけど」
二「うーん」
二「神楽坂、ちょっとお願いあんだけど、スタッフで動物学とか先行してる大学院生とかいないか?探してほしいんだ」
神「そおだねぇ。ちょっとひとりひとり連絡しないとわかんないなぁ。大学生で獣医学を先行してる、とかはいるかもしれないけど、あたしも全員のこと把握してるわけじゃないからなあ」
二「いつごろわかる?」
神「そんなすぐにはわかんないよ。見つかったら連絡するよ」
二「むー」
二「そんなこんなでミュージカル『あらいぐまデンジャリスタ』っていうのの台本を昨日徹夜して書いたから、あやちゃんは深く考えなくていいから、そこにあるあらいぐまの着ぐるみを着てほしい。柳田さんは申し訳ないけど恥をしのんで黄色い帽子をかぶってと赤いランドセルをしょってほしい。スカート短いのな。大丈夫、劇中で胸チラとかパンツが見えることはないから。じゃあ、予行練習はじめようか。神楽坂!演技指導たのむわ!」
あ「(;´∀`)に、二ノ宮さん?何でこんなことになっちゃってるんでしょうか?」
柳「…こんな恥辱的な依頼は今まででもはじめてです」
神「そこまで引っ張るほど面白いネタじゃないと思うんだけどなぁ」