二「はい。では申し訳ございません。私、その方面に疎いものでして申し訳ございません。差し支えなければ、私よりもっと案件に詳しい者と変わらせていただきますが。ええ。よろしいいでしょうか?では、しばらくお待ちいただけますでしょうか。こちらからかけなおさせていただきます。すいません」
あ「…」
二「あやちゃん、人材育成課行って神楽坂呼んで来てくれない」
あ「あ、はい、わかりました」
二「切羽詰った芝居して呼んできてね」
あ「切羽詰った感じですか…わかりました(・A ・;)」
神「どしたの?ゆうさん」
二「神楽坂。大変申し訳ない。結構重要な依頼受けたんだけど、あたし忘れてたんだよ、今日1時間後に不苦労先生とこにインタビューしに行く仕事あんの完璧に忘れてて。もうすぐ出なくちゃいけないんだ。あたしの代わりにこの依頼成功させて。たぶん神楽坂しかできないんだ。ペイは2:8で神楽坂にやるから」
神「まじで!?大丈夫なの?行ってきなよ早く。この電話番号にかけなおせばいいわけ?」
二「そうそう。ごめんな。あとで焼肉おごるから!頼む」
神「そんなのいいよ、行っておいでよ。あたしがやっとくから」
二「ごめん神楽坂!あと頼む!! …あやちゃん、あたしちょっと2時間ぐらい姿くらますから、神楽坂の電話応対をよく見ておきな、勉強になるから」
あ「は、はい。行ってらっしゃいませ」

依「もしもし」
神「あ、坂倉祥子様の携帯電話でよろしいでしょうか。私、多目的人材派遣のKI-TSU-NEスタッフの神楽坂と申します。先ほど二ノ宮から依頼を引きつかせていただいたのですが、もしお手数でなければ誤解のないように、坂倉様のご依頼を伺わせていただくわけにはいかないでしょうか」
依「はい、はい。大丈夫です。ええとですね。二ノ宮さんに行ったとおりなんですけど、お恥ずかしい話ですけど、私、今年で32にになるんですがまだ独身なんです。でも、相手がいないわけではないんです。来年には結婚しようと思っている恋人はいるんです」
神「ええ!何て素敵なお話なんでしょう!」
あ「…
( ;´д`)??」
依「それで、身の回りの友人が皆既婚者なんですけど、執拗に私にゼクシイを勧めてくるんです」
神「ゼクシイがないと結婚できないというCMもありましたからね!」
あ「・・・
( ;´д`) (…何だこのテンション)」
依「どうなんですか?おかしいと思いませんか?結婚というものは男女間双方の合意と愛の上に成立するものではないのですか?どうしてゼクシイがないと結婚できないのですか?どう思いますか?」
神「それはもちろん坂倉様のおっしゃるとーりでございます!確かにゼクシイは式場や婚礼準備のサポートとしては十分な効力があるでしょう!でも、それはあくまで副次的なものでしかないのです!仮に結婚資金がなくて、ゼクシイを頼ることさえできない結婚前のカップルがいたとしましょう!では、彼らは資金が有り余りゼクシイに結婚の流れ一部始終をケアしてもらうカップルと何が違うというのでしょうか!いいえッ!何も違わないのです!むしろ、お金がないなりに自分たちで精一杯の結婚式をしようってッ!ああ、そんな、力にはゼクシイなんて太刀打ちすることはできないのです!」
依「そうですよね!?ああ、なんかあなたとは気が合いそうですね。お名前なんておっしゃいましたっけ」
神「私は神楽坂かなでと申します。結婚の予定はございませんが、坂倉様のお言葉には共感を覚えるばかりでございます。そして、今回の依頼はそれに関係なさっているのですか?」
依「はい。本題なんです。私は、身の回りの知人が強制するところの、『ゼクシイがないと結婚なんかできない』という通念を真っ向から破壊したいのです。ゼクシイがなくても幸福な結婚はできるということを証明したいんです。もうゼクシイを糾弾するくらいの勢いで。そのために、私は何個か案を準備しています。それを実行してくれる人たちを依頼したいんです」
神「まあっ!まあっ!何て素敵なお悩みなんでしょう!!私、心の底からそのご依頼をお手伝いしたくて仕方がありませんわ!!」
あ「
Σ(゚д゚lll)…」
神「まとめさせていただきますわ!1、ゼクシイから手配してもらったという刺繍がところどころほつれたドレスを用意し、これじゃあ式挙げれないよと困っているときに坂倉様のおじ様が現れ、坂倉様が亡きおばあさまより譲り受けた親子3代で着ることになる完璧なドレス、という体裁のものを持ち込み比較させ、ゼクシイの品位を落とし『やっぱり母から子っていうものって無敵だよね』と思わせる。2、披露宴の演出でスモークをたくが思ったより煙くて招待客が咳き込んでしまう。そして申し合わせておいた司会の一言で、『スモークの演出はゼクシイお願いしたのですが皆様を煙たがらせる結果となってしまい失礼いたしました。しかし、この煙の中から舞い降りた新郎新婦の、なんと絢爛なことでしょうか!』とせりふを言わせ、そそくさとゼクシイのスモークけみいwwwという印象をそこはかとなく与える」。3、ゼクシイにしたがって新生活用の家具のカタログをまとめ見積もったらもっと瀟洒なアンティークショップと家電量販店で購入する見積もりを出したら圧倒的にそっちのほうがセンスよくて機能性十分だった、と新生活2週間目に噂を流させる。以上伺いました。私、見積もりは明るくないものでして正確な金額は出せていないのですが、おそらく総額で48万以内で抑えられると思います。いかがでしょうか?」
あ「
(゚д゚;)…じゅ、10分で、48まん…」
依「ぜんぜん平気です。むしろもっとお金をかけて小細工してもいいかもしれませんね。結婚資金が他の人たちより多くためられた自信ありますし、そうですね、神楽坂さん、他に考えはありますでしょうか?」
神「私も少し考えはございます。けれどもこれは、坂倉様がお考えになるよりもずっと高額な手配を行わなくてはいけないのです。少しでも気を害したら申し付けてください」
依「ええ、聞かせてください」
神「結婚式場に、坂倉様の昔の恋人を名乗る凶器を持った男を乱入させるのです!」
依「何ですって!」
神「もちろんエキストラです。しかも決して坂倉様の男性遍歴に傷をつけるわけではありません。だって、坂倉様も旦那様も、式場の誰もその乱入者のことは知りませんもの!何を隠そうその乱入者は、隣の式場に殴りこみに予定だったという設定なのです!男はある程度坂倉様の披露宴会場で破壊活動を行い、そしてしばらくして『ここは自分が殴りこむ婚礼の場ではない』ことに気づき、すぐにつまみ出されます。そして彼は叫びます。『ちくしょうーっ!!ここじゃなくて隣の式場じゃねえかあ!ゼクシイの社員ども話が違うじゃねえかあ!!』と!」
依「ああっ!さりげないその一言で!」
神「いかがです!もうゼクシイの個人情報漏洩がすらっと露見されたじゃありませんの!ゼクシイの信用丸つぶれ…ああっ、でもこれは悪魔の所業…こんな依頼を受けるスタッフがいたとしても通常時給ではすまないでしょうね。そして披露宴会場での破壊活動…きっと、これでは当初のご予算を突き抜けてしまいます。私、見積もりは明るくないものですから正確な金額は出せないのですが総額…109万…」
依「いいです。それ気に入りました。やりましょう」
_、_
あ「
( ; Д`) .・;'∴ ブハッ」
神「ああっ!ありがとうございます!私の意見がこんな素敵なご依頼に採用されるなんてなんという幸福なのでしょうか!もううれしくて、私の提案はもう結構ですわッ!」
依「!? 神楽坂さん、まだあるというんですか?」
神「ございます。ございますが、これ以上は私のエゴでしかありません!私のエゴで、坂倉様の以来費用を積み重ねるなんてできませんッ!」
依「いいです、聞かせてください!」
神「ああ、では聞き流してください。招待状のことです。結婚披露宴の招待状…いいえいいえ、これは羅刹の所業!…いえ、申し上げましょう。結婚披露宴の招待状、新郎新婦の名前を思いっきり!誤字脱字させるのです!そして、小さな紙に訂正文として『ゼクシイに依頼した折に確認不足だったため新郎新婦の名前・式場名・住所に誤りがございます。正しくは・・・』そんな、訂正文を入れるのです!」
依「そ、それはっ!!」
神「おめでたい席の招待状です、単に『確認不足』と書けば、ほとんどの人は結婚する二人に非難をあてることはないことでしょう、悪いのは必ずゼクシイとなるのですッ!…ああっ、でもこれは悪鬼の所業…こんなことをしていては費用がかさむだけ…私、見積もりは明るくないものですから正確な金額は出せないのですが総額…131万…」
依「かまいません。やりましょう」
。 。
/ /
あ「
( Д ) スポーン」
神「ああっ!ありがとうございます!私の意見がこんな素敵なご依頼にまたも採用されるなんてなんという幸福なのでしょうか!もううれしくて、私の提案はもう結構ですわッ!」
依「!? 神楽坂さん、まだあるというんですか?」
神「ございます。ございますが、これ以上は私のエゴでしかありません!私のエゴ(ry
二「ただいまー」
あ「…お、おかえりなさいませ。二ノ宮さん、どこ行ってたんですか」
二「髪ちょっと切ってきた。最近時間なくて」
神「あー!ゆうさーん!」
二「おおっ!神楽坂ごめんな、本当ありがとう仕事押し付けて。どうだった?大丈夫だった?成功させれた?」
神「誰だと思ってんのー。成功させたよ。ゆうさん!チョロいよこの人!180万もいけちゃったよ!でもやばいよ、自分の仕事やんないで、こんな高額の以来の8割なんかもらったらあたし比嘉中課長に大目玉食らっちゃうよ、2:8はやめよ、あたし4でいいから!6:4で!」
二「いやいや悪いって。比嘉中課長にはあたしからも一言言いに行くからさ、ここはちゃんと金勘定しようや」
神「ダメだってあたし今、オペレーター業務じゃないんだから!」
二「いやいやそこはちゃんとしようぜ?ちゃんとしようぜよ。わかったわかった。じゃあ5:5にしよう。5:5だ。こないだのあやちゃんと柳田さんとおんなじ。傷み分け。どうですお客さん」
神「わかったよー5:5でいいよ。じゃあね!あたし戻るからね!」
二「あー」
あ「
(゚д゚;)…」
二「あ、あいつのやり方、参考にしてもいいけど真似しちゃダメだかんね。あの、金を搾り取るタイプのオペレーションは会員の減少と依頼回数の低下を招く。あれをキチガイの会員にしかやらなかった山瀬と違って、神楽坂はあれをすべての会員にやるから、今の社風に向かない。いやーラッキーだなー何もせずに90万ペイついちゃった」
あ「いやあの。絶対真似できないですから、もういいです」
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